MENU MENU

COLUMN

2022.09.27M&A全般

PEファンド実態調査より

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



PEファンドとはプライベートエクイティ(未公開株式)に投資を行うファンドのことですが、大きく2つのタイプに分類できます。
対象企業の議決権の過半数を取得して経営の主導権を握り、経営戦略や収益構造の改善によって企業価値の向上を図り、その後売却してリターンを得るというビジネスモデルを基本とするバイアウト(買収)ファンドと呼ばれるタイプや、スタートアップ企業のようなハイリスクな企業に出資を行ない新規上場(IPO)等によって資金回収を行うベンチャーキャピタルファンドというタイプがありますが、一般的にはPEファンドと言うと、狭い意味ではバイアウトファンドを指すケースが多いようです。

日本では、中小企業育成としては金融機関融資などの間接金融に頼るケースが多かったことから、欧米諸国に比べて直接金融が未成熟だったのですが、リスクマネー供給を担う投資家としてPEファンドへの期待は時代と共に大きくなってきています。

今回のコラムでは、本年6月の中小企業政策審議会金融小委員会において中小企業庁から参考資料として提供された「PEファンド等による投資に関する実態調査」の内容をご紹介いたします。
調査は、再生ファンドの性質を有するものを除いたバイアウトファンド(以下「バイアウト」)及びベンチャーキャピタルファンド(以下「ベンチャーキャピタル」)の組成・投資実績などについて、PEファンド運営会社への調査と地域金融機関への調査という2つの調査から構成されるもので、有効回答数はPEファンド運営会社43社(ファンド数90件)、地域金融機関159機関(地銀、第二地銀、信金)となっています。
今回は、このうちPEファンドへの調査結果についてご紹介いたします。

まずファンドへのコミットメント(出資約束)総額は、ベンチャーキャピタルでは10億円以下が23.3%、10億円超30億円以下が14.0%、30億円超50億円以下が20.9%となり、50億円以下での合計が58.2%と比較的小規模であるのに対して、バイアウトでは200億円超が55.3%となる一方で、50億円以下は13.1%と比較的大規模な状況となっています。
ソーシング(案件発掘)のルートとしては、ベンチャーキャピタルの場合にはGP(ジェネラルパートナー)から対象企業へ直接アプローチを行うほか、出資を希望する企業からファンドへの直接申込みや他ファンドからの紹介によるケースが多くなっていますが、バイアウトの場合にはM&A仲介業者、FA(ファイナンシャルアドバイザー)、金融機関からの紹介が多くなっています。
投資対象企業の規模については、ベンチャーキャピタルでは売上が立っていない企業や従業者数5人以下といった小規模企業への投資割合が多い一方で、バイアウトの場合には売上高10億円以上や従業者数100人超といった比較的大きな企業への投資割合が多くなっています。
投資金額と投資期間については、ベンチャーキャピタルでは案件ごとの投資額は0.6~3.4億円で投資期間は5~10年が標準的ですが、バイアウトでは案件ごとの投資額は8.7~36.4億円で投資期間は3~5年が標準的となっています。
取得株式の種類については、ベンチャーキャピタルでは普通株に加えて優先株(議決権あり)を活用するケースが多い一方で、LBOローンなどファイナンスの活用は少なくなっていますが、バイアウトでは株式の種類としては普通株のみを活用するケースがほとんどですが、LBOローンの活用は多くなっています。
投資回収(EXIT)方法では、ベンチャーキャピタルではIPOと事業会社への売却が多くなっており、次いで他ファンドへの売却となっています。一方、バイアウトでは事業会社への売却が最も多くなっていますが、他ファンドへの売却、IPO、MBO/EBOなども相応に活用されています。
案件ごとの投資リターン(IRR)では、ベンチャーキャピタルの7割超、バイアウトの6割超において15%以上となっています。

実態調査のとおり、ベンチャーキャピタルとバイアウトとの間で投資行動に違いはありますが、どちらも中小企業へのリスクマネー供給や企業成長のサポートという点では重要な役割を果たしており、事業承継、M&Aという分野においてもPEファンドはプレーヤーとしても活躍しています。
現在、国内で活動するPEファンドの数は、まずベンチャーキャピタルについて日本ベンチャーキャピタル協会のホームページで会員数を数えると、外部から投資資金を調達するベンチャーキャピタルが130社、企業が自社グループ専用として設立するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が107社、となっています。
一方、バイアウトについてPEファンド.JPのホームページで確認すると80社の名前が挙がっています。

ベンチャーキャピタルもバイアウトも結構な数のプレーヤーが国内で活動をしており、それだけ多くの資金がファンドに入っているとも考えられます。ファンドというと、経営陣と敵対したり、買収後に事業の切売りを行なったりといった些か強硬な手段を通じてリターン確保を狙うファンドもあるためか、世の中ではいいイメージを持たない方もいますが、多くのファンドは企業との友好的関係をベースとして付加価値の向上を図ろうというものです。(もちろん投資期間の問題は残りますが…)
スタートアップも含めて中小企業の経営者は、自身の会社の成長・承継を考える上でパートナーを幅広く考えるべきであり、ファンドを排除することは必ずしも適切ではないものと思われます。




あわせて読みたい!
M&AとESGとの関係国内M&A市場の動向について



サービスのご案内
日税M&A総合サービス日税事業承継支援サービスメールマガジンのご登録



免責事項について
当社は、当サイト上の文書およびその内容に関し、細心の注意を払ってはおりますが、いかなる保証をするものではありません。万一当サイト上の文書の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いかねます。
当サイト上の文書および内容は、予告なく変更・削除する場合がございます。また、当サイトの運営を中断または中止する場合がございます。予めご了承ください。
利用者の閲覧環境(OS、ブラウザ等)により、当サイトの表示レイアウト等が影響を受けることがあります。
当サイトは、当サイトの外部のリンク先ウェブサイトの内容及び安全性を保証するものではありません。万が一、リンク先のウェブサイトの訪問によりトラブルが発生した場合でも、当サイトではその責任を負いません。
当サイトのご利用により利用者が損害を受けた場合、当社に帰責事由がない限り当社はいかなる責任も負いません。



株式会社日税経営情報センター