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COLUMN

2020.03.24M&A事例

【2例目】小さくても売れる会社の共通点とは?―②

  • M&A

本コラムでは、当社の経験豊富なシニアマネージャーが過去に携わったM&A案件を事例としてご紹介いたします。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。なお、文中の記載には私見が含まれていることをあらかじめご了承ください。



前回のつづきをお送りいたします。

↓前回分はこちら↓
 ■【2例目】小さくても売れる会社の共通点とは?―①


しかし、ここから苦戦しました。
オーナー社長に譲渡価格レンジを納得頂き、企業概要書を作成後、私たちは、同業者を中心に買手候補をリストアップしアプローチを開始しました。
最初の1年で、ウェディング会社、冠婚葬祭会社で約50社にアプローチし、上場会社を始め数社は両者面談まで進みましたが、基本合意へはなかなか進みませんでした。
立地のよさ、ウェディングサイトの高評価もあり、初期的な関心は示して頂けるのですが、どうしても打破できない壁がありました。
それは、オフィス併設のためエントランスの空間演出に制限があることでした。そのままで使用しても魅力はあり、採算も維持できることから、空間演出を大きく変えることは想定していませんでしたが、ウェディング会社のそれぞれのスタイルへのこだわりは強く、私たちはこの点を見誤っていました。

そこで、あらためて売手のオーナー社長と議論を重ね、対象事業をウェディング事業ではなくバンケット運営事業に再定義し、企業概要書を書き直しました。
実は、施設の周辺には中規模のバンケットが少なく、あるとしても高級ホテルに限られており、料金面から法人の宴会需要ピークの12月には多忙を極めていました。
華やかながら需要に波があるウェディングよりも、毎年安定している法人の宴会需要での実績を強みとし、私たちは、当初のウェディング関連会社を買手候補としてリストアップをしていたものから、法人向けバンケット運営、イベント企画に関心のありそうな業態を幅広くリストアップしました。
結果、ウェディングという領域からは距離のあった会社が関心を示し、当初は想像できなかった女性向け下着販売会社のR社がS社の希望譲渡価格を超える金額で買収することになりました。
付言すると、今回のスキームは事業譲渡でしたが、買手にのれんを発生させたくないとの意向があり、資産譲渡という取引形態となりました。
最初に面談してから1年半の道のりでした。

R社が譲り受けを希望されたのは、空間としての魅力もさることながら、法人需要による安定した収益で施設の維持が可能であり、ウェディングも可能な空間が女性の多い自社のイベント、福利厚生施設としても活用でき、自社で保有することでイベントのコスト削減も可能ということでした。

下着販売とウェディングという一見すると距離がありそうなマッチングでしたが、イベントという観点で結び付いたのです。
売手のオーナー社長との対話の積み重ねによって、対象事業の強みや優位性を再定義し、買手候補リストの視点を転換できたことで成約したケースです。

買収後、R社は自社のイベント活用や法人のお客様も巻き込んで総勢200名の婚活パーティを開催するなど業績の伸長に積極的に取り組まれています。
そして、オーナーは借入金を完済し、子供を優先する生活スタイルを大事にしながら、仕事も頑張っておられるとのことです。




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