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COLUMN

2022.02.22M&A全般

事業再生について―①

  • M&A
  • 事業再生

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



「事業再生」とは、収益性の低迷や資産価値の毀損などから事業継続に支障をきたしている、又はきたすおそれのある企業が、過剰債務の解消やキャッシュフローを改善するために抜本的な改革を行い、持続的な事業の存続や成長を可能とするプロセスのことを言い、「ターンアラウンド」とも呼ばれています。
一方で「企業再生」という言葉もあり、両者の間には定義の違いがあるわけではないのですが、どちらかと言えば、民事再生や会社更生といった法的整理では企業再生という言葉が用いられるケースが多く、私的整理では事業再生という言葉が用いられるケースが多い様です。
本コラムでは、便宜的に事業再生という言葉に統一しておきます。

この事業再生が注目されるようになった背景は、1,990年代から2,000年代にかけてのバブル崩壊をきっかけとした経済低迷期にあります。
経営不振企業では、収益性と財務構造の両面での悪化が強く結びついており、収益性改善のためには「選択と集中」、「リストラ」などの事業再構築のみならず、財務再構築として過剰債務・不良債権の処理問題も議論される必要がありました。
事業再構築と財務再構築を一体として進めるために様々な制度的枠組みも組成され、その後幾つかの改変もなされて今日の制度に至っているのですが、事業再生は一連の整理手続きの中で語られることが多く、倒産処理としての精算型手続きに対して、再生型の手続きとして位置づけられます。
再生型手続きには、法的手続きによるものと私的手続きによるものがありますが、前者では会社更生や民事再生など裁判所手続きを経て進めるのに対して、後者では債務者と債権者による当事者間での純粋な私的調整の他、事業再生ADR(特定認証紛争解決手続)や中小企業再生支援協議会の介在による調整など、いわゆる準則型私的整理と呼ばれるものがあります。

法的手続きによる場合には、倒産企業というイメージから取引先や顧客などへの影響が懸念されることになりますが、私的手続きの場合にはこの心配がないため、まずは私的手続きでの再建を目指すケースが多いと言えます。そして法的であれ私的であれ、これらの再建型整理手続きでは、対象企業の事業再生過程における出口戦略としてM&Aが多く活用されている点が特徴です。

対象企業が事業再生を図る上で、スポンサーからのバックアップは非常に重要です。
事業再生では、過剰債務の解消によるバランスシート改善や抜本的改革による事業再編だけでなく、スポンサー企業による支援やシナジー効果の付加といった将来に向けての収益性の改善計画が求められるのです。
こうした再生計画に加えて、対象企業を存続させる社会的な意義なども加味して再生可能性が追求されることになります。

企業規模が小さい場合、事業再生が果たせずに倒産処理となるケースも多いのですが、一方で私的整理による再生事例も多く見られます。
ここで重要な点として、中小企業、特にオーナー経営企業の場合、経営者は銀行への連帯保証があることから、自ら金融機関に働きかけて事業再生に着手するのが遅れがちになるケースが多いということ、また大企業の場合に比べて適用できる再生手法の選択肢の幅も狭いことが指摘できます。事業再生には早期着手が重要なのです。

本コラムでは、事業再生を考える上で当初に検討される私的整理について焦点を当ててみたいと思います。
私的整理の特徴としては、法的整理に比べて事業価値の毀損が少ないという点が挙げられます。
法的整理の場合には倒産企業というイメージから対象企業のブランドにダメージがあることや、取引相手企業から現金取引を求められる等、厳しい状況に置かれますが、私的整理の場合には債権者との交渉が水面下で行われることから、法的整理のような事業への影響は少ないと考えられるのです。
しかし、私的整理の場合には法的な縛りが軽くなる一方で、一部の債権者への偏頗弁済など衡平性に欠ける危険性もあります。
こうした欠点への対応として、2001年に「私的整理ガイドライン」が透明性のある私的整理の道標として発表されましたが、メイン銀行の負担が大きい等ということもあって実際にはあまり活用されず、最近では準則型と呼ばれる諸々の手法に従って進められるケースが多い様です。
それでは、次回以降この準則型の私的整理について幾つか取り上げてみます。




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