執筆者:伊藤俊一 先生
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Q. 消費税、準ずる割合の実務上の留意点
1 土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合とは、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合とします。
2 課税売上割合に準ずる割合は、承認を受けた日の属する課税期間から適用となります。承認審査には一定の期間が必要となりますので、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」は、余裕をもって提出してください。
3 この課税売上割合に準ずる割合の承認は、たまたま土地の譲渡があった場合に行うものですから、当該課税期間において適用したときは、翌課税期間において「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出してください。なお、提出がない場合には、承認を受けた日の属する課税期間の翌課税期間以降の承認を取り消すものとします。
11-5-9 法第30条第2項本文《仕入控除税額の計算》に規定する「課税売上割合が100分の95に満たないとき」に該当するかどうかは、事業者が課税売上割合に準ずる割合につき税務署長の承認を受けているかどうかにかかわらず、課税売上割合によって判定することに留意する。
○そもそも個別対応方式の共通仕入控除税額の計算にしか使用できません。
○上記はあくまで「承認申請」となっているので、課税実務では、最低1か月以上余裕をみて提出します。
○合理的な計算方法とは下記です。
11-5-7 法第30条第3 項《課税売上割合に準ずる割合》に規定する課税売上割合に準ずる割合(以下11-5-9 までにおいて「課税売上割合に準ずる割合」という。)とは、使用人の数又は従事日数の割合、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合その他課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものの性質に応ずる合理的な基準により算出した割合をいう。
11-5-8 課税売上割合に準ずる割合の適用に当たっては、その事業者が行う事業の全部について同一の割合を適用する必要はなく、例えば、次の方法によることもできるのであるから留意する。
ただし、この場合には、適用すべき課税売上割合に準ずる割合の全てについて税務署長の承認を受けなければならないのであるから留意する。
(平23課消1-35により改正)
(1) 当該事業者の営む事業の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法
(2) 当該事業者の事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法
(3) 当該事業者の事業に係る事業場の単位ごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法
○あくまで肌感覚ですが、過去3年以内前後に同一の法人で他の土地の譲渡があった場合には、所轄税務署に個別照会をかけるべきです。ここで3年としたのは、準ずる割合は3年を基準に計算するからです(上記質疑応答事例参照のこと)。
○事業者の営業の実態に変化がないことが要件となりますが、当該売却した土地で行っていた事業を売却により廃業した場合、判断が困難です(仮にこの場合でも売上の多くを占める本業自体に変化がなければ、上記要件に抵触しないと考えられるため)。この場合も所轄税務署に個別照会をかけるべきです。
○上記の計算構造上、結果として適用を受ける課税期間の中途で課税売上割合を計算せざるを得ないことになってしまいます。課税実務では、直近課税期間については土地売却後における最新の月次試算表に基づき課税売上割合を計算することになります。
○上記の計算ロジックでは共通対応課税仕入の金額がそれほど大きくない場合はあまり税効果がないケースも想定されますので、実際の適用には有利・不利シミュレーションをすべきです。
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。