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COLUMN

2020.06.23M&A全般

<特別号>2020年のスモールМ&Aの動向について―③

  • M&A

本コラムは、当社のM&Aキャリア25年超のシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



前回のつづきをお送りいたします。

↓前回分はこちら↓
 ■<特別号>2020年のスモールМ&Aの動向について―②


最後に、以上申し上げました点を踏まえつつ、2020年に見込まれる関与先様の事業承継型M&Aをご検討、ご対応頂くための論点整理として、税理士先生方には以下のポイントをお示しさせて頂きます。

【事業承継型M&Aへの対応に関する8つのポイント】
1. 関与先様の資金繰り対応
当面の資金繰りなどで悩んでおられる関与先様も多いのではないかと心配されます。当面の資金繰りなどでお困りになっていないかどうか、関与先様の状況をご確認ください。
資金繰りの手当てや債務保証、助成金などについては、政府の支援策を案内してください。
日税グループにおいても、「新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける中小企業の資金繰り支援策一覧」を取りまとめ、小冊子の形でお配りしております。
まず企業存続を図ることが第三者承継を考える場合に第一に挙げるべきポイントです。関与先様の当面の資金繰りなど資金調達などにお悩みを解決するうえでご活用ください。

2. 後継者不在の中事業承継対策の検討が求められている先への対応
経済産業省が想定している第三者承継の可能性がある件数として、2025年までに約60万者あることは前述しましたが、第二のポイントは、こうした急増する第三者承継への対応です。
コロナ禍とは関係なく、もともと後継者不在で関与先様がお困りになっていないかどうか、目を向けてみてください。

3. コロナ禍のもとでの事業承継型M&Aの駆け込み需要への対応
オーナー経営者が後継者不在のため第三者承継は検討してきたものの、コロナ禍の影響により休業や自主廃業を避けるため、自身が想定していたよりもかなり早く、第三者承継の検討を余儀なくされることも想定されます。
言わば、「駆け込み寺」的に税理士先生のもとに相談が舞い込むような場合も想定されます。
そのような場合には、関与先様と事前相談のうえ早急にM&A仲介会社や、状況をみて金融機関などにも話をしていく必要があると思います。
信頼できるアドバイザーに、M&Aの実現可能性などについて相談してみてください。東京商工リサーチの調査によれば、休廃業・解散・倒産企業は年間5万者以上あります(注1)。事業存続を確保するうえでは、スピーディーな対応が求められます。

4. 「磨き上げ」を検討する関与先様への対応
第三者承継を考えてはいたものの、当面は第三者承継の事前準備としての「磨き上げ」を検討していた企業においても、将来的な不安が増幅される時期であると想定されます。
先行き見通しがつかないことなどを理由として、急遽、第三者承継の実行を早めることも予想されます。一方で、関与先のオーナー経営者が逡巡している可能性もあります。関与先様において売却意思が明確に固まっていない段階であっても、選択肢として戦略的代替案を持つことで、よりポジティブに最適な資本戦略を考えることができるようになるはずです。逡巡される関与先様がいないか見直してみてください。

5. 事業承継対策の検討未着手先への対応
事業承継問題について、親族内承継か、社内承継か、第三者承継か、いずれの選択肢が望ましい方向性なのかを検討すべきところ、これを棚上げにしているような関与先様への対応です。
オーナー経営者の子供が学生である場合には、将来、事業後継者となり得るかどうか判断がつかないこともあります。また、社内の経営幹部を後継候補として育成しようと考えていたが、経営者として育成途上にあり、経営能力を発揮してもらうにはまだまだ時間がかかると思っていたような場合などです。
関与先のオーナー経営者の気持ちが大きく第三者承継に傾いていることもあります。税理士先生が相談に乗っていただくことで、オーナー経営者の悩みを「見える化」し、中長期的な視点で考え、行動できる一助となります。

6. これまで買いニーズのあった会社が売り手に替わる場合の対応
これまで「買いたい」と言っていたオーナー経営者が急に売却を検討する可能性もあります。オーナー経営者がまだ若い場合でも、M&A実行後も社内に役員や幹部社員として残るものの、保証債務からは解放されたいと考える場合もあります。そうした変化に最初に気づける立場にいらっしゃるのは、税理士先生方です。オーナー経営者の声に耳を傾けることで経営者の思いの変化に寄り添うことができます。

