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2019.03.12産業情報

プロシューマーを取り込む電力ビジネスモデル②~米国住宅用太陽光発電市場で広がるTPOモデル~

  • Mizuho Short Industry Focus
  • 経済情報

Mizuho Short Industry Focus 168号
プロシューマーを取り込む電力ビジネスモデル②~米国住宅用太陽光発電市場で広がるTPOモデル~

2019年3月5日 発行

【要約】

◆近年の米国における住宅用太陽光発電の急速な普及の背景には、2007年に登場したThird Party Ownershipモデル(TPOモデル)と呼ばれるビジネスモデルがある。TPOモデルは、事業者が顧客の屋根に太陽光発電設備を設置及び保有し、設備のリース料や、設備で発電した電力を顧客に売電することで収益を上げるビジネスモデルである。顧客は、設備導入に伴う初期費用やその後の管理負担を軽減しつつ、太陽光発電から生み出される電力を利用することができる。

◆米国の住宅用太陽光発電を取り巻く環境を踏まえると、TPOモデルが普及してきた背景として、①グリッドパリティ(太陽光発電の1kWhあたりの単価が電気料金を下回る状況)の達成、②顧客の初期費用軽減に対するニーズの存在、③Net Energy Metering(NEM)と呼ばれる制度の3点が挙げられる。グリッドパリティを達成したことで、顧客は住宅用太陽光発電の導入によって電気料金を節約することが可能になり、この経済的メリットが顧客における太陽光発電の導入ニーズを高めてきた。斯かる中、顧客の課題であった高額な初期費用に対して、TPOモデルはソリューションになったのである。また、NEMにより、顧客は住宅用太陽光発電から生み出される電力を実質的に全て自家消費することが可能で、これによりグリッドパリティを達成した太陽光発電の経済的メリットを最大限享受することができる。加えて、NEMの下では顧客の不足電力は電力会社が供給するため、事業者は設置した太陽光発電から生じる電力の供給に専念することができた点が、TPOモデルの成立を容易にしたと考える。

◆住宅用太陽光発電市場が拡大して様々な事業者がTPOモデルを展開するようになる中、ベンチャー企業であるSunrunは、自社リソースのみならず他社とのパートナーシップを活用したマルチチャネル戦略の展開と、Sunrunの事業基盤をパートナー企業と共有するサービスプラットフォームの構築を進めることで、迅速な事業展開を実現してきた。Sunrunはこうした事業活動を通じて部材調達における交渉力向上や実績に基づく信頼を獲得することで当社の競争力を一層高め、広くプロシューマー1を取り込むことに成功している。

◆足下では、住宅用太陽光発電の導入に伴う初期費用負担が以前ほど顧客の課題ではなくなりつつあり、また、一部の州ではNEMにおける余剰電力の引き取り価格が引き下げられる等、TPOモデルを取り巻く環境には変化がみられる。斯かる中、Sunrunはこれまで獲得してきた事業基盤を活かし、蓄電システムの販売・リースや系統運用者に対するグリッド安定化サービスの提供といった新たな取り組みを加速させている。日本においてもTPOモデルを事業化する取り組みが生まれつつあり、日本の分散型リソースを取り巻く環境変化を捉えた今後の事業展開に期待したい。



・・・内容はPDFをご覧ください。

みずほ銀行 産業調査部

※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/index.html