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事業承継スキーム
■【事業承継スキーム】会計事務所自身の事業承継戦略―①
1 要旨税理士業等を営む原告は、東税務署長から、本件各係争年分の所得税や本件各課税期間の消費税等に係る原告の確定申告において必要経費や課税仕入れに算入されていた原告の事務所(以下「本件事務所」という。)の賃料及び水道光熱費並びに本件事務所内で開業していた社会保険労務士の乙(以下「訴外人」という。)に対して支払われた支援料(以下「本件支援料」という。)について、本件事務所の一部を原告が代表者を務める有限会社B(以下「訴外会社」という。)や訴外人が無償で使用しており、上記賃料及び水道光熱費のうち訴外会社及び訴外人の使用部分に係る賃料等相当額(以下「本件賃料等相当額」という。)は必要経費や課税仕入れに当たらず、また、本件支援料も必要経費や課税仕入れに当たらないとして、上記所得税及び消費税等に係る各更正処分並びに各過少申告加算税賦課決定処分を受けた。本件は、原告が、本件賃料等相当額や本件支援料はいずれも必要経費や課税仕入れに当たる旨主張して、被告に対し、上記各処分の取消しを求める(前記第1の1~6の請求)ほか、東税務署長から、平成21年分の所得税に係る更正請求について、更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、その取消しを求める(前記第1の7の請求)事案である。
2 関係法令の定め
(1)所得税法等(省略)
(2)消費税法(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)等(省略)
3 (省略)
4 (省略)
5 本件の争点
(1) (省略)
(2)本案の争点
ア 原告が本件事務所の賃料及び水道光熱費として支払った本件原告支払賃料等のうち、訴外会社及び訴外人の使用部分に係る本件賃料等相当額(以下、本件賃料等相当額のうち訴外会社の使用部分に係るものを「本件訴外会社賃料等相当額」といい、訴外人の使用部分に係るものを「本件訴外人賃料等相当額」という。)及び本件支援料の額は、原告の事業所得の金額の計算上、所得税法27条2項に規定する必要経費に算入すべき金額に当たるか(争点2 )。
イ (省略)
6 当事者の主張(省略)
1 争点1(本件通知処分の取消請求に係る訴えの利益)について(省略)
2 認定事実前記前提となる事実、証拠(後掲のもののほか、甲20、乙1 、証人乙、原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。
(1)原告と訴外会社の関係等
ア 原告は、平成2年2月、株式会社として訴外会社を設立し、以後、訴外会社は、原告から受託する記帳代行に係るパソコン入力等の業務を行っていた。なお、訴外会社は、平成14年12月、有限会社に組織変更されたが、現在まで、原告が訴外会社の持分を全部保有している。
イ 原告と訴外会社との間の上記アの業務委託関係は書面化されていなかったが、原告は、平成17年10月1日付けで、本件業務委託契約に係る契約書を作成した。訴外会社では、平成19年ないし平成21年当時、代表者である原告のほか、原告の妻及び丙が従業員として勤務し、同人らは本件事務所内で本件業務委託契約に基づく訴外会社の受託業務に従事していた(甲1の1~3)。
ウ その後、本件業務委託契約は平成21年12月末をもって終了し、これに伴い、原告の妻と丙はいずれも訴外会社を退職した。その頃、後記(2)のとおり、原告は、介護の分野に興味を持ち始めていたことから、訴外会社の業務内容を転換して、介護職員人材育成事業を中心として行っていくこととし、平成22年5 月7 日付けで商号を有限会社Dに変更した上、同年12月頃、本店所在地を本件事務所の所在地から原告の住所地に移した。
(2)原告と訴外人との関係等
ア 原告と訴外人が業務提携に至る経緯
