本コラムは、M&Aキャリア25年超の当社のシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。
前回のつづきをお送りいたします。
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■≪M&A道1丁目≫投資ファンドの新しい動きと中小企業M&Aの行方―②5. 最近立ち上がった中小企業経営支援ファンド(1)リサ・パートナーズの事例
次に地銀と組み経営支援投融資ファンドを立ち上げている例を紹介します(注1)。
国内投資会社のリサ・パートナーズ(東京・港)では、後継者不足や業績悪化に悩む中小企業に出資、役員派遣して経営改善に取り組む投資ファンドを200億円規模で設立するとプレスリリースしています。
新型コロナウイルスの影響で景気の先行きが不透明となり、経営支援ニーズが高まるとみて設立したもののようです。
リサ社は従前金融機関の不良債権処理や官民投資ファンドを運営してきた実績から、全国の地方銀行や信用金庫と連携することで投資先探しを行っていくといいます。リサ社では中堅中小企業への投融資とアドバイザリーを業務としています。これまでの実績として北海道の観光ホテルや飛騨高山の酒造店への投融資による地域活性化ファンド、観光活性化ファンド、首都圏の中堅中小企業の事業拡大や再生などの成長支援、九州、奈良、沖縄などの地域企業再生ファンドを立ち上げているようです。
(2)地方銀行の事例
①百五銀行設立ファンドの事例(注2)
百五銀行と、同行の投資専門子会社である百五みらい投資が企業の事業承継支援ファンドを設立しました。
百五銀行が「リミテッドパートナー(LP)」(注3)として、百五みらい投資が「ジェネラルパートナー(GP)」(注4)として参画するとプレスリリースしています。
百五みらい投資株式会社は、本ファンドを活用し、事業承継に取り組む企業への資金の提供、経営支援を積極的に行い、お客さま、そして地域とともに、持続的かつ安定的に成長していくことを目指すといいます。
ファンド規模は30億円といいます。詳細は不明ですが、同行取引先を投資対象とすることが想定されるため、1件当たりの平均エクイティ投資額は数億円規模ではないかと推測されます。後継者不在などの経営課題を抱える中小企業M&Aが対象となるものとみられます。
図1 百五銀行ファンドスキーム(出典)2020年1月29日付百五銀行プレスリリース
同社は、本ファンドの運営に関し、アドバイザーとアドバイザリー契約を締結し運営します。
②京都銀行の事業承継支援の事例(注5)
京都銀行では、取引先企業(関西圏の卸売業者、売上高20億円超)に対して、京都銀行グループと独立系PEファンドによる共同出資を行い、中小企業である対象会社の事業承継課題を解決したとプレスリリースしました。
京都銀行がグループ会社の京銀リース・キャピタル株式会社と、京銀輝く未来応援ファンド2号投資事業有限責任組合と、外部提携先の当該PE ファンドによる運営ファンドが、買収目的会社(SPC)に対して共同出資を行い、SPCが対象会社の全株式を取得しました。対象会社には今後、外部からの社長の招聘や、京銀リース・キャピタルおよび当該 PEファンドからの役職員の派遣を通じて事業運営のサポートを行い、企業価値向上を目指すスキームです。なお、本件は当ファンドで初めての事業承継課題への取組みとなるとしています。
対象会社の社長は後継者に関する課題を抱える中、事業の承継について、従業員と取引先が安心感を得られるものであること、自社の新たな成長機会となることを前提にM&Aを検討していたそうです。
そこで、京都銀行グループが対象会社の経営に関与することで社長の意向に沿えるものと考え、京都銀行グループが持つ信用力とネットワーク、PEファンドが持つ事業運営に関するノウハウや経営サポートを活用できる共同出資のスキームを組成しました。
京都銀行では、事業承継に際してM&Aを積極的に行っています。一部事業の切り離しやファンドの活用など解決策を提案しているようです。
同行が対象としているM&Aとは、独自技術や新規性のあるビジネスモデルを有し、将来成長が期待できる創業企業やベンチャー企業、後継者不在など事業承継ニーズを有する中小企業としています。
図2 京都銀行ファンドスキーム(出典)2020年3月10付京都銀行プレスリリース
・・・つづきは次回、『≪M&A道1丁目≫投資ファンドの新しい動きと中小企業M&Aの行方―④』でお送りいたします。(注釈)
(注1)出典は、2020年4月16日付日本経済新聞9面(金融経済)記事「中小投資200億円ファンド リサ、地銀と組み経営支援」、リサ・パートナーズHP(https://www.risa-p.com/2020年4月16日閲覧)、同社の2020年4月27日付プレスリリース「アドバンテッジパートナーズ VI号ファンド募集完了のお知らせ」参照。
(注2)出典は、2020年1月30日付日本経済新聞地域経済面の記事「事業承継のファンド30億円 百五銀が設立」、百五銀行ホームページ( https://www.hyakugo.co.jp/news/2020年4月27日閲覧)、2020年1月29日付プレスリリース「「AIDMA 1号投資事業有限責任組合」の設立について」参照。
(注3)「リミテッドバートナーシップ(Limited Partnership:LP)」とは、「米国などで認められている企業形態の一つ。無限責任を負う最低1名のゼネラル・パートナー(GP)と、有限責任のリミテッド・パートナー(LP)とによって組織される形態。LPは有限責任である代わりに、経営に参加できないという制約がある。」をいいます。(出典)野村證券ホームページ「証券用語解説集」(https://www.nomura.co.jp/terms/english/l/A02193.html2020年4月29日閲覧)
(注4)「ゼネラルパートナーシップ(GP)」は、事業体の管理責任を負う点がLPと異なります。無限責任社員。
(注5)出典は、2020年3月10日付日本経済新聞電子版「京都銀行、ファンドを活用し事業承継支援」、京都銀行ホームページ、2020年3月10日付プレスリリース「「京銀輝く未来応援ファンド」を活用し事業承継課題を解決! ~ PE ファンドとの共同 出資スキームを組成 ~」を参照。
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