Mizuho Short Industry Focus 167号
プロシューマーを取り込む電力ビジネスモデル① ~分散型リソースを活用するビジネスモデル構築の課題~
2019年2月26日 発行
【要約】
◆2018年7月に閣議決定された日本の第5次エネルギー基本計画に、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みを進めていくことが明記された中、価格低減が進む住宅用太陽光発電や、その電力を貯める蓄電システム等、分散型リソースの活用が期待されている。固定価格買取制度の買取期間終了を迎える住宅用太陽光発電の活用も、電力小売事業のイノベーションの観点を含めて注目されている。
◆斯かる中、国内外で分散型リソースを活用する多様なビジネスモデルが検討されている。例えば、顧客にサービスを提供するにあたり単一の分散型リソースを活用するビジネスモデルとしては、Third Party Ownershipモデル(TPOモデル)、クラウドモデル、コミュニティソーラーが挙げられる。また、統合・制御技術を用いて複数の分散型リソースを活用するビジネスモデルの例としては、Virtual Power Plant(VPP)、電力 Peer-to-Peer(P2P)プラットフォーム、マイクログリッドが挙げられる。
◆こうした分散型リソースを活用する電力ビジネスモデルには、同リソースの近年高まるコスト競争力を最大限活用することに加えて、電力需給を一致させる調整力の確保や顧客の協力を得るといった課題への対応が求められる。特に、分散型リソースを活用するビジネスモデルでは、設備の設置や維持に顧客の意向が強く影響することから、顧客の協力を得ることが重要である。これは、顧客が分散型リソースを自宅に設置し、同リソースの設置・メンテナンス・廃棄の費用等を負担するためである。事業環境や顧客ニーズに合わせた仕掛け作りによって、プロシューマー(※1)をいかに取り込むかという点が、この新たなビジネスモデルの成否に繋がる。
◆日本に適したプロシューマーを取り込む電力ビジネスモデルを考察するにあたり、本レポートを含む 4 本の連載レポートを通じて、分散型リソースを活用するビジネスモデルの展開で先行する欧米の事例研究を行う。具体的には、米国住宅用太陽光発電市場で広がる TPO モデルと、ドイツの蓄電システムを活用したクラウド・コミュニティモデルについて、その普及要因と大手事業者の取り組みを考察の上、日本の事業環境を踏まえたビジネスモデルの方向性を探る。
※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/index.html