(ア)原告は、我が国が高齢化社会を迎えるに当たり、将来介護事業所の増加が見込まれることに着目し、平成21年頃から、介護事業所の顧客(税務顧問等)を増やすべく、介護業界への業務展開を企図していた。しかし、介護事業所の中には既に決まった税理士と顧問契約を締結している事業所や税理士との顧問契約締結の必要性を感じていない事業所も多く、自らの事務所に何らかの特色を備える必要があると考えた。そして、介護事業所の開設者が介護保険事業者の指定手続を社会保険労務士に依頼することが多いことに着目し、介護保険事業者の指定手続を行う社会保険労務士と業務提携すれば、当該社会保険労務士からその顧客を紹介してもらうことで、原告においても介護事業所の顧客を増やすことができるのではないかと考えるようになった。もっとも、単なる緩やかな業務提携だけでは、顧客へのアピールとして不十分であり、また、提携した社会保険労務士が他の税理士を紹介してしまうことも危惧されたため、原告は、提携先として、当該社会保険労務士がその顧客に税理士を紹介するときは必ず原告を紹介してもらえるよう、原告の事務所内で独立開業するなど、緊密な提携関係を構築することができるような社会保険労務士を探すこととした。また、原告は、介護保険事業を開業しようと考えている顧客にとっては、会社の設立や介護保険事業者の指定申請手続が最大の関心事となるため、そのような顧客に対し、会計・税務に関する顧問契約の重要性や必要性を説明しても、すぐに顧問契約につながるわけではないと考え、社会保険労務士のほか、司法書士とも提携した上で、本件事務所において介護保険事業の開業支援についていわゆるワンストップサービスを受け得ることをアピールすることで、本件事務所の集客力を高めることを考え、そのようなワンストップサービスを実現する上でも、本件事務所内で開業する意志のある社会保険労務士を提携先として考えるようになった。
(イ)原告は、当初、訴外人とは別の社会保険労務士との提携を模索したが、同人は、既に独立開業し、原告の事務所内での開業ができず、前記アのような原告の希望に合わなかったため、提携を断念した。その後、原告は、平成21年7月下旬頃、上記社会保険労務士から、訴外人を紹介された。原告は、それまで訴外人と面識はなく、原告と訴外人との間に親族関係等はなかった。
(ウ)訴外人は、保険会社等において営業を担当した経験があり、平成20年9 月には保険会社から他社に転職し、同社において社会保険労務士の補助業務に従事し、同年11月に社会保険労務士の資格登録をした後は、平成21年8月に退社するまで社会保険労務士の業務を行っていた。原告は、訴外人について、社会保険労務士としての業務経験は長くはなかったものの、営業を担当していた期間が長く、営業力があるものと考え、本件事務所内で独立、開業する意向を示した訴外人と業務提携することとした(以下「本件業務提携」という。)。本件業務提携に当たり、原告と訴外人は、その条件を協議し、両名は、訴外人が本件事務所内での開業に伴い当時勤務していた会社を退職することになり、また、開業当初は様々な諸費用がかかること、他方、原告は本件事務所内で開業する訴外人との業務提携によりワンストップサービスを実現して集客力を高めることができ、訴外人からも顧客を紹介してもらえるといった利益を受けることを考慮して、原告が本件事務所内で訴外人が利用するスペースを無償で使用(水道光熱費の負担を含む。)させることや原告が当面6か月間支援料を訴外人に支払うこと等を合意し、両名は、訴外人においてその合意内容を文書化した本件覚書にそれぞれ調印した。
イ 本件業務提携後の経緯等
(ア)訴外人は、平成21年9月頃、本件事務所内で社会保険労務士業を開業し、本件事務所の一部の利用を開始した(甲16)。
(イ)訴外人は、開業後、介護事業所を対象としたセミナーを開催するなどし、このセミナーの案内資料には、「会計事務所、社労士事務所、行政書士事務所が、それぞれの得意分野でタッグを組んで、介護ビジネスに特化した各種サービスを万全にサポート」、「介護業界のワンストップサービスを提供します」などと記載されていたほか、経営情報誌のインタビューを受けた際には、原告との提携や原告の業務についての紹介も行った(甲6の1~3、甲7)。
