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COLUMN

2023.02.16税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】個人事業主に外国子会社合算(CFC)税制が適用された事例:レンタルオフィス事件との比較

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. 個人事業主に外国子会社合算(CFC)税制が適用された事例:レンタルオフィス事件との比較

表題の新聞記事についてご教示ください。


Answer

下記です。

【解説】
医院長1億円申告漏れ 租税回避地にペーパー会社 東京国税局指摘 東京新聞2019年8月24日 夕刊」です。

個人医師が医院以外に医療機器レンタル会社をシンガポールに設立し、給与や株式配当を受領していたようです。当局はシンガポールのレンタル会社をペーパー会社と認定し、当該会社の所得を、個人所得と合算課税しました。
おそらく個人事業主に現実的に合算された事例としては初と考えられます。
上記が適用されそうになった事案は過去にあります。非常に有名なレンタルオフィス事件(東地平成24年10月11日:納税者勝訴、東高平成25年5月29日控訴棄却:納税者勝訴(確定))です。

「個人」居住者に対し、当該居住者が大株主であるシンガポールに本店を有する、精密ネジ等の販売を行う特定外国子会社等の課税対象額に雑所得認定がなされるか争点になった事例です。つまり、個人所得税に係る税務判例です。
CFC 税制は個人である居住者にも適用され(措法40の4)、認定された場合、雑所得に該当します(同条①)。

当該裁判例においては争点が専ら適用除外要件を満たすか、すなわち「特定外国子会社等がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域に、その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場、その他の固定的施設を有しなければならないこと」にレンタルオフィスが該当するかどうかの実体基準が争われました。納税者勝訴のため、結果として当該主張は認められたわけですが、冒頭の新聞記事との比較では「ペーパーカンパニー」と認定していることから、当該基準をクリアしていなかったものと見られます。

この税務判例は大変有名で、その後に、冒頭のような記事を見かけると、当該裁判例の不知によるものか、当該裁判例の判示に示された一定の基準に従ってなぜ、外国子会社を運営できなかったのか、そもそもCFCは個人に適用がないと勘違いしていたのか、当該スキーム策定担当者の思考が全く理解できません。
冒頭のスキームが指摘された、ということは他の多くの個人も似たようなスキームをしているはずです(多くは、高所得の個人開業医、個人での不動産オーナーでしょう)。非常に留意すべきスキームと考えます。また、今後の動向にも注視が必要と考えます。

(参照)

〇平成25年5月29日東京高裁 レンタルオフィス事件における「証拠」の論点
CFC における適用除外要件を満たす資料の保存義務規定について、当初の当局調査時点では資料の提出はありませんでした。しかし、裁判において書証として当該証拠が大量に提出された結果、納税者の主張が認められた事案です。
本件で当局は、適用除外要件を満たすことの主張立証責任は納税者にあるものと主張しましたが、裁判所はこれを明確に否認しています。当局はまた、租税条約上の情報交換の回答を証拠として提出しましたが、証拠価値が薄いものと判断しております。
すなわち、資料保存要件が付されているにもかかわらず、当局調査において当該資料の提出がなかったことについては判示では言及されなかったのです。
証拠の疎明という点で最判平成16年12月16日消費税法第30条第7項に係る判決(当該判決は平成17年3月10日最判(青色申告承認取消事由としての「保存」の意義)と同義)と比較すると興味深いものがあります。




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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。