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COLUMN

2022.04.18国際税務・海外ビジネス

第4回 タイの会計・税務の制度②

  • ASEANビジネス
  • アジア情報
  • タイ

執筆者:上原重典 先生
※上原先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。



こんにちは。日本・タイで会計・税務をはじめ、進出相談等を提供しているAlpha Professionsの上原です。
日本では個人所得税の確定申告作業も一段落をし、法人申告業務の繁忙期に突入するところと思います。先生方におかれましては、コロナウィルス感染予防はもちろんのこと、体調を崩すことなく、繁忙期をお過ごしください。
今回はタイにおける会計制度の基礎をご紹介し、関与先企業においては現地でどのような会計実務への対応必要なのかをお話ししたいと思います。

第4回 タイの会計・税務の制度②

4回目の今回は、タイの日常の会計・税務業務についてのお話を紹介いたします。

(1) タイにおける会計人材の実情

前回の終わりに、タイの会計は会計担当者の経験値に依存するところが多いとお話しいたしましたが、日本では日商簿記検定のように簿記に関する一定レベルの知識を把握する試験制度があり、それによってその人の会計に関する基本知識の理解度を知ることができますが、タイのおいてはそのような制度はなく、大学で会計を専攻し、卒業した人たちが会計事務所や一般法人の経理の職に就くのが一般的です。
また大学の授業の中でも、その多くは日本のようなカリキュラムにはなっていないのが通常のようです(弊社スタッフ談)です。したがって、日本における会計に携わる人材に比して、会計制度を理解したうえで実務に対応できる人材に欠けていると言えるのではないでしょうか。その一方、タイで一般的な経理ソフト(日本で言えば弥生会計のようなもの)の使用方法については大学で学ぶようになっていることから、会計の理論はわからないが、ソフトへの入力はできるというスタッフが多く存在します。


(2) タイの制度会計

では現状でのタイの会計制度はどのようになっているのでしょうか。
現在のタイの会計制度は、大きく「公開会社か、非公開会社か」によって適用すべき会計基準が定められており、TFRS (Thai Financial Reporting Standard) for NPAEs(Non-Publicly Accountable Entities)と公開会社向けの会計基準であるTFRS for PAEs(Publicly Accountable Entities)となっています。
タイに進出している多くの日系企業の場合、上記の内、TFRS for NPAEs(Non-Publicly Accountable Entities)に基づいた会計処理を実施しているものと思われます。NPAEとPAEとの差異は、基本的にTFRSに定められた項目の内、適用範囲が異なるものとなります。
これに対してTFRS for NPAEの見直しが行われ、いわゆるSME基準(Small and medium enterprise)というものがつくられ、2019年から順次適用を開始することとなりました。日本で言うところの中小企業に対する会計基準に該当するものと理解されるとわかりやすいかと思います。
日系SMEが直接関係する項目としては、キャッシュフロー計算書の開示、連結財務諸表の開示、税効果会計の適用、デリバティブ取引に関する会計処理、開示が順次義務付けられていくこととなりました。日本においては、グループ会社を有しているような場合には連結決算書を作成することは日常の会計業務の中で行われている中小企業も少なくはないと考えられます。特に税効果会計に至っては、会計と税法が大きく乖離している項目も少なくないことから、きわめて普通の会計処理事項として対応されている、いわゆる「有税で処理する」といった言葉に象徴される、会計と税務の乖離への対応となります。
これに対してタイにおける職業会計人においては、CPDという認定資格保持者の場合であってもそもそも連結財務諸表やキャッシュフロー、税効果会計といった項目を正確に理解できていない者も多く、タイ現地で小規模で運営されている企業にとっては、新会計基準へ対応していくことが人材面でも大きな課題と懸念されるところではないかと感じるところです。実際のところ制度はあっても、適用をしていないケースが現状のタイにおける中小企業の会計実務ではないでしょうか。


(3) 日常の経理業務

前回のコラムに記載いたしましたが、タイではVATの処理を中心として会計処理を行うことが非常に多いです。
例えば、卸売りの場合には、仕入れ、売上に係るVATの計算が中心となりますが、VATを考える際にはTAX INVOICEが欠かせないもので、その記載内容については厳格に定めがあります。進出直後の企業の場合、この記載内容に不備があり、仕入れに関するVATが控除できなかったり、売上に関するTAX INVOICEの発行時期を誤っていたりといったようなトラブルが生じます。
またタイでは、源泉所得税の徴収の対象となる支払の範囲が日本の源泉徴収制度に比べると非常に広く定められており、特に特徴的なところは、日本では基本的には法人間の取引について源泉徴収をする必要はほとんどありませんが、タイの場合には、多くのケースで源泉所得税の徴収の対象となります。
したがって、どのような支払いについて所得税を源泉徴収する必要があるのか理解できていない会計スタッフが対応すると、源泉漏れということが生じます。源泉徴収した所得税は、翌月5日(電子申告の場合には翌月15日)となり、そのこと自体はほとんどの駐在員は理解しているところでしょうが、その中身を把握している人は少ないかと思います。というのも、これはその実務を担当している現地スタッフが作成し、その結果のみで申告、納付をしている(せざるを得ない)ことによるものでしょう。またタイの会計・税務業務となると、このVAT、源泉所得税の申告・納税が終わると、ほぼ終わったと勘違いしてしまう会計スタッフも少なくはなく、月次決算を正しく処理するところまでを正確にできていないことも珍しくはないのが日常の会計業務の実態となります。それを踏まえたうえで、我々のような専門家は物事を考え、適宜、必要な情報の入手に努める必要があります。


(4) まとめ

経済の発展と共に会計処理の基準も先進国の基準と同様な水準まで改正が行われておりますが、制度が複雑になればなるほど適切に処理できる人材が豊富ではないことは否定できないのが実情です。
またタイにおける「経理」に関連する業務は、どちらかというと「税務」を中心として考える傾向が強く、何か困るとすぐに当局に連絡をしてしまい、何の疑いもなく当局の担当者の意見を受け入れてしまうのです。これが当局の正式な見解で通るなら許容の余地はあるのですが、担当官によっていうことが違うため、何の担保にもならないのがタイの怖いところです。
企業の立場から考えた場合、ある事象に対する会計・税務処理がどのように行うのが正しいのかを考えるときに、ツールが極めて限定されるとは言え、まずは基本である法令を探し、それをもとに考えてほしいところですね。
昨今、国境をまたぐ取引が当たり前となっていますが、正しい知識やあるべき考え方を持ったうえでこれらを議論できれば良いのですが、まだまだタイにおいてはその域に達してる人は少ないことから、逆にそのような事情を前提として財務諸表や申告書の内容の精査が必要であると理解しておくべきなのでしょう。


次回はタイの税制の概略について紹介をいたします。


※コラムに関するご質問は受付しておりません。予めご了承ください。



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上原 重典

Alpha Professions 上原重典税理士事務所 代表大手外資系会計事務所、税理士法人XATを経て、2012年よりタイ現地法人の責任者としてバンコクに駐在、2017年11月よりAlpha Professionsとしてその事業を引き継ぐ。国内においては日系、欧米系の企業の財務、税務に関するコンサルティング、タイにおいては日系中堅企業を中心に、現地の会計・税務、日本本社との取引に対するコンサルティング、現地社員人事制度の構築、進出・撤退、ローカルファイルの作成支援等を提供している。