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COLUMN

2021.04.06M&A全般

≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―⑤

  • M&A

本コラムは、M&Aキャリア25年超の当社のシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



前回のつづきをお送りいたします。

↓前回分はこちら↓
 ■≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―④


③『Who(誰が)?』もしくは『Whose(誰の)?』

『Who(誰が)?』もしくは『Whose(誰の)?』とは、誰が売主になるのかという問題です。
誰が売主になるのかは譲渡方法(譲渡スキーム)によって変わります。

株式譲渡の場合で創業社長が一人株主となっている場合には、その創業社長が売主となります。
それでは、株主が一人株主になっていない場合にはどのようになるのでしょうか。
同族会社にはなっているが株主が複数人(自然人)にいる場合、株主が多数の社員など内部株主によって構成されている場合、数多くの自然人や法人など外部株主が存在する場合など、会社の設立経緯やその後の資本政策などによって、株主構成は様々です。
株主と経営が分離しているような企業もあるでしょう。その場合の経営者は「雇われ社長」ということになりますので、仮に株式譲渡を検討する場合でも、いくらその社長が売却を検討したいと考えたとしても売却の当事者(売主)とはなり得ません。

当然、代表者が一人株主の場合と株主と経営が分離しているような場合とでは、M&Aの動機も異なってくるでしょう。
後者の場合、M&Aアドバイザーが相談者である経営者に対して数回インタビューを実施し、話を突き詰めてみると、経営者が検討したいと考えていることが株式譲渡ではなく、事業譲渡や会社分割による企業譲渡という結果になることもあります。

株式譲渡とは、例えば100%株式譲渡やマジョリティーの譲渡を前提として考えた場合、それは経営支配権の移転を指します。事業譲渡の場合、全部譲渡や一部譲渡の大きくは2つに分類されますが、いずれの場合でも株主は変わりません。このコラムでは会社分割の話は複雑になりますので説明を省略致しますが、根本的な考え方は事業譲渡の場合と同様です。

一人株主の場合の経営者による株式譲渡は、株主と経営が同一人物であるため、利益相反(conflict;コンフリクト)は発生しません。一方、一人株主の場合でも経営と株主が完全に分離しているような場合には、コンフリクトが発生します。それでも株主と経営者のコンフリクトが発生しておらず、完全に利害が一致している場合もあるかもしれませんが、それはたとえ同族会社の場合でも利害を一致させることは容易ではない場合もあります。非同族会社で外部株主であれば、利害が一致しないと考えることが現実的な話だろうと思われます。

それでは、中小企業M&Aを前提として、株主と経営が分離している場合で代表執行役である経営者がM&Aを考えるような場合とは、いったいどのような状態なのでしょうか?
例えば、経営にタッチしていない創業家が売却対象会社に本業とは関連性のない賃貸マンションや賃貸ビル、オーナー家の自宅など不動産を保有させているような場合が想定されます。このようなケースでは、株式譲渡では、全く相談者(依頼人;クライアント)である経営者のニーズには答えられないばかりか、創業家である株主との間で対立を生むことになりかねません。このような場合にこそM&Aアドバイザーが重要な役割を担うことになります。その後のプロセスは後述の⑥の『How?』の段階での話となりますので、⑥にて説明しますが、『How?』はM&Aスキームの問題であり、主にM&Aアドバイザーがスキームの最適化を図るため知恵を搾ります。

このように、『Who?』がM&Aを検討し、『Who?』が売主となるのか、すなわちいったい『Whose(誰の)?』ものを譲渡しようとしているのか、明確に分けて考えることが重要な論点となります。この点を曖昧としたまま通過してM&Aのプロセスを進めてしまいますと、依頼者とM&Aアドバイザーとの間に理解に齟齬(そご)が生じかねませんし、M&Aアドバイザーに最も望ましい形でクロージングを目指す動きも蛇行することになりかねませんので、依頼者はこの点に十分留意しておく必要があります。


 ・・・つづきは次回、『≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―⑥』でお送りいたします。





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