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COLUMN

2023.10.31M&A全般

中小M&Aガイドラインの改訂

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー


本年9月に中小M&Aガイドラインの改訂が発表されました。初版策定から3年が経過する中で様々な課題が見つかったことから、これらに対処するものとして今回の改訂がなされました。経済産業省のホームページで確認しますと、改訂の主なポイントは、下記のとおりです。
(1)仲介者・FAの手数料の整理
(2)M&A専門業者の質の確保・向上に向けた取組
(3)仲介契約等の締結前の書面による重要事項の説明
(4)直接交渉の制限に関する条項における留意点
夫々について簡単に内容を要約しておきます。

1.仲介者・FAの手数料の整理
手数料の考え方が整理されており、手数料の種類として着手金、月額報酬、中間金、成功報酬について夫々述べられており、また、報酬算定方法として現在業界でよく見かけるレーマン方式や最低手数料についても具体例を示すなど説明がなされています。さらに手数料については一律の基準がなく、各仲介者・FAに委ねられていること、M&A依頼者にとっては報酬額が納得できるものであることが重要であることから、契約締結前に確りと依頼する業務内容が確認されることが重要であると指摘しています。

2.M&A専門業者の質の確保・向上に向けた取組
M&A専門業者にとって依頼者との契約による善管注意義務の履行、職業倫理の遵守が求められる旨が明記され、そのためには知識・能力の向上、適正な業務遂行を図ることが重要とし、業者や業界に求められる取組が紹介されています。M&A業者の発信する経営理念やビジョンに質の高い支援をすることが重要である旨のメッセージを反映させ、整合的な取組を行うことが重要としています。業者の取組内容として他の支援機関(特に士業等専門家)との連携、役員・従業員の適正な業務遂行確保、外部委託先の監督ということが挙げられていることに加え、業界での統一的ルール作成とその遵守が期待される旨が明記されています。

3.仲介契約等の締結前の書面による重要事項の説明
M&A専門業者は、契約締結前に契約に係る重要な事項を記載した書面(電磁媒体含む)を交付して明確な説明をすることや説明後の十分な検討時間の確保などが明記され、また、書面のサンプル書式も公表されています。契約締結前での重要事項説明は不動産や金融商品の取引においては既に導入されていることですが、M&A業界においては、業界統一的ルールが存在しなかったことから締結前での説明は各業者に委ねられていたというのが実情です。業界の健全な発展の為には透明性の確保は大変重要なことであり、今回の改訂で書面での重要事項説明が提起されていることは評価されます。

4.直接交渉の制限に関する条項における留意点
直接交渉の制限に関する条項の留意点に関する項目を新設し、制限される候補先、交渉目的及び期間に関する留意点が明記されています。改訂版では、直接交渉の制限について、交渉窓口をM&A専門業者に一本化することで交渉が円滑化し得る等の観点から一定の合理性を認めていますが、一方で直接交渉が制限される候補先が無限定の場合、依頼者が自ら候補先を発見することが事実上困難となることから、依頼者が「自ら候補先を発見しないこと」及び「自ら発見した候補先と直接交渉しないこと」を明示的に了解している場合を除き、当該M&A 専門業者が関与・接触し、紹介した候補先のみに限定すべきであるとしています。直接交渉を制限する期間については、契約終了後のテール条項(=契約終了後の一定期間内にM&A業者が紹介した候補先とM&Aを成立させた場合にM&A業者に報酬を支払うという条項)が存在する場合にも直接交渉を制限してしまうと、依頼者がM&A 業者に対して手数料相当額を支払うことを覚悟した上でM&Aを実行することが難しくなり、依頼者の自由な経営判断を損なうおそれがあるとし、直接交渉の制限の有効期間は、仲介契約・FA 契約が終了するまでに限定すべきであるとしています。
中小M&Aについては、行政・民間の両方で取組が進み、中小企業におけるM&A市場も順調に拡大してきました。その一方で、契約内容や手数料体系の解り難さ、業者による支援内容の質のばらつき等の課題が見受けられるようになり、今回の改定に繋がったわけです。
今後もガイドラインのみならず関係諸規則の整備の進展など、中小M&Aに対する信頼を確実にしながら、業界が健全な発展を遂げていく事が望まれます。



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