Mizuho Short Industry Focus 169号
プロシューマーを取り込む電力ビジネスモデル③~ドイツの蓄電システムを活用したクラウド・コミュニティモデル~
2019年3月12日 発行
【要約】
◆住宅用太陽光発電と家庭用蓄電システムを活用した新たなビジネスモデルが、ドイツで広がりつつある。住宅用太陽光発電と蓄電システムの販売に留まらず、当該設備を最大限活用し、顧客が必要とする電力全体を供給するクラウド・コミュニティモデルである。
◆この新たなビジネスモデルを大手電力会社等多数の事業者が手掛けているが、中でも蓄電システムを最も多く販売し、トッププレーヤーとなっているのがベンチャー企業のゾンネンである。当社の特徴的なビジネスモデルがゾンネンコミュニティであり、顧客が住宅用太陽光発電と当社の蓄電システムを購入し、毎月コミュニティ参加手数料を支払うと、当社を介してコミュニティ参加者全体の蓄電システム内にある電力の過不足が自動的に融通されるというものである。
◆クラウド・コミュニティモデルの普及要因は、①グリッドパリティ(太陽光発電の1kWhあたりの単価が電気料金を下回る状況)の達成、②蓄電システムのコスト低下、③政策支援の存在、④将来的に電気料金の上昇する可能性が挙げられる。加えて、ビジネスモデル上の仕組みとして、コミュニティ参加手数料等を余剰電力の売電収入と相殺することで、顧客は設備を購入した後、追加的な現金を支出することなく100%の電力需要を賄うことができる点が挙げられる。ゾンネンコミュニティの場合、コミュニティに参加する全ての蓄電システム内にある電力を共同利用するため、卸電力取引所から電力を調達する場合と異なり、長期で固定かつ低水準の手数料を実現できるものと考える。
◆当該サービスの利用により、顧客は経済的メリットを享受できる点に加えて、3つのメリットを見出している可能性がある。1点目が非常用電力の獲得であり、2点目が自宅での環境価値の創出と利用である。そして3点目に電気料金を支払うという概念からの独立が挙げられる。住宅用太陽光発電のコスト低減が進む日本においても、顧客のニーズを深掘りし、住宅用太陽光発電を中心とする分散型リソースを活用するような、事業者の新たな事業展開に期待したい。
※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
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