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COLUMN

2022.04.26M&A全般

国内M&A市場の動向について

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



M&Aの件数が引続き増加しています。
レコフデータの統計数値によれば、2021年の1年間に国内企業が絡んだM&A件数は4,280件となり、2020年の3,730件から550件増加し、過去最高件数とされた2019年の4,088件を超えて過去最高を更新することとなりました。このうち、国内企業同士のM&Aは3,337件となり、これも過去最高を更新しています。

コロナ禍による経済への影響がありながらもM&A市場は堅調です。
このM&A市場の動向を過去40年眺めてみますと、市場を形作る背景が時代によって変化してきていることが伺えます。
80年代後半~90年代半ばにかけては日本におけるM&Aの利用はまだ全体として低く、買収対象も国内よりも海外が多くなっています。国内市場が成熟化する中で成長機会を求めた一部の大手企業が戦略的に海外企業の買収を行なうという具合にM&Aが用いられています。
ところがその後、M&A市場の動向が変化してきます。90年代後半以降は国内企業同士のM&Aが徐々に増加し始め、2000年代に入ってもこの傾向が継続します。
背景としては、独占禁止法による持株会社の解禁(1997年)、商法による株式交換・株式移転制度の導入(1999年)、商法による会社分割制度の導入(2001年)といった法制度の変更が実施され、競争力強化を狙った国内企業の合従連衡の動きが広がったことがまず挙げられます。
また、国内企業、特に中小企業における事業承継問題の解決策としてM&Aが中小企業の間で活発化し始めたということも指摘できます。
独立系M&A仲介会社として有名な株式会社日本M&Aセンターは、1991年に設立され、2006年には上場を果たしていますが、この時代はまさに中小企業M&Aの黎明期とも言えます。
中小企業の事業承継問題は国にとっても重要な問題であり、放っておくと廃業や倒産が増加し、多くの労働が失われて経済は縮小し、さらに文化的価値のある伝統技術も途絶えてしまいます。そのような危機意識を背景に、2005年には事業承継協議会が設立され、翌年には中小企業経営者向けに「事業承継ハンドブック」の発行、2011年「事業承継・引継支援センター」の創設、2017年「事業承継5ヶ年計画」の策定、更に2019年からは「事業承継・引継補助金」がスタートするなど、事業承継問題を解決するための支援体制の強化が次々となされてきました。
2008年に起きたリーマンショックの影響によってM&A利用件数が減少する時期もありましたが、2013年以降はアベノミクスによる経済回復も手伝って増勢を取り戻し、その後2010年代後半からも増加傾向は継続し、コロナショックを経験しながらも、足元の過去最高水準に達することとなりました。

近年のM&A市場の動向について内容を見てみると更に新たな事がわかります。
M&Aを手法別(買収・合併、事業譲渡、資本参加)に見てみますと、近年は資本参加が大きな伸びを示しています。過半数以上の議決権を取得するという買収と異なり、資本参加は過半数未満の取得というものであり、厳格な意味でのM&A(買収・合併)とは言い難いものですが、関連会社として位置付けて出資元からの役員受入れなど実質的な側面から広い意味でのM&Aとして捉えることも可能かと思われます。この資本参加が近年はもちろんのこと、過去10年間で見ても最も利用件数が増加しているのです。
出資者に注目してみますと、一般の企業に加えて、ベンチャーキャピタルなどファンドからの出資が増えていることがわかります。
ベンチャーキャピタルファンドの設立件数を見ると2012年以降は増加傾向にあり、市場での資本参加件数の増加と相関性が高いことがわかります。
このベンチャーキャピタルファンドの設立が増加した背景としては、金利低下による機関投資家からの限界的な資金流入もありますが、大きな要因としては大手企業によるオープンイノベーションの活発化ということが挙げられます。
従前、企業は自社内のリソースを用いた研究開発や製品開発を前提とするオーガニック戦略(自前主義)が中心だったのですが、研究開発コストの増大化、製品サイクルの短期化、顧客ニーズの多様化などの経営課題に対処するため、技術やアイデアの商用化実現を重視する姿勢が強くなり、外部との接続を求めるようになったのです。他社とのアライアンスを目的に資本参加が増加するのですが、資本参加は企業に直接出資するだけでなく、自社専用CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立して出資を行うというケースも多くなりました。令和2年度税制改正においては、オープンイノベーション促進税制が導入されるなど国も企業のイノベーション促進を支援しています。

以上のように、M&A市場を形成する背景は時代とともに変化してきましたが、予想される流れとして、今後も事業承継問題は根強く、事業承継型M&Aは引続き増加すると思われること、企業の他社アライアンスの動きも広がりが出てきていること、そして国の様々な支援策も手伝って引き続きM&A市場は活性化することが予想されます。




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