7. 買いニーズ対応
コロナ禍などで社会不安が増幅されているようなこの時期における買いニーズは、非常に貴重です。強い買いニーズ先と言えます。M&Aアドバイザーの世界では、ストロングバイヤー(Strong Buyer)と言います。
これまでも、景気変動の節目となる時期、M&Aに関連する大幅制度変更が施行された時などの他に、リーマンショックや、東日本大震災などのような環境の大きな変化が突然発生した時期もありました。
「ピンチはチャンス」と考え、積極的な買収意向を表明する会社もあります。
M&A仲介会社や金融機関などのM&Aアドバイザーとの連携により、関与先様の事業拡大戦略に叶うM&A売りニーズとのマッチングの可能性が高まっています。
M&Aアドバイザーとの有効な連携活用について、関与先様にお話をしてみてください。

8. 売りニーズと買いニーズのマッチング対応
マッチングには、M&A仲介会社や金融機関などのM&Aアドバイザーの存在が必要になります。関与先様において第三者承継の事前準備を徐々に進めていたとしても、第三者承継の実現可能性に関する情報はオーナー経営者にとって必要な判断材料となってきます。
このコロナ禍においては、買いニーズが収縮してしまっている可能性はあるものの、売り手と買い手間のマッチングの実現性に関しては、逆にその確率が高まることが想定されます。
本気度の高い買いニーズと急ぐ売りニーズとをマッチングすることができれば、M&Aの成約の可能性は高まります。
いま、環境は大きく変わってきています。
売り手においては、平常時に比べ売却意思決定が早くなることが想定されます。買い手として力のある企業が真に向き合うことができれば、M&Aの実現可能性は高まります。マッチング力を高めるためには、M&Aアドバイザーによるマッチング支援は欠かせないものとなります。
もし、売り手の期待に応えられずに買い手とのマッチングの機会を逸すれば、関与先様にとっても、前述の「老舗企業の強み」と「生き残りのポイント」に記載されているような有用な無形の経営資源を棄損させることになりかねません。
経済産業省の2019年11月に公表された調査レポートによれば、中小企業の廃業による日本産業界の損失額が2025年までの累計で22兆円との試算もあります(注2)。休廃業を検討する中小企業の経営者に対して第三者承継の道へ誘導することができない場合には、その経済損失は甚大といえそうです。
「Seize the fortune by the forelock(幸運の女神の前髪を掴め)」。レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)の言葉とされていますが、M&Aにおいても、こうした潮目の変わり目であるこの時期を、Good Timingにすることができるかもしれません。
事業承継問題を抱える売り手に対してよき相手先との出会いを提供することは、M&Aアドバイザーとして最も大事なミッションのひとつであります。

私ども日税グループでは、『税理士とその関与先のために』を経営理念としております。株式会社日税経営情報センターは、税理士先生方の大切な関与先様の経営課題解決のお手伝いをさせて頂くべく、M&Aをはじめ、株価算定、事業承継、組織再編などのコンサルティング支援業務を提供しております。お気軽にご相談ください。

このコラムの原稿を書きながら、ラジオからカーペンターズ(The Carpenters)の「Yesterday Once More」という曲が流れてきました。
とても懐かしい曲であり、とても心地の良い歌です。
この曲を聴くと、とても穏やかな気持ちになります。この曲で繰り返し歌われているように、関与先様がいつまでも「Still Shines」であり、「So Fine」であることを陰ながら祈念しております。





(注釈)

(注1) 出典は、東京商工リサーチホームページ「2019年「休廃業・解散企業」の動向調査」(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200122_03.html2020年5月14日閲覧)

(注2) 経済産業省中小企業庁の調査によれば、「現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人 の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性(※)」があることを指摘しています。(※)経済損失22兆円の算出根拠として、「2025年までに経営者が70歳を越える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると仮定。雇用者は2009年から2014年までの間に廃業した中小企業で雇用されていた従業 員数の平均値(5.13人)、付加価値は2011年度における法人・個人事業主1者あたりの付加価値をそれぞれ使用(法人:6,065万円、個人:526万円)。」との補足説明があります。
(出典)経済産業省中小企業庁「事業引継ぎガイドライン」改定検討会第一回配布資料(資料3-1)「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」(2019年11月7日)









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