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COLUMN

2022.11.15信託

民事信託(家族信託)の活用事例

  • 民事信託
  • 家族信託
  • 事例

執筆者:株式会社日税経営情報センター



1. はじめに
日本の認知症高齢者の数は、2012年で 462万人と推計されており、2025年 には約700 万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが厚生労働省から発表されています。今や認知症は誰もが罹患する可能性のある身近な病気です。認知症になると、判断能力を失い契約行為ができなくなってしまいます。所有している不動産を売ることができなくなり、銀行預金を下ろすことさえできず生活に支障をきたすことも有り得ます。そうなることがないよう、元気なうちに子供などを受託者として民事信託(家族信託)契約を結んでおくと安心です。

民事信託(家族信託)を活用すれば、親の判断能力が低下してきた場合でも、子供が親名義の不動産を売却したり、金銭管理を行ったりすることが可能です。後見制度を利用することもできますが、この制度は被後見人の財産維持が目的であり、不動産の処分や金銭の自由な出し入れなどを簡単に行うことはできません。この点で、信託目的に従い幅広いニーズに柔軟に対応できる民事信託(家族信託)は有効な手段となるでしょう。

事例① 親が認知症になっても子供が親の自宅を売却
民事信託(家族信託)を利用しておけば、認知症になってしまった親が所有する自宅を子供が売却することも可能です。信頼できる子供を受託者として、契約によって、自宅の処分権限も持たせておくことで、子供が売却するかどうかを判断することができます。

父親が亡くなり一人暮らしの母親とその長男という家族の場合をみていきましょう。
母親が施設への入居が必要になったとき、資金が足りないのに認知症で自宅の売却ができないということがないよう、母親が元気なうちに長男と信託契約を締結します。長男は母親の様子をみながら適切な タイミングで売却できます。

この場合のスキームは、母親が「委託者兼受益者」、長男が「受託者」、最後に残った財産を受け取る「帰属権利者」を長男とします。なお兄弟がいる場合、帰属権利者は兄弟平等に残余財産を取得するなどと決めることも可能です。



事例② 親が認知症になっても滞りなくアパート経営を行う
アパートを管理するには、手間がかかります。高齢のため、物件を管理することに限界を感じることがあるかもしれません。そのような時に、民事信託(家族信託)を利用して子供に賃借人とのやり取りや建物の修繕等の管理を任せられます。認知症にならないうちに子供を受託者として民事信託(家族信託)契約をしておくことが肝心です。

父親・母親・長女・長男がいる4人家族を例に、父親が所有する不動産についてみてみましょう。
父親が所有するアパートについて、父親が委託者兼受益者、近くに住んでいる長女が受託者となり民事信託(家族信託)契約を行います。管理と売却権限を長女に託しつつ、発生する収益は父親のものとします。煩わしい物件の管理や事務を長女にお願いし、建物修繕や売却の権限まで引き継ぐことで、安心して老後を過ごせるでしょう。

この場合のスキームは、父親は「委託者兼当初受益者」、長女が「受託者」、父親に相続発生後は母親が信託財産であるアパートの受益権を引き継ぎ「第二受益者」となり、母親の相続発生後は長女と長男が残余財産を取得する「帰属権利者」となります。



事例③ 不動産の共有相続に伴う管理問題を解決
兄弟姉妹で不動産を相続する場合にも、民事信託(家族信託)を使うことが可能です。

たとえば、すでに母親が亡くなっている父親と兄弟3人の家族をみていきたいと思います。
父親から相続する予定のアパートを、兄弟3人で3分の1ずつ引き継ぐことを想定しているとしましょう。物件の管理や賃借人対応は受託者として長男を指定し、アパートの管理・修繕・売却等の権限を持たせます。父親が生きている間は、父親に収益を配当し、父親の相続発生後は、兄弟に平等に収益を配当していきます。管理・処分の考え方が兄弟で一致せず対応が難しくなることがないよう、経済的利益は均等に相続しつつ、長男に管理・処分権限を集中させスムーズな対応ができるようにするものです。

この場合のスキームは、父親が「委託者兼当初受益者」、長男が「受託者」、父親の相続発生後は、兄弟が「第二受益者」となります。兄弟に受益権が承継されたあとも、引き続き長男が受託者となり信託財産の管理・収益の配当を行います。



民事信託(家族信託)は、生前の財産管理を行う上で、認知症対策をしておきたい場合や、管理処分権限を子供に託しておきたい、また相続発生後の財産の行先まで決めておきたい場合に有効です。
今回の事例以外にもさまざまなケースで活用できます。ただし、いずれも民事信託(家族信託)契約は短期間で締結することはできません。最低でも半年から一年くらいの時間がかかることを念頭に検討することが重要です。
親が元気なうちに、しっかり家族間で話し合って決定することをおすすめします。

私どもは相談段階では無料で対応させていただきますので、お気軽にご相談下さい!





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