(ウ)原告は、本件業務提携後、訴外人からの紹介で、新たに、有限会社E(月額顧問料2 万6250円、決算料19万3725円)、株式会社F(月額顧問料3万1500円、決算料15万7500円)及び株式会社G(年間顧問料31万5000円)との間でそれぞれ顧問契約を締結した。また、原告は、訴外人のほか行政書士とも提携して、介護保険事業の開業支援から税務顧問契約まで、ワンストップサービスが可能な環境を整え、その後、「H」というホームページを立ち上げ、その中で、介護事業の開業支援についてワンストップサービスが受けられる旨を宣伝している。なお、上記ホームページを見た顧客が原告と最終的に税務顧問契約を締結するに至ったケースは54件に上った(甲15、17)。さらに、原告は、経営情報誌や会計士情報に関する書籍中の原告の事業や事務所の紹介記事において、訴外人との業務提携を始め、介護事業に特化したワンストップサービスを実施していることをアピールしていた(甲9 、10)。
(エ)訴外人は、平成25年12月、本件事務所から出て他の場所に事務所を構える一方、訴外人の紹介した別の社会保険労務士が本件事務所内で開業したが、その後も、原告と訴外人は、互いに顧客を紹介するといった関係を維持している。
3 争点2(本件賃料等相当額及び本件支援料の必要経費該当性)について
(1)必要経費の意義等所得税法37条1項は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、①所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及び②販売費、一般管理費その他所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨定めている。そして、前提となる事実のとおり、原告は、税理士業等を営んで事業所得を得ているところ、本件賃料等相当額及び本件支援料は、いずれも上記①の原告の税理士業等による収入を得るため直接に要した費用でないことは明らかであるから、これらが上記②の所得を生ずべき業務について生じた費用(一般対応の必要経費)に該当するか否かが問題となる。ところで、事業所得の金額の計算上必要経費が総収入金額から控除される趣旨は、投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避けることにあると解されるところ、個人の事業主は、日常生活において事業による所得の獲得活動のみならず、所得の処分としての私的な消費活動も行っており、事業とは無関係に個人的な欲求、興味、情誼等といった動機、目的から消費活動を行うこともあり、そのようなものは投下資本の回収部分とは無関係であるから、事業所得の金額の計算に当たっては、事業上の必要経費と上記のような所得の処分である家事費とを明確に区分する必要がある。そして、所得税法37条1項は、上記のとおり、一般対応の必要経費について「所得を生ずべき業務について生じた費用」であると規定している。また、同法45条1項は、家事費及び家事関連費で政令に定めるものは必要経費に算入しない旨を定めているところ、同項を受けた所得税法施行令96条1号は、家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて、経費の主たる部分が「事業所得‥を生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定している。上記のような事業所得の金額の計算上必要経費が総収入金額から控除される趣旨や所得税法等の文言に照らすと、ある費用が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには、直接か、間接かといった関連性の程度はさておき、当該費用が所得を生ずべき事業ないし業務と関連し、かつその遂行上必要なものであることを要するものと解される。そして、上記の事業ないし業務との関連性の有無、事業ないし業務遂行上の必要性の有無については、当該事業や業務の性質、内容等をも踏まえ、事業者による当該費用の支出、負担がその事業ないし業務の維持、拡大等による経済的利益の獲得を目的として行われたものであるか、当該費用の支出、負担が客観的にも経済的利益の獲得につながるようなものであったか(当該費用の支出、負担による業務上の成果、経済的利益の獲得への寄与の程度。この点は、上記の目的の有無を客観的に判断する上でも必要となる。)等の諸事情を総合的に考慮して判断することが相当である。以上を踏まえ、以下、本件訴外会社賃料等相当額、本件訴外人賃料等相当額及び本件支援料の額について、原告の事業所得の計算上、必要経費に算入すべき金額に当たるかについて検討する。
