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COLUMN

2023.09.12信託

エスクローと信託

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  • 商事信託

今回は「エスクロー」について考えてみたいと思います。
エスクローは物品などの売買に際し、信頼のおける第三者を仲介させて、代金決済の安全性を確保する機能を言います。
その語源は、押印書類の巻物を意味するescroue(古代フランス語)で、イギリスの上流階級の間で「権利譲渡証書」「条件付捺印証書」の意味で使われるようになり、その後アメリカの不動産取引の安全確保手段として発展・定着しました。


1.アメリカ不動産取引と日本との違い

アメリカにおける不動産取引は、エスクロー法に基づくエスクロー事業者が、売主と買主の間の契約条件が全て充足し所有権が移転されるまで、買主から預かっている買取代金を留保します。
一方日本では、所有権移転登記に必要な書類の完備を司法書士が確認したことをもって、登記完了を待たずに買主が売主に購入代金を直接送金します。
地面師と呼ばれる詐欺集団は、この資金決済と登記完了までの時間差を利用し、不動産の所有者になりすまし偽造書類で土地の購入代金をだましとるのが手口です。某大手ハウスメーカーが五反田の土地取引で55億円を地面師に搾取された事件は記憶に新しいですね。アメリカのエスクロー制度のもとでは地面師の出番はないとされています。


2.国内における身近なエスクロー
ECサイトでの取引は店頭でのショッピングと異なり、買主は「商品がちゃんと引渡されるのだろうか」、売主は「ちゃんと支払ってもらえるのか」お互い不安です。
ご存じYahoo!オークションやメルカリはエスクローを提供しています。匿名による個人間取引ながらこの市場が普及したのはエスクローの役割が大きかったと言えるでしょう。


3.ECサイト事業者が提供するエスクローの法的位置づけ
銀行以外の事業者が実質的な送金業務を担う場合、資金決済法上の「資金移動業者」の登録が必要で、その事業者には利用者保護を目的とした様々な規制・義務が課されます。一方でエスクローを提供しているECサイト事業者の多くは、現時点「収納代行業者」の扱いで、比較的緩い規制のもとでエスクローを提供しています。この点、「ECサイト事業者の破綻リスクへの備えが不十分であり資金移動業者とみなして資金決済法上の規制を課すべき」という意見と「規制を強化すると事業者の管理負担が増えて利用者コストに跳ねるから現状のままでよい」という議論がこれまで繰り返されています。


4.日本におけるエスクローへの期待と「信託」
将来ECサイト事業者が「資金移動業者」とみなされれば、資金決済法上、買主からの預り金についての保全義務が生じ、その手段として「供託」「銀行等の保証」「信託」のいずれかを選択することとされています。なかでも信託は、6月のコラムでご紹介したとおり、財産の保全や独立性が強味と言える制度です。またエスクロー事業者が信託を選択すれば、エスクロー対象となる金銭の具体的な取扱い方法を信託会社との間で取り決めることができますので、エスクローと信託の親和性は高いと評価できるでしょう。
今後以下のような取引でエスクローの利用が想定され、信託の活用が注目されます。
(1)不動産取引
地面師対策、不動産業者を介在しない個人間不動産売買、非対面取引(ネット取引)等でエスクローの利用が考えられます。
(2)M&A
多額の資金が動くM&Aでエスクローが利用されることがあります。また、買収完了後、売手からの情報に虚偽や過失が認められた場合の損害賠償金も、一定期間売手がエスクローに預けるケースがあります。


私ども日税グループでは信託に関するご相談を承っております。
ご相談段階では無料で対応させていただきますので、お気軽にご相談下さい!





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