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COLUMN

2023.01.24M&A全般

顧問先社長からの相談に応えるM&Aの知識とスキル

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



今回のコラムでは、主たる読者である税理士の先生方々に、顧問先の中小企業オーナーとの会話の中で注意しておくべきポイントをいくつかお伝えしたいと思います。

高齢化、体調不安、後継者不在、事業の先行き不安、従業員の雇用、取引先への責任、オーナーの資金回収など、M&Aの背景には様々なものがありますが、これらに対する解決策として中小企業のM&A件数は実際に増加の一途を辿っており、顧問先のオーナー社長がいつM&Aの話題を切り出しても不思議ではないと思われます。
オーナー社長からM&Aを検討したいと言われた場合にどのようなアドバイスをすればよいのでしょうか。

まず、オーナーの希望が売却であれば、会社を丸ごと売却したいのか、あるいは一部事業を売却したいのかという点です。
これは、その後のM&Aスキームの違いにも反映されることから、重要な確認事項です。
株式譲渡なのか事業譲渡なのか、また会社分割を行ってから株式譲渡を行うのかなど、事前にある程度の想定をしておくことは買手との交渉をスムーズに進める上で重要です。

次に、オーナー社長の周りや他の株主の意見がどのようなものかを知っておくことも重要です。
中小企業には同族企業が多いのですが、家族や他の株主との間で意見がまとまっていない場合には、スムーズな譲渡が出来ないこともあります。買収側では株式100%買収を希望するケースが多いので、株主間の調整は重要です。
経営幹部や社員が同意してくれるか否かも、譲渡後に引続きスムーズに会社を回していくことを考えると重要なポイントとなります。
但し、経営幹部や社員に対して事前に直接確認を行うと離職を招いてしまうこともあるので、必ずしもこのやり方は得策とは言えません。社長が彼らの考えをどのように推し量っているかということです。
この点は、取引先との関係についても当てはまります。
買収側からすれば、会社を買うということは、キャッシュフローを生み出す取引先との関係を買収することなので、譲渡に伴って取引先が従前どおりに取引を維持してくれるか否かは重要なポイントとなります。
会社売却を決意した社長が取引先に対して事前に相談してしまうと、会社売却の前に取引移管を発生させてしまうリスクがありますので、当初の段階から取引先に相談することは決して得策とは言えません。

それからM&Aに対する具体的な計画を立てる上で重要なポイントとして、いつまでに売却したいのかという時間軸の問題があります。
M&Aの売却には時間がかかります。情報を公に出来ないことから、買手探索には細心の注意を払いながら慎重に進める必要があります。
また買手候補が見つかってからも、トップ同士の面談・基本合意契約の締結・デューデリジェンス(買収監査)と順調に進んでも相応に時間がかかることになります。時間的な余裕を持った状態でM&Aに臨むことが求められるのです。

譲渡価額を事前に調べておくことも重要です。
引退した後の生活も見据えて、売却先を探す前に自社の株価がいったいいくらぐらいなのかを見ておくことをお勧めします。
企業の株価はその時々の経済環境や企業の財政状況によって変化しますので、株価を過去にチェックしていたとしても、時間が経っている場合は再度確認されることをお勧めします。

この株価算定のことも含め、M&Aのファイナンシャルアドバイザー(FA)を選定することは大変重要です。
FAの仕事は売却企業の株価算定銀行のような金融機関、独立系コンサルティング会社、士業など、様々な企業がM&AのFA業務に参入しています。
オーナー社長が信頼出来る相手にFA業務を委託すればよいのですが、重要な点として、当該FA事業者が認定支援機関としての登録を行っているか否かのチェックは重要です。M&Aは国の補助金支給の対象ですが、委託した事業者が登録を行っていることも要件の一つとされています。

また、FA事業者によって報酬体系に違いがあるので、この点にも注意が必要です。
近年では、金融機関がM&Aサービスを積極化していることもあり、税理士先生が知らないうちに顧問先がM&Aで売却されることになったというケースも珍しくありません。

以上、顧問先の中小企業オーナーからM&Aの相談を受けた場合のチェックポイントとして主要な点をいくつか挙げました。
次回コラムでは、顧問先オーナー社長から会社を買いたいとの相談を受けた場合についていくつかポイントを紹介いたします。




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