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COLUMN

2023.03.20M&A全般

2022年の国内M&A市場の動向

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



レコフデータの統計数値によりますと、2022年の1年間に国内企業が絡んだM&A件数は4,304件となり、2021年の4,280件を超えて引続き史上最高件数を更新しました。
このうち、国内企業同士のM&Aは3,345件となっており、これも史上最高件数を更新していますが、2022年は前年比8件の増加となり、2021年が前年比393件増だったことと比較すると件数の増加は鈍化しています。
この鈍化の動きは、国内企業同士のM&Aだけでなく、国境を跨いだM&Aについても同様の傾向となっています。
特に国内企業による海外企業に対する買収件数は前年比±0件となり、コロナショックの2020年を除き、過去数年にわたって毎年数十件の増加件数が見られたことと比較すると、明らかに鈍化していると言えます。
2022年は、外国為替市場の大きな変動や仕入原材料などでのインフレ圧力、ロシアのウクライナ侵攻等の地政学リスク、更には世界景気の鈍化懸念など、企業経営を取り巻く環境の変化を受け、経営者は以前にも増して慎重な経営判断が求められた可能性があります。

成約件数の勢いは全体として大人しくなった1年間ですが、M&Aの内容を形態別に見ますと、買収は1,557件と前年比103件増と2021年の前年比193件増と比較して鈍化していますが、過去数年間の中では、まだ堅調さを保っていると言えます。件数が減少した形態としては、合併が30件と2021年比で9件減少し、これは2008年以降でも2020年の29件に次いで低い件数となっています。
また、事業譲渡も368件と前年比101件の減少となり、2019年~2021年の3年間で437~497件だったことと比較して減少していることがわかります。その他、資本参加は2,119件と前年比9件増、出資拡大が230件と22件増となっています。
全体としては、買収件数が鈍化し、かつ合併や事業譲渡など組織再編の動きも大人しくなった年であったことが伺えます。

次に業種別の動きについて、買収・出資側と被買収・出資受入側のそれぞれの件数を見ますと、2022年の1年間で最も多く登場した業種は、買収側ではその他金融が1,219件となっており、2番目に多く登場したサービスの661件を大きく上回り圧倒的に多くなっているのですが、これにはファンド利用案件がかなり多く含まれていることもあり、その他金融業に属する企業による買収はそれほど多くはないものと思われます。
被買収側の方では、ソフト・情報が1,602件と最も多く、こちらも2位のサービス631件を大きく超えてトップとなっています。
買収側も被買収側も上位10位の業種の顔ぶれについては、過去5~6年を見る限りではほとんど変わっていないのですが、共に製造業種よりも非製造業種が多くなっています。
非製造業ではソフト・情報、サービス、その他販売・卸、アミューズメント、建設、不動産・ホテル、その他小売、総合商社、運輸・倉庫、その他金融(ファンド)の登場が多く、製造業では電機、化学、食品が多く登場しています。

2022年の具体的な買収成約案件のうち、まず被買収側の業種で最も多かったソフト・情報で金額開示されている93件を対象に内容を確認しますと、金額の最も大きかった事例としては、同年5月のDeNAによるアルムの買収が挙げられます。手法は第三者割当増資+株式交付となっており、過去の出資比率を引き上げる形で子会社化した事例となっています。
この業種で2番目に金額が大きかった事例としては、博報堂DYホールディングスによるソウルドアウトの買収となっており、手法はTOBが用いられています。
3番目に金額が大きかったものは、三菱UFJフィナンシャルグループがカンムを株式譲渡により約70%取得した事例です。
このソフト・情報業種での93件の事例では買手は対象企業の内容を理解しやすいIT企業が多いのですが、金融や広告などIT技術を駆使する異業種も散見されます。

製造業の中で最も売却事例が多かった電機に注目しますと、金額開示された9件の中で最も金額が大きかった事例としては、リコーによる富士通子会社でスキャナーを手掛けるPFUに対する同業種内買収が挙げられます。富士通はハードからソフトへの転換を進めており、ペーパーレス時代を考慮して家庭用スキャナー事業を非中核事業として売却したものです。
2番目に金額の大きかった事例は、岩谷産業によるトキコシステムソリューションズに対する異業種買収です。岩谷産業はエネルギー供給を中心にビジネスを展開し、近年では脱炭素社会を見据えて水素関連事業を重要領域として捉えており、トキコシステムソリューションズの有する製造技術、ノウハウが自社のサプライチェーン強化に結び付くとの判断です。

全体として件数の伸びが前年比で大人しくなった2022年ですが、自社の競争力強化に向けた戦略的買収はしっかりと行われています。外部環境が落ち着きを取り戻せば、M&Aの成約件数も復調を歩むものと思われます。




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