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COLUMN

2023.12.12M&A全般

企業倒産の傾向から言えること

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



1.新型コロナの影響
東京商工リサーチ社のデータで足下数年の企業倒産件数の傾向を確認してみると、コロナ禍前の2019年では年間8,383件でした。コロナ禍入りしてからは支援策によって2020年は7,773件、2021年は6,030件に減少しましたが、その後2022年は6,428件、更に2023年(10月までの10カ月間)では7,073件と増加傾向を示しています。直近10カ月の倒産件数を企業の資本金別にみますと、資本金百万円以上5百万円未満が2,342件と最も多く、次いで1千万円以上5千万円未満が1,994件となっています。業種別ではサービス業が2,377件と断トツで、次いで建設業が1,385件となっています。また、従業員数別では10~19人で495件、5~9人では979人、4人以下では5,271人と小規模な企業ほど倒産件数が多くなっていることが確認できます。さらに倒産形態別では、破産が6,373件と倒産件数の9割を占めています。コロナ期の実質無利子・無担保融資(いわゆる「ゼロゼロ融資」)によって延命した企業がその後のコロナ体制の解除によって倒産に追い込まれているものと察せられます。

2."ゾンビ企業”の出現
今後どのような推移を辿るかを推測するうえで、倒産には至っていないが苦境にある企業、いわゆる「ゾンビ企業」の動向を確認してみます。その前に、このゾンビ企業という言葉ですが、一応、定義というものがあります。国際決済銀行(BIS)の定義では、設立10年超で3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(利払いに対する営業利益+受取利息・配当金の比率)が1を下回る企業とされています。つまり本業の利益と金融収入を合わせても借金の利払いをカバーできず、何らかの支援がなければ存続できない企業ということになります。このゾンビ企業の動向を同じく東京商工リサーチ社のデータで確認してみますと、コロナ禍前の2019年では10.18%でしたが、その後コロナ禍入りと共に2020年は11.00%、2021年は11.97%、2022年は12.32%と穏やかながらも増加が確認されます。ゼロゼロ融資の返済は既に始まっており、経済環境面でも景気回復基調を受けて日銀の低金利政策も今後どこかで見直される可能性もあります。もちろん日本には米国景気のような強さはありませんから、本格的な金利上昇は当面先の話として考えられますが、金融環境も変化しはじめる可能性があります。また、政府からは国内企業に対して賃上げを促す声が強く、大手企業がリードする形で賃上げの動きも予想されます。企業にとって賃上げは営業利益の圧迫要因となりますから大手企業はまだしも中小企業にとっては財務的な余裕がないところも多く、人材の採用競争も考慮すると中小企業には経営状況が苦しくなるところが出てくる可能性があります。コロナ入り後は倒産予備軍としてのゾンビ企業は僅かとは言えその率を上昇させていますし、倒産件数は既に増加に転じています。 倒産件数はコロナ前の10年間では2010年には13,321件だったものが、その後2014年に1万件を下回り、以降2018年の8,235件まで減少傾向にありましたが、この期間の平均的な倒産件数は現在よりも高い水準です。

3.M&Aなどの活用
コロナ支援策によって倒産発生が結構抑止されたことを考慮すると、今後は倒産件数の増加傾向が予想しやすいものと考えられます。倒産発生の増加は経済的には直接的な雇用喪失、消費抑圧といったマイナス面としてとらえられますが、不採算企業の淘汰、競争力のある企業への資源集約など、産業構造シフトに結び付くというプラスの面もあります。特に日本市場においては、PBR1倍割れ問題でも指摘されているように産業構造転換が遅れ、収益性の低い企業が多くなっています。企業の積上がった内部留保を設備投資やM&Aに回すことが出来れば、将来の競争力強化に繋がることも期待できるわけです。昔と違ってM&Aを重要な経営戦略として位置づける企業も多くなりました。一方、買収対象となる企業には買収企業が求める資源として、技術、人材、取引先、ブランドなど、価値の源泉となるものが求められるのですが、ここで問題になるのは、苦境にある企業はこうした資源の価値を減少させてしまっているところが少なくありません。経営に行き詰まり、倒産リスクが高まった企業の売却はそれだけ難しくなるわけです。中小企業では経営者年齢も上昇しており、事業承継問題も併せて考慮する必要があります。やはり企業経営者には状態の良いときにこそ常にその先を見つめることが求められるのです。



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