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COLUMN

2020.07.16税務コンサルのポイント

その他のみなし贈与が生じる諸論点―②

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • みなし贈与

前回のつづきです。
↓前回分はこちら↓
■その他のみなし贈与が生じる諸論点―①

(5) 失権株
 同族会社の新株発行に伴う失権株に係る新株発行が行われなかった結果、新株発行割合(新株発行前の当該同族会社の発行済み株式総数に対する新株発行により引受けのあった新株の総数割合)を基準として、その割合を超えた割合で新株を引き受けることになった者があるときは、その者のうち失権株主の親族等については、当該失権株の発行が行われなかったことにより受けた利益の総額のうち、決められた計算式により算出した金額に相当する利益をその者の親族等である失権株主のそれぞれから贈与によって取得したものとして取り扱われることになります。
 失権株になってしまった部分を再募集しないですむこともできます。増資株数が予定株数に満たないまま、切捨て増資として完了した場合、失権株が再発行した場合に受けたであろう利益の総額を計算して、その金額に相当する額が失権株主からの贈与とみなされます。
 計算式は

①その者が受けた利益の総額

②親族等である失権株主それぞれから贈与により取得したものとする権利の金額

等に分けて計算をします。
 「同族会社の発行済株式」の総数には、当該同族会社の保有する自己株式の数は含まれないことに注意が必要です。

(6) 事業承継税制におけるみなし贈与の発動可能性
 第三者(役員・従業員など)が保有する株式を後継者に集約する場合には、譲渡により行われることが通常と思慮します。
 当該譲渡が低額譲受けに該当する場合には、現代表者は後継者にみなし贈与課税が生じますが、この贈与税について事業承継税制の適用を受けることはできません。

(7) 中小企業M&A の場合の税理士事務所の事業承継
 親族後継者がいないため、税理士である職員に事務所を引き継がせたいと考えていると仮定します(注1)。営業権については、当該職員の長年の功労に報い、無償で譲渡したいと考えています。
 この場合、当該譲渡は、みなし贈与等に該当するのでしょうか。
 この点、一身専属性の事業に係る営業権を無償譲渡した場合には、課税関係は生じないことになります。
 税理士等が、業務を他の税理士等に引き継いだ対価として受ける金銭等は、得意先のあっせんの対価として雑所得となります。
 しかし、営業権の評価について、一身専属性の事業に係る営業権で、その事業者の死亡とともに消滅するものは、評価しないこととなっています。
 したがって、当該営業権の譲渡が無償であった場合は、所得は発生せず、みなし贈与等の課税関係も生じません。
 なお、事業用資産を譲渡した場合には、譲渡所得となり、事業承継後に生じた必要経費については、当該事業承継年分(同年において当該所得等に係る総収入金額がなかつた場合は、当該総収入金額があつた最近年分)、または、その前年分の事業所得の必要経費に算入することとなります。
(所得税個別通達 昭42.7.27直審(所)47、財産評価通達 165、相続税法 第7条・第9条、所得税法 第63条)

(8) 自己株式取得スキーム
 売主株主が法人の場合、利用できます。個人株主の場合使えません。自己株式取得によるみなし配当課税(総合課税)が重い税負担となるためです。
 法人株主が株式譲渡する前に、自己株式の取得をします。
 みなし配当が生じますが、受取配当金の益金不算入によって課税されません。そして、分配可能額限度を超過した残りの部分を第三者に売却するわけです。
 ちなみにこの場合の自己株式取得において少数株主からの買取りに関しては留意が必要です。相続税基本通達9-2 が適用されるのでは、と解する見解もあるようです。
 しかし、私見ですが金額の測定の困難性から、当局から指摘されることは非常にまれかと思慮します。


 ・・・つづきは次回、『その他のみなし贈与が生じる諸論点―③』でお送りいたします。


(注釈)

(注1)公益財団法人日本税務研究センター 相談事例Q&A より筆者改変








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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。