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2020.04.13税務コンサルのポイント

【株主間贈与】自己株式の取得―⑥

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前回のつづきです。 ↓前回分はこちら↓
■【株主間贈与】自己株式の取得―⑤


(4) 法人⇒個人間の税務上評価額の適正時価
 下記が原則となります。
 ・同族法人⇒オーナー系
   ・・・相続税評価額(原則)
 この場合、高額譲渡で取引すると受贈益が生じ、法人の株主へのみなし贈与が生じる可能性もあります(相基通9-2 )。
 ・同族法人⇒非支配少数株主
   ・・・配当還元方式価額
 ・非支配同族法人⇒オーナー系
   ・・・相続税評価額(原則)
 ・非支配同族法人⇒非支配少数株主
   ・・・配当還元方式価額

(5) 法人⇒法人間の税務上評価額の適正時価
 下記が原則となります。
 ・同族法人(関連法人)⇒同族法人(関連法人)
   ・・・法人税基本通達9-1-14又は時価純資産価額
 ・同族法人(関連法人)⇒同族法人(純然たる第三者)
   ・・・当事者間合意価額
 ・同族法人(純然たる第三者)⇒同族法人(関連法人)
   ・・・当事者間合意価額

(6) パターン別株主間贈与
 ※以下共通ですが、グループ法人税制は考慮していません。

① 低額取得による個人⇒個人への株主間贈与
 父(現オーナー)が、息子(後継者)により支配されている法人に対して、父から時価より安い金額で自己株式を取得した場合においては、息子の保有する時価は増加します。
 この場合、父から息子への株主間贈与が生じます。
 
② 低額取得による法人⇒個人への株主間贈与
 所得税法上は課税関係は生じません。所得税法に特段の規定はないからです。

③ 低額取得による法人⇒法人への株主間贈与
 法人税法上は課税関係は生じません。法人税法に特段の規定はないからです。

④ 高額取得による個人⇒個人への株主間贈与
 下記のケースの場合、個人株主に贈与税が課税されます。個人株主がA社の株式を所有、このすべてを金庫株しようとします。
 この場合、他の株主から当該個人株主に対する贈与と考えられます。ただし、実務上は「高額」取引についてはそれほど神経質になることはないでしょう。
 
⑤ 高額取得による個人⇒法人への株主間贈与
 特段、課税上の問題は生じません。ただし下記のような稀なケースも想定されます。X社はA社株式を所有しており、A社にその全てを金庫株させようとしています。
 この場合、例えばX社において多額の繰越欠損金があり、第三者に対してA社株式を譲渡することを予定しているようなときはY社において生じる譲渡益を圧縮したいというニーズがあります。
 X社からA社に対して時価よりも高く株式を買い取らせることでA社株式の時価を引き下げ、A社のオーナーがA社株式を譲渡した場合には、A社株式の譲渡価額を引き下げることが可能です。M&Aではよく用いられる方法です。
 これについて所得税法第157条第1 項の発動可能性は全くないとは言いきれません。
 なお、遺贈があった場合、同族会社においては株式等の価額が増加した場合、増加した部分は、他の株主等にみなし遺贈が生じます(相法9 、相基通9-2 )。
 
⑥ 高額取得による法人⇒法人への株主間贈与
 特段、課税上の問題は生じません。ただしオウブンシャ・ホールディングス事件のように発行法人を実質支配する法人につき、実質支配法人から発行法人への経済的利益移転が生じるという考え方もあるので実務上は慎重に対応すべき点もあります。




 ・・・つづきは次回、『【株主間贈与】組織再編成―①』でお送りいたします。






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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。