文中の記載には私見が含まれていることをあらかじめご了承ください。
小さくても売れる会社には共通点があります。
それは、「強み」をもっていることです。
どんなに小さな会社にも、今日まで生き残った理由があるはずですし、その会社にしかない強みが必ずあるはずです。
私たちがM&Aの助言会社として売手会社に関わるとき、徹底的に売手会社と対話の積み重ねる時間を設けます。会社の事業の価値はどこにあるのか、それを見つけるため粘りに粘るのです。
これからご紹介していく会社は、必ずしも経営が上手くいっている会社ではありません。
でも、丁寧に対話していくうちに「強み」が見えてくる、それが見えれば売れる可能性は高まります。
今回は、東京から約2時間の距離にある半島の端に位置する地方都市で事務機器販売を営むM社が、東京で急成長中の同業者に買収されたケースです。
売手のオーナー社長は70代、商工会議所の役員を兼ね、地域では名士の家柄でした。
対象会社M社は、兄弟で経営を担っており、オーナー社長の息子も東京から戻って在籍していました。
M社は、創業80年でピーク時の売上は10億円を超え、創業からの積み重ねで取引先の口座数は地域ナンバーワンのシェアで、地域ではブランドもありました。
M社が存立する地域は、交通事情から大手が直接進出しづらく、市場としては長期間にわたり安泰でした。
しかし、ご多分に漏れず、少子高齢化の波が押し寄せ、人口が減少し、地元の商店街はシャッター街となり、事務機器の需要も落ち込んでいました。
ピーク時に10億円を超えていた売上も直近は2億円となり、本業の儲けである営業損益も赤字に陥って3年が経っていました。
経営の変革が待ったなしの状況となって、私どもに相談がありました。
「今のままでは事業の赤字脱却は間々ならない、家業に携わっている息子も後を継ぎたくない、もし可能なら第三者への譲渡は考えられないだろうか」
売手のオーナー社長は、専務である弟と相談して、息子が継がないという以上、「第三者への譲渡」でこの現状を打破したいと考えたようです。
このまま営業赤字が続いている状態では、早晩、借入金の返済も滞り、会社も債務超過に陥り、個人の財産も吐き出さなくてはならないそんな危機感からでした。
20××年2月、私たちは売手のオーナー社長と東京で面談し、会社の現状と意向を確認することから始めました。
M社の業績は想定していたよりも厳しいものでした。
しかも、役員からの貸付金が膨らみ、お姉さんの土地に銀行の根抵当権が設定され、これ以上に悪化すると数年後には資金繰りが詰まるのは避けがたく見えました。
次回につづきます。
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