Q. 業績悪化事由による差額免除制度の実践的留意点:税務調査との関係・相続時精算課税との関係等
資産課税課情報 | 第20号 | 平成30年12月19日 | 国税庁 資産課税課 |
非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例措置等に関する質疑応答事例について(情報)
(問)特例措置では、事業の継続が困難な事由が生じた場合に一定の猶予税額が免除される措置が設けられているが、具体的にはどのような制度か。
1 特例措置では、特例経営贈与承継期間等の経過後に特例認定贈与承継会社等の事業の継続が困難な一定の事由が生じた場合に、①特例対象受贈非上場株式等を譲渡等したとき、又は特例認定贈与承継会社等が②合併により消滅したとき、③株式交換若しくは株式移転(以下「株式交換等」という。)により他の会社の株式交換完全子会社等となったとき若しくは④解散をしたときは、一定の要件のもと、納税の猶予に係る期限が確定する猶予税額のうち一定の金額を税務署長の通知により免除する措置が次のとおり講じられている(措置法70の7の5⑫~⑲等)(以下、(1)又は(2)による免除を「差額免除」といい、(3)による免除を「追加免除」という。)。
(注) 「事業の継続が困難な一定の事由」については、問 45参照。
(1) 時価に相当する金額の2分の1までの部分に対応する猶予税額の免除
特例対象受贈非上場株式等の譲渡の対価の額、合併対価の額若しくは交換等対価の額(これらの対価の額が当該特例対象受贈非上場株式等の時価に相当する金額の2分の1以下である場合には、当該2分の1に相当する金額)又は解散の時における特例対象受贈非上場株式等の時価に相当する金額を贈与等により取得をした特例対象受贈非上場株式等の当該贈与等の時における価額とみなして計算した猶予税額とこれらの事由が生じた日以前5年以内において特例経営承継受贈者等及びこれと特別の関係のある者が受けた配当等の額との合計額(以下「直前配当等の額」という。)との合計額を納付することとし、従前の猶予税額から当該合計額を控除した残額を免除する(措置法70の7の5⑫等)。
(2) 実際の譲渡等の対価の額が時価に相当する金額の2分の1を下回った場合の納税猶予及び免除
特例対象受贈非上場株式等の譲渡等をした場合等(特例認定贈与承継会社が解散をした場合を除き、その対価の額が時価に相当する金額の2分の1に相当する金額を下回る場合に限る。)において、下記(3)の適用を受けようとするときは、担保の提供を条件に、上記(1)の再計算した猶予税額と直前配当等の額との合計額を猶予中贈与税額とすることができる(従前の猶予税額から当該合計額を控除した残額は免除される。)(措置法70の7の5⑬等)。
(3) (2)の場合の猶予税額の免除
上記(2)の場合において、上記(2)の特例対象受贈非上場株式等の譲渡等をした後2年を経過する日において、特例認定贈与承継会社等の事業が継続している場合(注)として一定の要件に該当するときには、特例対象受贈非上場株式等の譲渡等の対価の額(時価に相当する金額の2分の1以下であった実額)を特例対象受贈非上場株式等の贈与等の時における価額とみなして再計算した金額と直前配当等の額との合計額を納付することとし、上記(2)による猶予中贈与税額から当該合計額を控除した残額については、免除する(措置法70の7の5⑭等)。
ただし、この一定の要件に該当しない場合には、上記(2)による猶予中贈与税額を納付することとなる。
(1)商品の販売その他の一定の業務を行っていること。
(2)譲渡等の事由に該当することとなった時の直前における特例認定贈与承継会社の常時使用従業員のうちその総数の2分の1以上に相当する数(その数に1人未満の端数があるときはこれを切り捨てた数とし、当該該当することとなった時における常時使用従業員の数が1人のときは1人とする。)の者が、当該該当することとなった時から当該2年を経過する日まで引き続きその会社の常時使用従業員であること(問 51参照)。
(3)(2)の常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。
2 上記1の免除の適用を受けようとする者は、差額免除(上記1(1)又は(2))については上記1①~④に該当することとなった日から2月を経過する日(注)までに、また、追加免除(上記1(3))については上記1(3)の2年を経過する日から2月を経過する日(注)までに、それぞれ免除の申請を行う必要がある(措置法70の7の5⑫⑬⑯等)。
(注) 当該2月を経過する日までに当該特例経営承継受贈者等が死亡した場合には、当該特例経営承継受贈者等の相続人(包括受遺者を含む。)が当該特例経営承継受贈者等の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日。以下問 43までにおいて同じ。
3 なお、納付が必要となる猶予税額の納期限は、上記1(1)の場合は同(1)に該当することとなった日から2月を経過する日と、また、上記1(3)の場合は同(3)の2年を経過する日から2月を経過する日とされている(措置法70の7の5⑫⑭等)。
(問)Aは、甲から贈与されたX株式会社の株式について「贈与税の納税猶予の特例措置」の適用を受け、特例経営贈与承継期間は経過したが、このたび、X株式会社の業績の悪化に伴い、その有する株式の全てを譲渡した。
この場合に差額免除により免除される税額等はどのようになるのか。
〔贈与時〕
・相続税評価額:300(猶予税額:150)
〔譲渡時〕
・譲渡対価:200(譲渡対価を基に再計算した猶予税額:100)
・譲渡時におけるX株式会社の株式の相続税評価額:250
・譲渡以前5年以内にAがX株式会社から受けた配当等はない。
(注)上記の数値は、実際の税額等とは異なる。
1 問の事例では、譲渡対価の額(200)が譲渡時の特例対象受贈非上場株式等の価額(250)の2分の1超であるため、譲渡対価の額(200)に基づき猶予税額を再計算することとなる。
2 そして、この譲渡対価の額に基づき再計算した税額(100)と従前の猶予税額 150 との差額(50)が免除される。
なお、再計算した猶予税額(100)は、譲渡をした日から2月を経過する日において、納税猶予の期限が確定することとなる。
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。