本コラムは、M&Aキャリア25年超の当社のシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。
前回のつづきをお送りいたします。
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■≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―⑬⑤『Why(どうして)?』
買収を検討する企業において、『Why(どうして)?』とはどのようなものでしょうか。
それは買収目的に係る検討事項であり、M&Aの必要性についての検証を指します。
事業戦略上シナジー効果が有効に働くように事業展開を図るためにはM&Aが本当に必要不可欠なものであるのか事前に検証しておかなければなりません。事業戦略とその戦略手段であるM&Aの間に整合性がなければ、シナジー効果は有効に機能しないように思われます。したがって、この『Why(どうして)?』は重要な問題なのです。
当たり前のような話でもあるのですが、予め『Why(どうして)?』が検証できていない状態で、実際にM&A売り案件が持ち込まれてしまうと、買手側における検討の座標軸をもっていないため、シナジー効果の有無や程度を検証することなく、売却対象会社の財務内容だけを頼りにM&Aの是非を経営判断しかねません。
そうした経営判断の過ちを避けるためにも、しっかりと『Why(どうして)?』を突き詰めておかなければなりません。
それでは、『Why(どうして)?』のエッセンスである買収目的とはどのようなことをいうのでしょうか。
買収目的とは、M&Aを実行することにより具体的に何を取得したいかを明確化することです。要素技術特許なのか、ブランドなのか、製造設備なのか、物流機能なのか、営業要員なのか、技術者なのかといった必要とする経営資源を明確化することです。
『Why(どうして)?』を煮詰める流れは次の通りです。
第一に、買収企業が事業戦略を実行する手段がM&A以外にはないのかどうか。自前で事業立ち上げることが果たして非効率なのかどうかを検証することです。
第二に、必要とする経営資源をM&Aを検討することにより実際に調達できるのかどうかを検証することです。
以上のような検討を重ねることにより、M&Aによらなくても低コスト、低リスクで実現できる場合があります。買収リスクや買収後の事業運営リスクを考えれば、M&Aという戦略手段が優位であるとは限りません。
M&Aにより自社グループに取り込むことができたとしても、それがすなわち効率経営を実現することにつながらないこともあります。そのため、M&Aプロジェクトの立ち上げに当たっては、事前に『Why(どうして)?』について明確に必要があります。
企業がM&Aを検討するための循環(検討モデル)は、図9のループにおいて説明することができるものと考えます。
このループは法政大学教授の西岡靖之氏がIoT実践推進のための手法として紹介しているものですが、IoTだけではなく、M&Aの検討モデルとしても応用して活用できる考え方ではないかと考えます。
図9のループは、M&Aのプロジェクトチームによる現状分析を行う「課題発見」からはじまり、あるべき姿を明確化する「課題共有」、やりたいことを明確化する「課題設定」、できることを実施する「課題解決」とプロセスを進めます。そして、再び「課題発見」を行うという循環を繰り返すことにより、事業戦略の実現手段としてM&Aを取り込んでいくという流れでM&Aプロジェクトを推進することがこの検討モデルです。
図9 M&Aの検討モデル(買手側)
出典)2020年4月23日付日本経済新聞西岡靖之「経済教室Analysis」「IoTのためのスマートシンキング」を参照し、筆者が作成この検討モデルでは、買収企業の領域とアドバイザーの領域の二つに分類しています。
『5W1H』の明確化は買収企業の領域における「課題発見」および「課題共有」においてなされますが、この検討モデルの全体に渡って根底にあるものが『Why(どうして)?』です。
『Why(どうして)?』に関しては、最初のプロセスだけに留まりません。常につきまとう問いです。
そういった意味では、M&Aを失敗しないためには各プロセスで一貫してこの検討モデルでは、買収企業の領域とアドバイザーの領域の二つに分類しています。
『5W1H』の明確化は、買収企業の領域における「課題発見」および「課題共有」においてなされますが、この検討モデルの全体に渡って根底にあるものが『Why(どうして)?』です。
『Why(どうして)?』と問い続けるべきことで事業戦略上シナジー効果が有効に働くように考えM&Aを失敗しないようにしなければなりません。
・・・つづきは次回、『≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―⑮』でお送りいたします。
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