(2)本件訴外会社賃料等相当額について
ア 原告は、訴外会社がその事業のために本件事務所の一部を使用できることを前提として、訴外会社との間で本件業務委託契約を締結し、原告の業務の一部を委託していたものであり、本件訴外会社賃料等相当額も必要経費に算入すべき金額に当たる旨主張する。
イ しかしながら、本件業務委託契約に係る契約書上には、訴外会社による本件事務所内のスペースの使用等、本件訴外会社賃料等相当額の負担に関係する記載はなく(乙2)、そのような事情は、原告の業務上、訴外会社が本件事務所内で業務を行うことを必要としていたかについて疑いを生じさせる。そもそも、原告が主張するように、訴外会社との間の本件業務委託契約が本件事務所の無償使用を前提として締結されているのであれば、本件業務委託契約が終了した平成21年12月末時点で本件事務所の無償使用も終了するはずであるところ、訴外会社は、それ以降も平成22年12月15日に訴外会社の本店所在地を移転するまでの間、引き続き、本件事務所を使用し、訴外会社は、その使用の対価を原告に支払っていない(原告本人、弁論の全趣旨)。このような事情は、原告と訴外会社との間の本件業務委託契約の内容あるいは前提として、本件事務所の無償使用が認められていたわけではないことを裏付けるものということができ、原告会社(ママ)にとって、訴外会社をして本件事務所の一部を無償使用させて業務を行わせる必要があったものとは容易に認め難い(そもそも、原告と訴外会社とは別の権利主体であるとはいえ、原告が訴外会社の持分全部を保有し、その代表者を務め、訴外会社は、平成19年ないし平成21年当時、従業員が原告の妻のほかには一人だけという小規模な同族会社であったことからすると、原告は、その一存で自らの資産等を自由に訴外会社の利用に供することができる状況にあったものと推認され、そのような状況の下で、原告が自らの業務上、格別、訴外会社に本件事務所内で業務を行わせる必要もないのに、これを行わせた可能性も十分に考えられる。)。
ウ したがって、上記アの原告の主張は、採用することができず、上記イの諸事情に照らすと、訴外会社による本件事務所の一部の無償使用は、原告が、自身の業務とは無関係に、訴外会社との前示のような関係を背景に個人的に使用させていたものと認められるのであり、被告が主張するような事業ないし業務との直接関連性の要否にかかわらず、本件訴外会社賃料等相当額は、原告の事業所得の計算上必要経費に算入すべき金額に当たらないものというべきである。なお、原告は、課税実務上、いわゆる構内請負において、外注先に使用させている部分も含めて賃料を必要経費として計上することが認められており、原告と訴外会社との関係は構内請負と同じである旨主張する。しかし、仮に、課税実務上、原告が主張するような取扱いがあったとしても、上記イの諸事情に照らせば、本件にそれと同様の取扱いが妥当するものとは考えられず、原告の上記主張は採用することができない。
(3)本件訴外人賃料等相当額及び本件支援料について
ア 前記2(2)アのとおり、原告が訴外人と本件業務提携をした目的は、介護保険事業に将来性を見いだし、介護保険事業者を新たな顧客として獲得する上で、訴外人の営業力を利用するとともに、訴外人との業務提携により実現されるワンストップサービスという特色をもって、より効果的に集客を可能とすることにあったのであり、その目的が、自らの税理士業の顧客獲得、それによる経済的利益の拡大を図ることにあったことは明らかであって、その目的自体、原告が営む税理士業という事業や業務に直接関連するものということができる(介護保険事業の将来見通しやワンストップサービスの提供による集客力の増加という発想は、それ自体、相応の合理性があり、本件業務提携に至る原告の発想、行動の中に、上記目的の存在を疑わせるような不合理な点はうかがわれない。)。