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COLUMN

2021.03.11税務コンサルのポイント

【事業承継税制(特例)】相続させる遺言と「遺贈する」の使い分け:特定財産承継遺言と改正民法に関する留意点

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継税制(特例)


Q. 相続させる遺言と「遺贈する」の使い分け:特定財産承継遺言と改正民法に関する留意点

事業承継に利用される特定財産承継遺言について教えてください(注1)。


Answer

下記が一般的な取扱いです。

【解説】
事業承継税制において相続税の納税猶予スタートの場合は当然として、従来型の事業承継(持株会社スキーム等)においても遺言書の作成は必須です。この点、生前にオーナーは自社株式のすべてを後継者に「相続させる」旨を記載した遺言書(相続させる遺言、特定財産承継遺言とも呼ばれます)の作成が考えられます。

相続させる遺言の利用が発達化したのは、最判平成3年4月19日判決において認められたからと考えられます(判例、有力説、遺産分割効果説)。

改正民法では、相続による権利の承継は、遺産分割実施如何を問わず、法定相続分超過部分について、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないとする規定を新設しました。

【改正民法899条の2第1項】
第899条の2
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。


特定財産承継遺言があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が民法第898条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます。


【改正民法第1014条2項】
第1014条

2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。



相続させる遺言の場合、後継者は法定相続分を超える部分については対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません。
遺言書を無視し、遺産分割協議中に後継者が法定相続分を超える部分について第三者に譲渡した場合、当該第三者に対して権利を主張できません。
同族法人株式においては上記の観点から遺贈する、の方が望ましいとも考えられます。


注 釈

(注1)本問は大久保拓也「遺言に関する民法(相続法)の改正と事業承継への影響」(日税研メールマガジンvol.149(令和元年8月15日発行)公益財団法人日本税務研究センター)を参照しています。




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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。