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COLUMN

2023.01.19税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】比準要素数0、1会社解消方法と違法配当の関係

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. 比準要素数0、1会社解消方法と違法配当の関係

表題の件につきご教示ください。


Answer

下記です。

【解説】
分配可能額規制に違反した金銭配当・自己株式取得の場合については、下記の点につき留意が必要です。
自己株式取得は資本等取引、会社財産の払戻しの性格を有することから、分配可能額による制限を受けます。しかし、分配可能額が不足しているにもかかわらず行った違法配当でも、会社法上有効とされています(注1)。そのため、税務上も配当として取り扱われます。中小企業では、債権者が違法状態を訴えるケースはほぼ想定できないので、分配可能額がたとえゼロだったとしても、違法配当として問題視されることはまずないと思われます。
つまり、自己株式の取得はそのまま有効になるということです。この取扱いは金銭配当も同様です。

東光商事事件(最高裁大法廷昭和36年オ第944号所得審査決定取消請求上告事件(棄却)(確定)【株主優待金の性格/株主相互金融会社】)の判決は下記の通りです。

【株主優待金の性格/株主相互金融会社】最高裁大法廷昭和36年オ第944号所得審査決定取消請求上告事件(棄却)(確定)

(判示一部抜粋)
具体的にいかなるものを益金と認め、いかなるものを損金とするかは、単に益金または損金の性質を理論的に解明するだけでなく、さらに租税法の解釈上の諸原則や各個別的規定に現われた法の政策的、技術的配慮をもあわせ参酌しなければ決定できないものというべきである。
仮に、経済的、実質的には事業経費であるとしても、それを法人税法上損金に算入することが許されるかどうかは別個の問題であり、そのような事業経費の支出自体が法律上禁止されているような場合には、少なくとも法人税法上の取扱いのうえでは、損金に算入することは許されないものといわなければならない。
株主の募集に際し、株式会社が株式引受人または株式買受人に対し、会社の決算期における利益の有無に関係なく、これらの者が支払った払込金または、代金に対し、予め定められた利率により算出した金員を定期に支払うべきことを約するような資金調達の方法は、商法が堅持する資本維持の原則に照らして許されないと解すべきであり、従って、会社が株主に対し前示約定に基づく金員を支払っても、その支出は、法人税法上は少なくとも、資本調達のための必要経費として会社の損金に算入することは許されないところといわなければならない。
株主相互金融会社が株式買受人に対して支払う株主優待金は、実質的には、株主が払い込んだ株金に対して支払われるものにほかならず、会社から株主たる地位にある者に対し株主たる地位に基づいてなされる金銭的給付は、たとえ、会社に利益がなく、かつ、株主総会の決議を経ていない違法があるとしても、法人税法上、その性質は配当以外のものではあり得ず、これを上告会社の損金に算入することは許されない。
株主相互金融会社の株主優待金は、会社が約定に基づき会社の決算期における利益の有無に関係なく、約定利率により算出した金員を定期に支払うものであって、配当とはその性質を異にすること上告会社の主張のとおりとしても、このような金員の支払は、法律上許されないのであるから、少なくともその支出額を必要経費として法人税法上会社の損金に算入することは許されないといわなければならない。


比準要素数0、1の会社が期末配当を行い、比準要素数0、1の会社から脱する方法があります。比準要素数0、1の会社というのは、往々にして債務超過状態にある会社であることが多いものです。このため、一見、配当ができないように思われますが、債権者がいないということを確認した上で会社法上の違法配当をすると、税務上も配当したことになるとみなされます。

比準要素数0、1の会社がその状態から脱するための別の方法として、決算期変更があります。
例えば、毎期1,000万円程度の利益が出るような会社があったとして、節税対策を過度に行い、前々期末と前期末の利益が0円となっていたとします。利益も出ていない、配当もしていない、とすると、比準要素数0、1の会社になります。この状況下において、株式を移動したい場合、決算期を変更します。決算期を変更してその期で利益を出します。

仮に債権者がなく訴える状況になくても、取締役の任務懈怠責任等の会社法上の責任は生じます。これにつき、役員に対する金銭請求権という益金が法人計上される可能性もあります。
しかし、従来の課税実務の取扱いは「そもそも違法配当自体が無効であるため(原始的無効)、それに係る益金は計上されない」とされてきました。
つまり、そもそも違法配当が会社法上、有効か無効かで益金を計上すべきか、しないかの取扱いが全く異なるわけです。

課税実務ではこの状況下においては、保守的に最悪なケースを考えるべきだと思われます。違法配当は会社法上、有効であり、それ自体に、先ほどの金銭債権請求権という益金が計上されたと仮定すると、当該金銭請求権については、中小・零細企業では回収されることはまずないため、その金銭債権相当額が役員給与認定される恐れがあるということです(定期同額給与、事前確定届出給与でないので当然損金不算入)。さらに源泉所得税も生じます。


注 釈

(注1) http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_b8c2.html




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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。