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COLUMN

2020.02.26M&A事例

【2例目】小さくても売れる会社の共通点とは?―①

  • M&A

本コラムでは、当社の経験豊富なシニアマネージャーが過去に携わったM&A案件を事例としてご紹介いたします。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



今回は、小さくても売れる会社の共通点として、2例目をご紹介します。

↓1例目のコラムはこちら↓
 ■小さくても売れる会社の共通点とは?
 ■小さくても売れる会社の共通点とは?―②

小さくても売れる会社の共通点は、何らかの「強み」と「優位性」を粘り強く見出し、買手への説得性、納得性を高めることだと特別号のケースでもお伝えしました。
今回のケースは、都内で結婚式場を運営するS社が、ウェディング事業を異業種の女性向け下着販売会社のR社に事業譲渡したケースです。

売手のオーナー社長は40代後半、経営者としては油の乗った年齢でもあります。そんなオーナー社長が、なぜ、売却に踏み切ったのか。
人生にはいくつかのターニングポイントがあります。思いもよらない出来事で、それまでの人生設計を転換したいと考えることがあります。
今回のケースは、創業時よりオーナー社長のパートナーとして、また、ウェディングプランナーとしてブライダル部門の現場を牽引してきた奥様が妊娠され、業務から外れたことがきっかけでした。
もうすぐ50代を迎え、これまでのように休日もなく、宴会の運営で夜遅くまで仕事をする生活スタイルより、結婚からなかなか恵まれず、やっと授かった子供との時間を最優先にしたいと一念発起されたそうです。

対象事業であるウェディング事業の施設は、交通の至便性がよい好立地で、地下鉄の改札から雨に濡れずに行き来できる施設でした。
建物はオフィス併設ながら、外観からは独立した建物に見え、結婚式場のメインバンケットは、以前著名な高級飲食店が入居していた空間で、地階から2階まで吹き抜けの空間となっており、入口からのアプローチとなる階段は都内の結婚式場でも最長で、その階段を使った結婚式の演出は施設の最大の魅力として好評でした。
施設は、このメインバンケットに加え、著名なお相撲さんが運営していたレストランを改装し、レストランウェディングにも対応可能なバンケットと政治家の勉強会等によく利用される小さめのバンケットが用意され、メインバンケットとの連動で結婚式を上手く演出していました。
そして、何よりもこの結婚式場の最大の特徴は、ご祝儀の範囲内で結婚式が出来る料金と完全後払い制で、著名な口コミウェディングサイトで高評価されていました。

私たちは、S社の顧問税理士からの紹介でオーナー社長と面談し、オーナー社長のご希望を叶えるお手伝いを始めました。複数回の面談でわかったのは、オーナー社長がもっとも気にしていたのは、銀行からの借入金が完済でき、尚且つ、自身の手許に資金が残るような価格で売れるのか、ということでした。

私たちは、オーナー社長の期待に応えられるのか、アドバイザリー契約の締結後、先ずビジネスデューデリジェンスを行い、対象事業についての「強み」と「優位性」を洗い出しました。この作業を踏まえて、私たちが売れる可能性のある譲渡価額レンジを算定し、オーナー社長に提案しました。
具体的には、対象事業の売上は1億3千万円、EBITDA(営業利益+減価償却費)もプラスであったことから、類似比較会社法(EV/EBITDA倍率)を評価方法として、それに私たちの知見を加味して譲渡価額レンジを1.4~1.6億円としました。
事業譲渡の場合、対象事業だけを切り出してその収益力を評価することになるため、類似比較会社法か、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)で評価するのが一般的です。それに、M&Aアドバイザーの業界に関する知見を加えることになります。

後に聞いたところでは、売手のオーナー社長は、以前に知人に相談したところ8,000万円~1億円くらいと値踏みされていたようで、これでは借入金の返済がやっとで、自身の手許には資金が残らないと心配されていたようです。
譲渡価額レンジの差は、対象事業の市場の中でのポジションに対する理解の差で、私たちは、対象会社や対象事業の強みや優位性を踏まえ、売れる可能性の見立てを導き出すべく労力をかけます。


 ・・・つづきは次回、『小さくても売れる会社の共通点とは?―②』でお送りいたします。





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