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COLUMN

2021.01.07富裕層コンサルのイロハ

【事業承継税制(特例)】要件別の細かな留意点:議決権判定、法基通9-2-32との平仄、事業事態要件の留意点等―②

  • 事業承継税制

前回のつづきです。
↓前回分はこちら↓
■【事業承継税制(特例)】要件別の細かな留意点:議決権判定、法基通9-2-32との平仄、事業事態要件の留意点等―①


2) (後継者複数の場合)各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ、各後継者が同族関係者のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと


この要件に関するポイントは下記です。

①同⼀の贈与者から複数の後継者が贈与を受けた場合には、それらの贈与のうち、最後に⾏われた贈与直後に有する議決権の数によって、各後継者が同族関係者のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないかを判断します。

②議決権数の判定は「直接」保有している割合で判定し、「間接」保有している割合は考慮にいれません。


特にグループ関連会社が複数おり、同族関係者が複数、当該会社の株式を所有している場合、その判定は極めて困難を要します。


3) 贈与時に代表者を退任していること

贈与の時において、贈与者は中小企業者の代表者(代表権に⼀部制限がある者も含みます)を退任している必要があります。ただし、代表権のない役員として、会社の経営に関与することは可能です。また、約員として報酬を受け取っていても差し⽀えありません。

この要件に関するポイントは下記です。

①法人税基本通達9-2-32との平仄

②仮にどうしても代表権を返上したくないということであれば従来型の事業承継スキーム(新設法人資金調達型スキーム)しか手段がないこと


【法人税基本通達9-2-32】
(役員の分掌変更等の場合の退職給与)

9-2-32 法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。(昭54年直法2-31「四」、平19年課法2-3「二十二」、平23年課法2-17「十八」により改正)

(1)常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有
する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占め
ていると認められる者を除く。)になったこと。

(2)取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。

(3)分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

(注)本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。



4) 資産保有型会社の適用除外要件について

特定資産の帳簿価額の合計額の割合が70%以上となる場合であっても、以下のいずれにも該当する場合には、事業実態がある会社として、資産保有型会社には該当しないものとみなされます(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則6 ②)。

《事業実態があるとされるための要件》

①常時使用する従業員の数が5人以上であること(※ただし「従業員」には、経営承継受贈者(相続人)と生計を⼀にする親族は含めることができません。)。
ここでの生計一判定は所得税基本通達2-47で判定します。


(所得税基本通達2-47)
(「生計を⼀にするの意義」)

(1)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を⼀にするものとする。

イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合

ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が⾏われている場合

(2)親族が同⼀の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を⼀にするものとする。



②事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。


③贈与の日(相続の開始の日)まで引き続き3年以上にわたり次に掲げるいずれかの業務をしていること。

(イ) 商品販売等(商品の販売、資産の貸付け又は役務の提供で、継続して対価を得て行われるもの。その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。)
(※ただし、資産の貸付けの相手方が「経営承継受贈者である場合」や、「その同族関係者である場合」には、当該資産の貸付けは商品販売等の事業活動に該当しません。)。

(ロ) 商品販売等を行うために必要となる資産(上記②の事務所等を除く)の所有又は賃貸

(ハ) 上記(イ)及び(ロ)の業務に類するもの

ポイントは、

「(イ) 商品販売等(商品の販売、資産の貸付け又は役務の提供で、継続して対価を得て行われるもの。その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。)(※ただし、資産の貸付けの相手方が「経営承継受贈者である場合」や、「その同族関係者である場合」には、当該資産の貸付けは商品販売等の事業活動に該当しません。)。」

です。

文理で解釈すると資産(不動産)の貸付相手先が同族関係者であれば、要件を満たさない、ということです。
では、「商品の販売、役務の提供」なら同族関係者に対するものでも許容されるかという論点があります。例えば、子会社が親会社(主に持株会社)に業務委託手数料等を支払うといった具合です。
私見ですが、この場合でも当局に指摘される可能性はあると思われます。租税法の原則である文理解釈からは逸脱しますが、経済的実質が同一であれば同じ課税を行うという一方の原則(実質主義課税の原則)を勘案しますと、後者で判定される可能性は比較的高いのではないのか、と思われます。


5) 特例認定承継会社が自己株式を有する場合

事業承継税制(特例)における、要件の判定を行う場合の「非上場株式等」及び「発行済株式等」は、議決権に制限のないものに限られています。
そして、会社法第308条第2 項では、会社は、自己株式(会社が有する自己の株式をいう。以下同じ。)について議決権を有しないこととされていることから、株式数の要件の判定を行う場合には、発行済株式等の総数又は総額からは自己株式は除かれることとなります。
この点、下記も併せてチェックする必要があります。

「議決権に制限のある株式」には、自己株式のほか、例えば、次の株式が該当します。

①会社法第109条第2項⦅株主の平等⦆の規定に基づき、定款により議決権を行使することができる事項について制限がされた株主が有する株式

②会社法第115条⦅議決権制限株式の発行数⦆に規定する議決権制限株式

③会社法第189条第1項⦅単元未満株式についての権利の制限等⦆ に規定する単元未満株式

④株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして会社法施行規則第67条⦅実質的に支配することが可能となる関係⦆で定める株主(会法308①)が有する株式


上記のうち④、いわゆる25%ルール株式は課税実務上、極めて失念の多い論点です(通常の株価算定においても同様のことがいえます)。


6) 同一年中に同一の特定贈与者から異なる会社の株式につき相続時精算課税により贈与を受けた場合の納税猶予分の贈与税額の計算


特例経営承継受贈者が、同一年中に同一の特定贈与者から異なる特例認定贈与承継会社の特例対象受贈非上場株式等の贈与を受けた場合には、その年中に取得したこれらの特例対象受贈非上場株式等の価額の合計額を贈与税の課税価格とみなし(措令40の8の5 ⑮、40の8 ⑭二)、租税特別措置法第70条の7の5第2項第8号ロの規定に基づき納税猶予分の贈与税額の計算を行います。

そして、これにより計算された金額を、特例認定贈与承継会社の異なるものごとの特例対象受贈非上場株式等の価額によりあん分したものが、その異なるものごとの納税猶予分の贈与税額(100円未満の端数切捨て)となります(措令40の8の5 ⑮、40の8 ⑮二)。



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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。