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COLUMN

2023.02.02税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】国外転出時課税に係るタックスプランニング(税率差額利用)と今後の動向

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. 国外転出時課税に係るタックスプランニング(税率差額利用)と今後の動向

国外転出時課税とその後の国外での非上場株式贈与について、トータル期間15年で考えると、贈与税率最高税率が譲渡所得税率15.315%で済むと考えました。

【個人と法人の現況】
  • 個人A、妻B、子C、法人D(A100% 株式所有、株式税務上評価額と資本金(当初出資額)に乖離あり)

【前提】
  • 国外転出時課税は納税管理人届出なしパターンを選択し、適切な株式評価時点と期日で納税します。今後当該法人は下記のような方針を採用しようとしています。

(STEP 1)
A、B、Cが某オフショア国に移住します。同時に法人Dの本店所在地を当該国外に移転します。
その際、Aは国外転出時課税により、国外転出までに15.315%の所得税のみ納税します。
移転以降も法人Dの代表は変わらずAのままで、法人Dの国内事業運営は在外支店を設け、Aの意思決定のもとに従業員が行い、国内の恒久的施設として適切に法人申告します。

(STEP 2)
国外移住開始から11年後にAはCへ、法人Dの株式を100%贈与します(当該オフショア国の現地税制では日本よりも税率が非常に低いです)。法人Dの代表取締役は変わらずAのままです。

(STEP 3)
国外移住開始から12年後にA、B、Cは国内へ戻ります。
国内居住者に該当します。また、それと同時に法人Dの本店所在地を国内に移転します。法人Dの代表取締役は変わらずAのままです。

【質問】
上記における課税関係を教えてください。


Answer

下記です。

【解説】
質問の回答の前に上記一連の最近の動向をまとめます。

https://www.nishimura.com/sites/default/files/newsletter_pdf/ja/newsletter_201504_btl.pdf
上記リンク先6 頁の解説が非常に面白いです。
下記において上記リンク先を一部抜粋しています。「もっとも、平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以降、我が国における相続税や贈与税の負担は更に重くなっているため(最高税率はいずれも55%)、国外転出時課税制度により(譲渡損失が生じるに過ぎない場合は勿論のこと)譲渡所得課税が課せられたとしても、なお、相続税や贈与税の負担軽減等のため、相続税や贈与税の課税制度がない国やキャピタルゲイン非課税国に移住するというケースは今後も生じるものと思われます。」
出国時課税を使って節税しようとする動きは一定数あります。
上記は転出時課税が制度化されてから、ずっと問題点として指摘されてきた事項です。転出時課税が施行されてから同じようなスキームについて筆者も何度も相談を受けてきました。しかし、筆者自身はやりません。理由は税制改正リスクです。

https://www.sn-hoki.co.jp/article/tamasters/ta8611/
上記リンク先記事にもありますが、現在のBEPS の潮流として、上記のようなスキームは改正項目に入ってくると思います。オフショアに対するBEPS監視規制は厳しいです。また、BEPS への目配せがなくても(実務では到底あり得ませんが)、国外転出時課税は現行法は穴だらけといわれております。それも改正がまた入るのではないかと、私が懸念している理由の論拠となります。
では、質問の回答です。

(STEP 1)について
この時点で国外転出時課税の対象となります。納税管理人の届出を出してない場合、上記も、下記以降の取扱いもご指摘の通りです。当然ですが、非上場株式の国外転出時課税における評価額は所得税基本通達59-6 です。法人D 株式は国外財産になったと判定します。

(STEP 2)について
平成30年度税制改正により、当該ケースでは、国内財産のみが贈与税の課税対象となります。国外財産法人D 株式は射程外です。すなわち、現地課税しかなされません。

(STEP 3)について
課税関係は生じません。現行制度上は、国外転出時の課税で含み益清算が済んだと考えます。


※コラムに関するご質問は受付しておりません。予めご了承ください。



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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。