MENU MENU

COLUMN

2025.04.22企業再生・経営

◆種類株式と事業承継:柔軟な株式設計による円滑な承継戦略

  • 事業承継

◆種類株式と事業承継:柔軟な株式設計による円滑な承継戦略
企業の存続と成長には、円滑な事業承継が欠かせません。その手段の一つとして注目されているのが「種類株式」の活用です。会社法第108条に基づき発行される種類株式は、普通株式とは異なる権利内容を持ち、事業承継の課題に対して柔軟な解決策を提供します。特に、以下の4種類は承継実務で活用される場面が多く見られます。
① 議決権制限株式
これは株主総会での議決権を一部または全て制限した株式です。
メリットは、出資者に配当等の経済的利益を提供しつつ、経営権のコントロールを後継者に集中できる点です。
デメリットは、投資家から「経営に関与できない」と敬遠される可能性があることです。
事業承継においては、経営を任せたい後継者に議決権付き株式を集中させ、他の相続人には議決権制限株式を割り当てることで、「経営と財産の分離」が可能になります。

② 取得条項付株式
会社が一定の条件で強制的に株式を取得(買い取る)ことができる株式です。
メリットは、後継者以外に一時的に渡った株式を将来的に回収できる点、支配権の再構築がしやすい点です。
デメリットは、取得に際して資金を要するため、資金計画が必要となる点です。
承継に際し、親族間の調整で一時的に他の相続人に渡した株式を、承継完了後に会社が取得し、後継者に再集約するといった使い方が可能です。

③ 拒否権付株式(黄金株)
特定の重要事項について、当該株主の同意がなければ決議できない権限を持つ株式です。
メリットは、少数株主であっても経営の重要事項に関与できる強力な権限を持てる点です。
デメリットは、過度に行使されると意思決定の停滞を招く恐れがあることです。
事業承継においては、経営を譲った後も先代経営者が黄金株を保有することで、重大な経営判断に一定の関与を続けられ、急な方向転換の抑止力となります。

④ 残余財産優先株式
会社が解散した際の残余財産分配において、優先的に分配を受ける権利を持つ株式です。
メリットは、将来の清算時に優先的に資産を受け取れるため、資産保全に有効です。
デメリットは、通常の事業継続局面では目立ったメリットが薄く、利用目的が限られることです。
承継時には、経営に関与しない親族に残余財産優先株を持たせることで、相続時の公平感を担保し、争族リスクを抑制できます。

種類株式のメリットは、資本政策の柔軟性が高まる点にあります。たとえば、経営権を維持しつつ資金調達したい場合、議決権のない優先株式を活用することで既存の支配構造を維持できます。一方、デメリットとしては、種類の多様化に伴い管理が複雑になる点や、投資家に対してわかりにくくなる リスクが挙げられます。事業承継においても種類株式は有効です。後継者に議決権の強い株式を移転し、他の相続人には配当優先の種類株を付与することで、経営と財産の分離が可能となり、争いを避けた円滑な承継が実現します。これらの種類株式を適切に組み合わせることは事業承継における極めて有効なツールと言えるのではないでしょうか。



あわせて読みたい!
事業承継税制の認定取消事由事業承継税制の前に自社株式の評価額を下げる:①役員退職金の利用



サービスのご案内
日税経営革新等支援サービス日税事業承継支援サービスメールマガジンのご登録



免責事項について
当社は、当サイト上の文書およびその内容に関し、細心の注意を払ってはおりますが、いかなる保証をするものではありません。万一当サイト上の文書の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いかねます。
当サイト上の文書および内容は、予告なく変更・削除する場合がございます。また、当サイトの運営を中断または中止する場合がございます。予めご了承ください。
利用者の閲覧環境(OS、ブラウザ等)により、当サイトの表示レイアウト等が影響を受けることがあります。
当サイトは、当サイトの外部のリンク先ウェブサイトの内容及び安全性を保証するものではありません。万が一、リンク先のウェブサイトの訪問によりトラブルが発生した場合でも、当サイトではその責任を負いません。
当サイトのご利用により利用者が損害を受けた場合、当社に帰責事由がない限り当社はいかなる責任も負いません。



株式会社日税経営情報センター