本コラムは、M&Aキャリア25年超の当社のシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。
前回のつづきをお送りいたします。
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■≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―③②『Where(どこで)?』
『Where?』というのは、オーナー経営者にとって「売却のための事業戦略」です。
それはすなわち、最終的には買手候補先を「どこにするのか」という買手候補先のイメージ構築につながっていきますので、買手候補先選定に関するものだと言い換えてもよいでしょう。
オーナー経営者にとっての「売却のための事業戦略」は必要ないように思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
M&Aの『5W1H』を考える際に、最も重要な事項であるといっても過言ではありません。
検討初期段階においてM&Aで売却を考える際、その案件の明暗を分けるのは、買手候補先を発掘できるかどうかにかかっております。買手候補先を発掘できなければ、売却価額などの譲渡希望条件をどんなに精緻に詰めておいても、砂上の楼閣となってしまいます。あくまで買手候補先という相手先あっての譲渡希望条件なのです。
それでは、その買手候補先探しをするためにはどうしたらよいのでしょうか。
もちろん、顧問税理士先生はじめM&Aアドバイザーにじっくりと相談しながら決めていくことになりますが、売却を検討しているオーナー経営者が「売却のための事業戦略」自体をよく検討していなければ、M&Aアドバイザーがリストアップした複数の買手候補先のなかから、曖昧のまま、自身の「好き嫌い」に近いやや感情的な面のみでチョイスすることになってしまいます。
もちろん、「好き嫌い」というのは、その経営者の直観力に基づく判断でもあるのかもしれません。最近の経営戦略論において、ロジカルシンキングよりも、経営者の直観力が大事とする主張もみられます。それはそれでありかとは思われますが、直観力だけに頼るというのも、それが第六感に近いような場合や思い込みや偏見に近いものであれば、買手候補先探しも覚束ないものとなってしまいます。
直観力も大事にしつつ、しっかりと売却対象会社の売却後の事業戦略を客観的に見据えておくことができれば、買手候補先とのマッチングのヒット率も高まる可能性があると思います。もちろん、そのヒット率は、「売却のための事業戦略」のみによる訳ではありません。その売却対象会社が属する業界動向、事業内容や財務内容なども需要な要素となるでしょうし、地の利の有無や時の運もありますので、何がどう作用するとは一概にはいえるようなものでもありません。
「売却のための事業戦略」を考えるということは、買手候補先企業の視座で考えるということです。
買手候補先企業では、M&A売り案件が持ち込まれると、その売却対象会社を取り込むことにより、自社にとって相乗効果(シナジー効果)がありそうかどうかを検証することになります。もし、その買手候補先企業において相乗効果が高そうだと見積もることができるようであれば、投資予算枠や資金調達力の範囲内で前向きに検討することが現実のものとなり得ます。つまり、売主が買手候補先企業の立場でも考えることができれば、マッチングの可能性を高めることにもつながります。
また、M&Aアドバイザーが初期的に買手候補先企業に対して打診したときのことをイメージしてみてください。
M&Aアドバイザーは、接触した買手候補先企業から必ず聴かれることがあります。その質問とは、「なぜ、当社を買手候補先としたのですか?」というものです。その場合、この「売却のための事業戦略」を検討しておくことが重要な役割を果たすことになりますので、実際に買手候補先に打診を行うM&Aアドバイザーと事前によく打ち合わせをしておくことが肝要です。
では、具体的にはどうしたらよいのでしょうか?
それは、M&Aアドバイザーから買手候補先についての意見などを聴きつつ、ディスカッションすることが早道であるように思われます。
多くの場合、M&Aアドバイザーは業界情報に精通しています。また、事前に買手候補先に関する情報収集し、企業研究していますので、そうしたM&Aアドバイザーからの助言により、「売却のための事業戦略」も明確化でき、買手候補先企業イメージをロジカルに絞ることが期待できます。
「売却のための事業戦略」についてどのような立案をしていけばよいのかについては、このコラムでは取り上げませんので、ここでは、よくアドバイザーに相談することをお勧めすることだけに留めることとします。
・・・つづきは次回、『≪M&A道2丁目≫中小企業M&Aにおける5W1Hとは?―⑤』でお送りいたします。
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