執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。
Q. 適格現物分配における重要な質疑応答事例
1 現物分配とは、法人(公益法人等及び人格のない社団等を除きます。)がその株主等に対し当該法人の剰余金の配当などの一定の事由により金銭以外の資産を交付することをいいます(法法2 十二の五の二)。
また、適格現物分配とは、内国法人を現物分配法人(現物分配によりその有する資産の移転を行った法人をいいます。)とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります。)のみであるものをいいます(法法2 十二の十五)。
内国法人が適格現物分配により資産の移転をしたときは、その適格現物分配の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして所得の金額を計算することとされており(法法62の5 ③)、その資産の移転により譲渡損益は発生しないこととなります。
2 法人が、資本の払戻し等により、その株主等に対して金銭及び金銭以外の資産の交付をした場合には、次の(1)及び(2)の算式によりそれぞれ計算された金額を資本金等の額及び利益積立金額から減算することとなります。
なお、ここにいう資本の払戻し等とは、剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限ります。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに解散による残余財産の一部の分配をいいます(法法24①四、法令8 ①十八)。
(1) 資本金等の額から減算する金額(法令8 ①十八)
(算式)
資本金等の額から減算する金額(減資資本金額)=A×B/C(※)
:A 資本の払戻し等の直前の資本金等の額
:B 資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価
:C 資本の払戻し等の前事業年度終了の時の純資産の額額)の合計額
:※1 A≦0のときはB/C=0、A>0かつC≦0のときはB/C=1として計算します。
2 少数点以下第3位未満の端数がある場合にはこれを切り上げます。
3 上記算式により計算した金額が、資本の払戻し等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額(この合計額を(2)においてDといいます。)を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額となります。
(2) 利益積立金額から減算する金額(法令9 ①十二)
(算式)
利益積立金額から減算する金額=D-減資資本金額(※)
※D>減資資本金額の場合に限ります。
3 甲社と乙社との間には、本件現物分配の直前に当事者間の完全支配関係(一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係)があることから、本事例の現物分配は適格現物分配に該当します。このため、現物分配により移転をした資産(X 社株式)の移転により譲渡損益は生じません。また、本事例の現物分配は、資本の払戻しとして行われるものであることから、次のとおり、資本金等の額及び利益積立金額を減少させることとなります。
(1) 資本金等の額から減算する金額
本事例において、資本の払戻し直前の資本金等の額(A)は600であり、資本の払戻しの前事業年度終了の時の純資産の額(C)は1,200となります。
次に(B)の金額については、「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額」とされており、本件における資本の払戻しは、適格現物分配によるものではありますが、解散による残余財産の分配により交付されたものではないため、(B)の金額は、「適格現物分配に係る資産の交付直前の帳簿価額」130ではなく、「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額」120となります。
したがって、減少する資本金等の額(減資資本金額)は、60(=600×120/1200)となります。
(2) 利益積立金額から減算する金額
本事例において、適格現物分配に係る資産の交付直前の帳簿価額が130であることから、(D)の金額は130となり、減少する利益積立金額は70(=130-60)となります。
【事業承継スキーム】適格現物分配に見られる組織再編成における事業単位の考え方 | 【事業承継税制(特例)】持株会社スキームの基本と比較検討―① |
事業承継支援サービス | 日税M&A総合サービス | メールマガジンのご登録 |
免責事項について
当社は、当サイト上の文書およびその内容に関し、細心の注意を払ってはおりますが、いかなる保証をするものではありません。万一当サイト上の文書の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いかねます。
当サイト上の文書および内容は、予告なく変更・削除する場合がございます。また、当サイトの運営を中断または中止する場合がございます。予めご了承ください。
利用者の閲覧環境(OS、ブラウザ等)により、当サイトの表示レイアウト等が影響を受けることがあります。
当サイトは、当サイトの外部のリンク先ウェブサイトの内容及び安全性を保証するものではありません。万が一、リンク先のウェブサイトの訪問によりトラブルが発生した場合でも、当サイトではその責任を負いません。
当サイトのご利用により利用者が損害を受けた場合、当社に帰責事由がない限り当社はいかなる責任も負いません。
税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。