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COLUMN

2023.02.21M&A全般

顧問先社長からの相談に応えるM&Aの知識とスキル―②

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



前回のコラムでは、税理士の先生方々が顧問先の中小企業オーナーとの会話の中で会社を売却したいといった相談を持ち掛けられた際のチェックポイントをいくつか挙げておきましたが、今回は逆のパターンとして、会社を買いたいといった相談を持ち掛けられた際のポイントについて触れておきたいと思います。

東京商工リサーチ社の「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」によれば、他社買収の意向を持つ企業が買収先企業を探す際、金融機関や専門仲介機関に依頼したり、自力探索を行なったりするケースが多いのですが、会計士や税理士などに依頼するケースもそれらに次いで多くなっており、いつ相談されてもおかしくないと言えます。

他社買収を希望する場合、買手はいったい何を期待して買収を検討するのでしょうか。
シェアの拡大、単位当たりコストの低減、人材や設備といったリソースの獲得など買収の狙いは各社で異なるわけですが、まず戦略性について事前に整理できていることが求められます。

例えば、印刷会社のような産業では、同業他社を買収することによって業界シェアを拡大すると同時に、単位当たりの製造コストを低減させることができます。いわゆる水平統合です。

また、中古車販売会社の場合には、自動車修理会社を買収することによって、中古車を仕入れて販売するまでの一連の工程を自前で揃えることができるので、サービスや製品クオリティの向上を図ることが可能となります。垂直統合の例です。
買収による効果をしっかり見通せていることが重要なのですが、この点、水平統合や垂直統合は比較的考えやすいのではないかと思われます。

戦略性を分析する手法として、「成長マトリクス」という手法もあり、これは製品と市場という2つの軸に対して、それぞれ新規と既存の観点から事業戦略を「市場浸透」「市場開拓」「製品開発」「多角化」の4つのタイプに分類して事業の方向性を分析する手法です。
この中で多角化は、今まで自社では持たなかった新しいリソースを活用して別の市場に進出することになりますので、M&Aに際しては十分な注意が求められます。

次に重要な点として、予算の制約が挙げられます。
買収後に追加コストが発生することもあり、過大な買収はその後の事業展開に支障をきたす恐れがあります。一方、規模が過小な場合には、買収しても十分な効果が発揮されないかもしれません。

それからスピードの問題も重要です。
買収に備えて十分な調査を行う事は当然なのですが、機を逃してしまっては意味がありません。買収は時間を買う行為でもあるのです。
このスピードは買収した後においても求められます。
M&Aが上手く効果を表すためには、買収した企業が自社と上手く融合されることが求められ、買収後速やかに統合を進める方が効果的なのです。
そしてそのためには、買収前の段階から買収後を見据えておくということが望まれます。

戦略面や予算制約が把握できれば、買収対象企業を見つけて交渉を開始することとなりますが、M&Aには会計・税務・法務の知識が総合的に求められますので、自社単独で進めるよりも、信頼できるアドバイザーを見つけることが望まれます。
交渉相手となる企業が見つかれば、秘密保持契約の締結、基本的開示情報の確認、両者面談などを順次進めていきますが、買収交渉を本格化させる際には、改めて基本合意契約を締結した上でデューデリジェンス(買収監査)を行うことが通例です。

基本合意契約は、売手と買手との間で締結する有期契約ですが、主なポイントは、期間中は最終契約(譲渡契約)の締結を目指して双方が真摯に向き合うこと、独占交渉期間となること、デューデリジェンス(買収監査)を行うこと、金額を記載する場合は当金額が絶対的なものではないこと、等々です。

デューデリジェンスには手を抜かないことが重要です。
特に株式譲渡となる場合、買手は対象会社を包括承継することになるので、隠れ債務の有無などをしっかり確認しておくことが求められます。デューデリジェンス期間は中小企業の場合には通常1~2カ月程度が多い様です。
専門的な知識も必要になりますので、財務面・法務面など分野ごとに専門家にデューデリジェンスを委託するケースも見られます。デューデリジェンスの結果に問題なく、またそれを受けて譲渡条件についても売手・買手の双方が納得できれば、最終契約として株式譲渡契約や事業譲渡契約などが締結されます。

契約では、金額や引渡日を明記するほか、売手・買手が互いに表明保証を行ってそれぞれの責任を明確にします。
引渡が行われると買収行為は完了したことになりますが、買収後に売手が契約で表明保証した内容に違反が見られる場合もあります。内容によっては、損害賠償請求に発展する場合もありますが、売手に損害賠償をする能力がない場合、買手は被った損害をどうやって埋合せればよいのかという問題が発生します。このような事態に備え、最近では損害保険各社から表明保証保険という商品も提供されていますので、事前に確認しておいてもよいかと思われます。




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