そして、前記2(2)アウのとおり、原告は、本件業務提携に当たり、訴外人と提携条件について協議し、原告においても本件業務提携によりワンストップサービスを実現して集客力を高めることができ、訴外人から顧客を紹介してもらえるといった利益を受けることを考慮して、訴外人に本件事務所の一部を無償で使用(水道光熱費の使用を含む。)させることや原告が当面6か月間支援料を訴外人に支払うことを合意し、本件覚書に調印したものであることからすると、本件訴外人賃料等相当額の負担や本件支援料の支出も本件業務提携の内容、条件を構成し、その履行として行われたものということができるから、それらの負担、支出も、上記と同様の目的をもって行われたものと認めることができる。そもそも、前記認定のとおり、原告は、平成21年7月下旬頃に別の社会保険労務士から訴外人を紹介されるまで、訴外人とは面識がなく、親族関係等もなかったのであり、原告が、訴外人に対する個人的な情誼により事務所の一部の無償の提供や支援料の支払を行うことは容易に想定し難く、本件において、原告が個人的な情誼により上記行動に出たことを疑わせるような事情(その支出、負担が家事費や家事関連費としての性格を帯び得るような事情)はうかがわれない。むしろ、本件支援料の支払をみると、本件覚書で定められた当初の期限である平成22年2月末で終了し、同年3月以降、本件支援料は支払われていない(証人乙、原告本人)ところ、原告がそのような対応に出たのは、当初期待したほどには成果が上がらなかったためであり(原告本人)、このような事情は、原告が、個人的な情誼から訴外人との本件業務提携やそれに伴う支援料の支払に及んだのではなく、あくまでも自らの税理士業等に係る利益獲得のためにその支払を行ったことを裏付けるものということができる(個人的情誼から行われたものではない以上、本件支援料の支出や併せて行われた本件訴外人賃料等相当額の負担について、これを家事費や家事関連費として評価することはむしろ困難であるというべきである。)。客観的にみても、前記2(2)イの認定事実によれば、本件業務提携により上記目的に沿う相応の成果、寄与があったものと認められる。すなわち、確かに、上記のとおり当初期待したほどには成果が上がらなかったとして本件支援料の支払が6か月で打ち切られていることからすると、本件業務提携により多大な成果が上がったとまでは認め難い。しかしながら、前記認定のとおり、原告は、本件業務提携後、訴外人からの紹介により、年間顧問料及び決算料が数十万円に及ぶ新たな顧客3名と顧問契約を締結することができたものであり、具体的な利益を受けている。また、訴外人により、原告の税理士業務や、訴外人との提携により実現されたワンストップサービスが宣伝されたり、原告においても、自らの開設したホームページ等において、上記ワンストップサービスを自らの税理士業等の宣伝材料として用いることができたのであって、それが相当数の顧客獲得にもつながっている。これらの事情に照らせば、本件業務提携やその提携内容を構成する本件訴外人賃料等相当額の負担及び本件支援料の支払は、原告の税理士業等による経済的利益の獲得に相応の成果を上げ、寄与したものと評価することができる。本件支援料は63万5000円であり、本件訴外人賃料等相当額は15万8311円(原告が支出した平成21年の本件事務所に係る水道光熱費の金額168万8963円及び家賃426万2580円の合計額595万1543円に、訴外人による本件事務所の使用割合2.66%〔平成21年に本件事務所で原告、訴外会社及び訴外人の各業務に従事した者の全勤務月数のうち、訴外人の各業務に従事した者の勤務月数が占める割合〕を乗じた額)であって(弁論の全趣旨)、その合計額は79万3311円であるところ、その支出、負担額に比しても、上記成果、寄与は軽微なものとはいい難い。上記のような成果、寄与の程度に照らせば、本件業務提携当時の原告の上記成果・寄与への期待、見込みが漠然とした抽象的なものにとどまるとは評価し難く、前記認定のような目的の存在自体を疑わせるようなものではない。