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COLUMN

2020.02.20税務コンサルのポイント

【株主間贈与】自己株式の取得―②

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① 個人⇒法人間の非上場株式の移転についての税務上の適正評価額 続き


 ・・・前回の続きです。「評価」についてお話します。 前回分はこちら


 あくまで「評価」は法人税基本通達9-1-14となります。

〔参考〕【みなし譲渡/取引相場のない株式の時価】
大分地方裁判所平成9年(行ウ)第6号所得税更正処分等取消請求事件(全部取消し)(確定)(納税者勝訴)国側当事者・別府税務署長平成13年9月25日判決〔税務訴訟資料第251号順号8982〕
〔判示事項〕
 納税者が代表者となっている訴外O社の株式(取引相場のない株式)を、同族会社である訴外A社に納税者が譲渡したことについて、低廉譲渡として、課税庁がみなし譲渡所得課税を行ったことについて、本件譲渡取引に先立つ1年ないし2年前に、O社の役員がO社株式を訴外A社に対して譲渡しており、その譲渡価額は、本件取引価額と同額であって、①甲社役員の取引と本件取引との時間的間隔をもって、時価算定の参考にならないということはできないこと、②訴外A社は、甲社の従業員持株会社的側面を有するが、O社役員と訴外A社との取引が適正と認められないことを推認させる証拠はないこと、等からして本件取引は低廉譲渡にあたらないとして、低廉譲渡であるとの課税庁の主張が排斥された。
 納税者が取引相場のない株式を訴外A社に譲渡し、課税庁が当該取引を低廉譲渡として、純資産価額方式及び類似業種比準方式により「時価」を算定し、みなし譲渡所得課税を行ったことについて、本件各取引は、同族会社の株式を少数株主が取得する場合と認められ、譲受人A社は配当期待権以上のものを有せず、本件各取引の事情や本件取引の前に売買実例が存することを考慮すると、売買実例価額ないし配当還元方式によった場合と著しい差異が生じるのに、純資産価額方式及び類似業種比準方式に依拠して時価を算定することはおよそ合理的であるとは認められず、適法であるということはできないとされた。



 この事件では納税者は2 年前の売買実例の単価2,500円にて、従業員持株会の受皿会社に株式を譲渡しており、この金額を基に譲渡所得税の申告を行っています。
 なお、法人税基本通達9-1-13(1)売買事例のあるものと規定されておりますが、実務上は売買に限定されず取引一般に及ぶと考えてください。
 典型的なのはDES(デット・エクイティ・スワップ)です。
 例えば、平成30年6月30日にオーナー貸付金につきDESを実行したとします。第三者割当増資になりますので、増資価額の税務上適正評価額は、法人税基本通達9-1-14又は時価純資産価額です。ここでは時価純資産価額を採用したと仮定します。
 このあと、平成30年11月30日にオーナーが死去したとします。オーナー死亡に係る相続税申告の株式評価額は相続税評価額(原則)です。
 しかし、その後の税務調査で「DES実行時と死亡時が近い、相続税申告に適用される『その時の時価』とはDES 実行時の時価純資産価額である」と指摘された事例を筆者は聞いたことがあります。
 その根拠は相続税法22条及び、法人税基本通達9-1-13(1)の売買実例価格も広く解釈し直近の取引価額も内包されるとの判断がなされました。
 このケースは、結局、「このままオーナー貸付金があると相続税申告で額面評価になってしまう、今のうちに株式化して株価低減策を図ろう」と思っていた矢先に結果論としてこうなってしまったのです。
 ではどうすればよかったのでしょうか。期間を空ければよかったのです。相続や事業承継対策のセオリーは期間を空けることです。十分留意してください。

法人税基本通達9-1-13(上場有価証券等以外の株式の価額)
 上場有価証券等以外の株式につき法第33条第2 項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。(昭55 年直法2-8 「三十一」、平2 年直法2-6 「三」、平12 年課法2-7「十六」、平14 年課法2-1 十九」、平17 年課法2-14「九」、平19 年課法2-17「十九」により改正)
 (1) 売買実例のあるもの 当該事業年度終了の日前6 月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額
 (2) 公開途上にある株式(金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式)で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下9-1-13において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。) 金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
 (3)売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額
(4) (1)から(3)までに該当しないもの 当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額



 東京高裁平成17年1月19日判決では「類似業種比準法は、評価基準上、非上場株式についての評価原則的な方法であり、現実に取引が行われる上場会社の株価に比準した、株式の評価額が得られる点にて合理的な手法であり、非上場株式の算定方法として最も適切な評価方法であるといえる。」と述べています。







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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。