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COLUMN

2022.06.28M&A全般

国内M&A市場 各業種の動向について

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



国内M&A市場の動向について、業種別にいくつか取り上げます。

レコフデータを用いて金融と電力・ガスを除く25業種について、2012年~2021年の10年間のM&A件数を見てみますと、電機セクターでは累計1,415件となり、25業種の中では最多件数となっています。
さらにこの電機セクターにおけるM&Aを形態別に見ますと、最も多い形態は資本参加(出資拡大含む)となっており、その件数は過半数取得を行う買収の件数を上回っています。2021年までに累計では資本参加746件、買収491件となっています。
電機セクターは、近年ではIT化やDXの潮流もあり、他の産業とも絡みやすくなっていることやスピードを重視する経営の下では資本参加という手法が使いやすくなっているものと思われます。

この傾向と対照的とも言えるセクターが建設です。
過去10年間の件数は累計921件となっており、25業種の中では電機に次いで件数が多いセクターなのですが、その中身を形態別に見ますと資本参加279件、買収561件という具合に買収が多くなっています。
建設セクターの場合、建設工事受注の拡大を図るためには自社の営業エリア拡大が重要となり、M&Aの形態も買収が多くなっているものと思われます。もちろん建設セクターにも、IT企業とのアライアンスによるDX推進など他産業と連携する動きもありますが、その程度は大きくないようです。

介護医療セクターも特徴のある動きを示しています。この10年間でのM&A件数は累計658件となっており、これは25業種の中では上から5番目の件数です。
その中身を形態別に見ますと、資本参加が302件となっており、買収254件よりも多く利用されています。
資本参加の件数が買収を上回るという現象は電機セクターでも同様に見られたものですが、介護医療セクターの場合、もう一つ特徴として指摘できる点があります。
それは、事業譲渡が相対的に多く使用されているということです。
この10年間における事業譲渡の件数は102件となっています。事業譲渡は株式譲渡のような資本異動を伴わずに特定事業の譲渡を行うものであり、組織再編、事業再編を行う際によく利用される手法です。
介護医療セクターでは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、有料老人ホーム、訪問介護、通所介護などいくつかの事業があり、それぞれに求められる経営ノウハウが異なっていることはもちろんですが、一方で、事業拡大の為には営業エリアの拡大が必要になる等の共通点もあります。このため事業の整理集約と規模拡大の両面において事業譲渡という手法が用いられやすいということが指摘できます。

外食セクターは、この2年間連続して件数を減少させたセクターとなっています。
最も大きな背景は、2020年からのコロナ禍による影響であることは言うまでもありません。
コロナ以前にはオリンピック需要や訪日外国人顧客の増加など人流増加を見込んだ動きもあり、M&A件数も相応の増加を辿ってきましたが、コロナ後は影響を見定める動きから慎重な動きとなっています。

この10年間でM&A件数の少なかったセクターとしては、コンビニエンスストア、スーパーマーケットが挙げられます。
コンビニエンスストアは10年間で65件、スーパーマーケットでは198件となっています。これらはある程度、業界勢力図が落着いた段階にあると言うことができます。

以上のとおり、足下10年間でのM&Aの動向について幾つかセクターをピックアップして特徴を述べました。
全体として10年前と比較すると、M&A件数は伸びています。また形態別の動きを見ると、総じて資本参加の利用が伸びているという点も指摘できます。
セクターによってこの10年間の動きは異なりますが、M&A件数の増加、資本参加利用の増加という点はほぼ共通しています。
これらの背景として、経済環境のみならず、事業承継や企業の競争力増加を後押しする国の施策が大きく影響していることが十分考えられます。

また、個々の経営者の意識変化もM&A件数の増加に寄与していると考えられます。
東京商工リサーチ「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」を参照しますと、M&Aでの買収、売却のそれぞれについて、10年前と比較して中小企業経営者のイメージは両方ともにプラスのイメージがマイナスのイメージを上回っています。
また、このイメージを経営者の年齢層別に見ると、年齢の若い経営者ほどM&Aについてのイメージもプラスのイメージが強くなっているという事がわかります。

今後もM&Aは増加する事が予想されます。
経営者へのコンサルティングにおいても、M&Aを視野に入れたコンサルティングが益々重要になってくるものと思われます。




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