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COLUMN

2021.04.07富裕層コンサルのイロハ

【事業承継税制(特例)】遺留分侵害額請求との関係―②

  • 事業承継税制(特例)

前回のつづきです。
↓前回分はこちら↓
■【事業承継税制(特例)】遺留分侵害額請求との関係―①


受贈者が価額弁償の抗弁をした場合も、遺留分権利者において減殺請求額相当と考えられる株式数は、納税猶予制度においては同様の処理をします。
この株式数は特例対象株式以外となります。
旧法における遺留分減殺請求においても、弁償資金捻出のために特例対象株式以外の株式を譲渡するときは、所得税においては譲渡所得となっていました。
令和元年7月1日からの贈与者の死亡より、遺留分侵害額請求となり、遺留分の権利は従前と異なり、金銭債権となっています。

したがって、特例贈与者の死亡が、

・7月1日以後でかつ、

・贈与税の納税猶予において、特例経営承継期間の最後の年度等以後である場合は、

金銭債務の支払いのために、特例対象株式を譲渡した場合は、納税猶予は一部期限確定となります。

一方で、特例贈与者の死亡が、

・特例経営承継期間の中途で、

・金銭債務の支払いのために、特例対象株式の譲渡が、特例経営相続承継期間内になると考えられる場合は、

譲渡した場合、 現行制度では全部期限確定になるので、留意が必要となります。

このような特例経営承継期間内の贈与者の死亡とそれに対する遺留分侵害額請求があった場合の対応案として下記が考えられます。

・贈与から相続に切り替わる株式が100株

・ 遺留分侵害額請求に対して他の相続人への遺留分支払原資捻出のための自社株譲渡に必要な譲渡株数が10株

を前提とした場合、相続税の納税猶予の選択は90株とします。

つまり、切替確認後の相続税の納税猶予の特例対象株式は90株となり、10株は特例株式以外となります。この10株に関しては、期限確定の問題はなく、相続税課税と譲渡所得課税の課税関係になります。
負担した遺留分侵害額は、当初相続税申告に織り込むか、更正の請求をすることとなります。
この計算は代償分割とほぼ同じとなります。

(参考)
代償分割の場合の課税関係
(タックスアンサーNo.4173) 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
[平成30年4月1日現在法令等]

代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法です。


1 この場合の相続税の課税価格の計算は、次のとおりとなります。

(1)代償財産を交付した人の課税価格は、相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から交付した代償財産の価額を控除した金額

(2)代償財産の交付を受けた人の課税価格は、相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた代償財産の価額の合計額


2 この場合の代償財産の価額は、代償分割の対象となった財産を現物で取得した人が他の共同相続人などに対して負担した債務の額の相続開始の時における金額になります。
ただし、代償財産の価額については、次の場合には、それぞれ次の通りとなります。

(1)代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、代償債務の額がその財産の代償分割の時における通常の取引価額を基として決定されている場合には、その代償債務の額に、代償分割の対象となった財産の相続開始の時における相続税評価額が代償分割の対象となった財産の代償分割の時において通常取引されると認められる価額に占める割合を掛けて求めた価額となります。

(2)共同相続人及び包括受遺者の全員の協議に基づいて、(1)で説明した方法に準じた方法又は他の合理的と認められる方法により代償財産の額を計算して申告する場合には、その申告した額によることが認められます。


3 上記1及び2に関する事例
相続人甲が、相続により土地(相続税評価額4,000万円、代償分割時の時価5,000万円)を取得する代わりに、相続人乙に対し現金2,000万円を支払った場合。

(1)甲の課税価格
4,000万円-2,000万円=2,000万円

(2)乙の課税価格
2,000万円


ただし、代償財産(現金2,000万円)の額が、相続財産である土地の代償分割時の時価5,000万円を基に決定された場合には、甲及び乙の課税価格はそれぞれ以下のように計算します。

(1)甲の課税価格
4,000万円-{2,000万円×(4,000万円÷5,000万円)}=2,400万円

(2)乙の課税価格
2,000万円×(4,000万円÷5,000万円)=1,600万円


4 なお、代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合には、遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転となりますので、その履行した人については、その履行の時における時価によりその資産を譲渡したことになり、所得税が課税されます。
一方、代償財産として不動産を取得した人については、その履行があった時の時価により、その資産を取得したことになります。
(相基通11の2-9、11の2-10、所基通33-1 の5、38-7 )



(参考)
(下記出典:週間税務通信/税務研究会 令和元年7月29日 No.3566)

遺留分侵害額請求

○請求を受けた側(通常、後継者)……更正の請求

○請求した側(通常、後継者以外の他の相続人)……期限後申告等
特例対象株式を請求者に移転(返還)した場合

○請求を受けた側(通常、後継者)…… 納税猶予打切り⇒相続税納付
譲渡所得税

○請求した側(通常、後継者以外の他の相続人)……期限後申告等


なお、本稿脱稿時点において、令和2 年度税制改正に関して、経済産業省より「民法改正(遺留分)を踏まえた確定事由の適正化、その他の所要の見直しを行う。」という改正要望が出ています。上記に対応した打消事由の弾力化について改正が入ると思われます。一刻も早い改正を期待しています。



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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。