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■【事業承継税制(特例)】業績悪化事由による差額免除制度の実践的留意点:税務調査との関係・相続時精算課税との関係等―①
(問 40)差額免除の計算の具体例(その2):2分の1以下の対価で譲渡した場合
(問)Aは、甲から贈与されたX株式会社の株式について「贈与税の納税猶予の特例措置」の適用を受け、特例経営贈与承継期間は経過したが、このたび、X株式会社の業績の悪化に伴い、その有する株式の全てを譲渡した。
この場合に、差額免除及び追加免除により免除される税額等はどのようになるのか。
〔贈与時〕
・相続税評価額:300(猶予税額:150)
〔譲渡時〕
・譲渡対価:60(譲渡対価を基に再計算した猶予税額:30)
・譲渡時におけるX株式会社の株式の相続税評価額:200
(相続税評価額の2分の1(100)を基に再計算した猶予税額:50)
・譲渡以前5年以内にAがX株式会社から受けた配当等はない。
(注)上記の数値は、実際の税額等とは異なる。
1. 譲渡時(差額免除)
・免除される税額:100
・納税猶予される税額:50
2. 譲渡時から2年を経過する日(追加免除)
・免除される税額:20
・猶予期限が確定する税額:30
(1)問の事例では、譲渡対価の額(60)が譲渡時の特例対象受贈非上場株式等の価額(200)の2分の1以下であるため、譲渡時には、その2分の1に相当する金額(100)に基づき猶予税額を再計算することとなる。
(2)したがって、譲渡時には、この2分の1に相当する金額(100)に基づき再計算した税額(50)と従前の猶予税額(150)との差額(100)が免除されることとなる。
また、この際、措置法第70条の7の5 第13項の規定の適用を受ける場合には、再計算された税額(50)については、納税の猶予が継続される。
(注)措置法第70条の7の5 第13項の規定の適用を受けない場合には、再計算された税額(50)については、譲渡をした日から2月を経過する日において、納税猶予の期限が確定することとなる。
(注)一定の要件を満たさない場合、納税の猶予が継続された税額(50)は、その2年を経過する日から2月を経過する日において、納税猶予の期限が確定することとなる。
(問)Aは、甲から贈与されたX株式会社の株式について「贈与税の納税猶予の特例措置」の適用を受け、特例経営贈与承継期間は経過したが、このたび、X株式会社は、その業績の悪化に伴い、Y株式会社と合併した。
この場合に差額免除により免除される税額等はどのようになるのか。
〔贈与時〕
・相続税評価額:300(猶予税額:150)
〔合併時〕
・合併対価:200【現金:50、Y株式会社の株式:150】
(合併対価を基に再計算した猶予税額:100)
・合併時におけるX株式会社の株式の相続税評価額:250
・合併以前5年以内にAがX株式会社から受けた配当等はない。
(注)上記の数値は、実際の税額等とは異なる。
・免除される税額:50
・猶予期限が確定する税額:25
・納税の猶予が継続される税額:75
1. 問の事例では、合併対価の額(200)が合併時の特例対象受贈非上場株式等の価額(250)の2分の1超であるため、合併対価の額(200)に基づき猶予税額を再計算することとなる。
2. そして、この合併対価の額に基づき再計算した税額(100)と従前の猶予税額(150)との差額(50)が免除される。
なお、再計算した猶予税額(100)のうち、現金対応分(100×50/200=25)については、合併が効力を生じた日から2月を経過する日において納税猶予の期限が確定し、残額(75:Y株式会社の株式に対応する部分)は納税の猶予が継続される。
(問)Aは、甲から贈与されたX株式会社の株式について「贈与税の納税猶予の特例措置」の適用を受け、特例経営贈与承継期間は経過したが、このたび、X株式会社は、その業績の悪化に伴い、Y株式会社と合併した。
この場合に、差額免除及び追加免除により免除される税額等はどのようになるのか。
〔贈与時〕
・相続税評価額:300(猶予税額:150)
〔合併時〕
・合併対価:60【現金:20、Y株式会社の株式:40】
(合併対価を基に再計算した猶予税額:30)
・合併時におけるX株式会社の株式の相続税評価額:200
(相続税評価額の2分の1(100)を基に再計算した猶予税額:50)
・合併以前5年以内にAがX株式会社から受けた配当等はない。
(注)上記の数値は、実際の税額等とは異なる。
・免除される税額:100
・納税猶予される税額:50
2. 合併時から2年を経過する日(追加免除)・免除される税額:20
・猶予期限が確定する税額:10
・納税の猶予が継続される税額:20
(1)問の事例では、合併対価の額(60)が合併時の特例対象受贈非上場株式等の価額(200)の2分の1以下であるため、合併時には、その2分の1に相当する金額(100)に基づき猶予税額を再計算することとなる。
(2)したがって、合併時には、この2分の1に相当する金額(100)に基づき再計算した税額(50)と従前の猶予税額(150)との差額(100)が免除されることとなる。また、この際、措置法第70条の7の5 第13項の規定の適用を受ける場合には、再計算された税額(50)については、納税の猶予が継続される。
(注)措置法第70条の7の5 第13項の規定の適用を受けない場合には、再計算された税額(50)のうち、現金対応部分(50×20/60=16※)については、合併が効力を生じた日から2月を経過する日において納税猶予の期限が確定し、残額(14:Y株式会社の株式に対応する部分)は納税の猶予が継続される。
※100 円未満の端数は切り捨てる。
(注)一定の要件を満たさない場合、納税の猶予が継続された税額(50)のうち、現金対応部分(50-30×40/60=30※)については、その2年を経過する日から2月を経過する日において納税猶予の期限が確定し、残額(20:Y株式会社の株式に対応する部分)は納税の猶予が継続される。
※100 円未満の端数は切り捨てる。
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。