本稿では、「出資持分のある医療法人(経過措置型医療法人)」の承継対策についてご案内します。
1.第5次医療法改正の背景
かつて医療法人は出資者が持分を有する「持分あり医療法人」が主流でしたが、すでに周知のとおり平成18年(2006年)の第5次医療法改正に伴い、平成19年(2007年)4月1日以降に設立される医療法人には持分が廃止され、すべて「出資持分なし医療法人」となりました。
第5次医療法改正における医療法人制度改革の基本方針に、
①非営利性の徹底
②公益性の確立
③効率性の向上
④透明性の確保
⑤安定した医療経営の実現
があります。
医療法人は「公益性」を求められる法人ですが、出資持分のある医療法人の課題は「相続時」に発生する税負担です。出資者がなくなった場合、その持分は相続財産として評価され相続税の対象になりますので、相続人にとって多額の税負担が生じます。さらに、現金で相続税を納付できないケースでは、財産の売却や医療法人の運営への影響が懸念されます。
また、持分を保有している社員が退社する際には持分返還請求権を行使すると医療法人の資産状況の悪化を招く恐れがあります。
持分制度は医療法人の透明性や公平性を損なう可能性も指摘されています。特定の出資者が経営を支配しやすい構造となることで、公益性を重視すべき医療法人の本来の目的がゆがめられる恐れがあります。
このようなリスクを回避するため、「持分あり医療法人」の設立ができなくなりました。
2.現状について
第5次医療法施行前の平成19年(2007年)3月31日末時点において、出資持分あり医療法人は、医療法人総数44,027法人のうち43,203法人(98.1%)ありましたが、令和6年3月31日末現在においては医療法人総数58,902法人のうち36,393法人(61.8%)と減少傾向にありますが、未だ過半数を超えている状況にあります。
3.出資持分のある医療法人(経過措置型医療法人)の承継対策について
①「認定医療法人制度」の活用
■「認定医療法人制度」とは、持分あり医療法人が持分なし医療法人へ移行する際に贈与
税の非課税や相続税の猶予・免除などの税制優遇が受けられる制度です。
■「認定要件」を満たし、持分のない医療法人へ移行後6年間は、毎年運営状況を厚生労
働省へ報告する必要があります。
■移行後6年を経過するまでの間に認定が取り消された場合、当該医療法人を個人とみ
なし、「贈与税」が課税されますので注意が必要です。
以上、簡単ではございますが、医療法人の承継対策についてご案内いたしました。
何かご不明点などは日税経営情報センターまでお問い合わせください。
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