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COLUMN

2022.09.01税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】消費税、特定新規設立法人外しスキームの実務上の留意点

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. 消費税、特定新規設立法人外しスキームの実務上の留意点

関連会社で新設法人を設立した場合の特定新規設立法人外しスキームについて実務上の留意点を教えてください。


Answer

下記が実務上の留意点となります。

【解説】
特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に設立した新規設立法人(その事業年度の基準期間がない法人で、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円未満の法人)のうち、次の①、②のいずれにも該当する法人です。

  1. その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により当該新規設立法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により当該新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること。
  2. 上記①の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者及び当該他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)の当該新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること。
上記法人に該当した場合には免税事業者に該当しません(消法12の3 )。

《特定新規設立法人 要件判定一覧》
  • 他の者……当該新規設立法人における「直接の」株主である個人と法人をもれなくリストアップしているか。
  • 他の者が個人……当該個人の親族、内縁関係者などの特殊関係者も含めているか(消令25の2 ①二、②)
  • 他の者の別生計親族等が完全支配関係にある法人(100%非支配特殊関係法人)……非該当(消令25の3 、25の4 ①)。
  • 出資関係図における頂点法人が他の者又は特殊関係法人を介して新設法人を100%所有しているか……該当(根拠条文上記同)

特定新規設立法人外しを簡単に実行するなら他の者又は特殊関係法人に純然たる第三者を入れる(株主にする)ということも考えられますが、後々の少数株主買取請求(価格決定申立手続き)や分散リスクを考えると得策ではありません。そこで、下記のような方法も考えられます。
消費税法施行令第25条の4 第2項第2号は下記の通りです。

【消費税法施行令第25条の4 第2項第2号】

2 前項に規定する基準期間相当期間とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める期間をいう。

二 当該判定対象者が法人である場合
次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める期間


イ 新規設立法人の新設開始日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した当該判定対象者の各事業年度がある場合 当該各事業年度を合わせた期間


ロ 新規設立法人の新設開始日の1年前の日の前日から当該新設開始日の前日までの間に終了した当該判定対象者の各事業年度(その終了する日の翌日から当該新設開始日の前日までの期間が2月未満であるものを除く。)がある場合(イに掲げる場合に該当し、かつ、当該イに定める期間に係る前項に規定する基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合を除く。)(下線筆者) 当該各事業年度を合わせた期間


ハ 新規設立法人の新設開始日の1年前の日の前日から当該新設開始日の前日までの間に当該判定対象者の事業年度(当該判定対象者がイ又はロに掲げる場合に該当するときは、当該イ又はロに定める期間に含まれる各事業年度を除く。)開始の日以後6月の期間(当該6月の期間の末日の翌日から当該新設開始日の前日までの期間が2 月未満であるものを除く。)の末日が到来する場合(イ又はロに掲げる場合に該当し、かつ、当該イ又はロに定める期間に係る前項に規定する基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合を除く。)(下線筆者) 当該6月の期間



すなわち、基準期間相当期間は設立以後3年間が存在し、
  • 1期目……上記イ この期間が課税売上高5 億円以下なら2 期目で判定
  • 2期目……上記ロ この期間が課税売上高5 億円以下なら3 期目で判定
  • 3期目……上記ハ この期間が課税売上高5 億円以下なら免税
となります。上記のいずれの期間、1度でも5億円超になった場合、免税事業者になりません。

ただし、
  • 上記ロ一部抜粋……その終了する日の翌日から当該新設開始日の前日までの期間が2月未満であるものを除く。(カッコ書の箇所)
  • 上記ハ一部抜粋……当該6月の期間の末日の翌日から当該新設開始日の前日までの期間が2月未満であるものを除く。(カッコ書の箇所)
とあります。

このカッコ書の趣旨は、特定新規設立法人の設立日前に、上記イ~ハの期間の課税売上高が5億円超か以下か判断するわけですが、(本稿脱稿時点)消費税の申告期限は課税期間終了後、2 か月以内のため「これから特定新規設立法人を設立する特殊関係法人(要するに親法人になる法人)の消費税の申告期限まで待ちましょう(課税売上高が5億円超 or 以下か確定するまで待ちましょう)」と考えられます。
逆に考えれば、親法人の決算から2 か月以内に子法人を設立すれば(当然、同時に事業開始すれば)、上記のカッコ書より、判定対象になりません。
特定新規設立法人回避のために設立時期の考慮も考えられます。


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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。