以上のとおり、本件業務提携に伴う本件訴外人賃料等相当額の負担や本件支援料の支払は、原告が自らの業務に係る顧客の獲得等を目的として行ったものであり、個人的な情誼に基づいてなされたものとは認め難く、客観的にも、それらにより原告の税理士業等の顧客獲得などにおいて相応の成果、寄与があったのであって、仮に被告が主張するように必要経費と認められる上で事業ないし業務との直接関連性を要するとしても、本件訴外人賃料等相当額や本件支援料は、原告の事業ないし業務と直接関連して負担、支出されたものとして、それらの額は、原告の事業所得の計算上、必要経費に算入すべき金額に当たるものというべきである(被告は、ある支出が各種所得のうちのどの所得との関係で必要経費に当たるかという対応関係の把握や家事費・家事関連費との区別という観点から、事業ないし業務との関連性について、直接的なものである必要がある旨主張するところ、被告がいう「直接関連性」の意味、その判断基準は必ずしも明らかではないものの、本件において、本件訴外人賃料等相当額や本件支援料が原告の営む税理士業等との関連で支出、負担されたものであり、原告の事業所得と対応関係にあることは明らかであるし、本件訴外人賃料等相当額や本件支援料が家事費・家事関連費と評価し難いことは前示のとおりであって、被告が「直接関連性」を必要とする趣旨に照らしても、その存在を肯定することに問題があるものとは考えられない。)。
イ これに対し、被告は、本件訴外人賃料等相当額の負担及び本件支援料の支出は、訴外人に対する支援にすぎず、業務上のメリットとの対価関係は認められない旨主張する。しかし、上記負担や支出は、本件業務提携の内容を構成し、業務提携の条件となっていたのであるから、本件業務提携により得られるメリット(実際に原告の税理士業等による経済的利益の獲得上、相応の成果、寄与があったことは前示のとおりである。)の対価としての性質を有していたことは否定できず、上記主張は採用することができない。また、被告は、本件支援料について、本件支援料の金額の計算が、原告の営む税理士業等の状況や原告が受けると主張するメリットと無関係に、訴外人が営む社会保険労務士業の収入金額に応じてその支給額が変動する計算方法となっていることや、訴外人が段階的に本件事務所の使用料等を支払っていたことを、事業ないし業務との直接関連性を否定する事情として指摘する。しかし、被告において事業ないし業務との直接関連性を要求する趣旨(各種所得との対応関係の把握、家事費・家事関連費との区別)に照らし、直接関連性の有無を判断する上で、厳密な対価関係まで要求されるものとは考えられず、本件支援料について原告が指摘するような金額の計算方法がとられていることが前記判断を直ちに左右するものではない。また、訴外人は、開業後、1年半か2年を超えた頃から、原告に対し、本件事務所の使用料として月額1万円の支払を始め、本件事務所を出るまでの間、その月額を3万円程度まで徐々に引き上げているが(証人乙)、本件訴外人賃料等相当額の負担が問題となっている平成21年中には、訴外人による使用料の支払があったわけではなく、後に段階的に増額する使用料の支払がされるようになったことが、前記判断を左右するものではない。
(4)以上のとおり、本件訴外会社賃料等相当額は、原告の事業所得の計算上、必要経費に算入すべき金額に当たるものとは認められないが、本件訴外人賃料等相当額及び本件支援料の額は、上記金額に当たるものと認められる。
4 争点3(本件賃料等相当額及び本件支援料の課税仕入れ該当性)について
(省略)
5 本件各更正処分等の適法性(省略)
・税理士&社労士のワンストップサービス
・ 社労士が集客行い、税理士が成約の際には社労士側にキックバック(業務提携料)
・ 当該業務提携料の必要経費該当性の判断として実際に税理士側で顧問料が上昇したこと等を根拠に、直接関連性あり⇒必要経費是認といったものです。
これを一言で表現すると「窓口が売上に貢献していれば、窓口にかかる費用は必要経費(直接関連性あり)」と読みとれます。・税理士法に抵触しない
・会計法人がポータルとして機能している
という前提下で成立すると思っています。【事業承継スキーム】所有と経営が分離している場合の持株会社スキームの留意点 | 【事業承継税制(特例)】持株会社スキームの基本と比較検討―① |
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税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。