MENU MENU

COLUMN

2019.02.12税務情報

「地積規模の大きな宅地の評価」の再整理(「広大地の評価」の廃止)

  • 税務なう。~関与先の未来を支える~
  • 広大地
  • 不動産
  • 相続

 平成29年度税制改正により、財産評価基本通達に「地積規模の大きな宅地の評価」が新設され、従来の「広大地の評価」が廃止されました(「地積規模の大きな宅地の評価」は、課税時期が平成30年1月1日以降の場合に適用)。
 旧「広大地の評価」制度下においては「マンション適地」として広大地の評価の対象とならなかった土地についても、改正後は「地積規模の大きな宅地」の評価減の対象となる可能性があるなど、この改正は資産税実務に対して大きな影響を与えました。
 本稿においては「地積規模の大きな宅地の評価」の制度概要について再整理します。


1. 改正趣旨
 旧「広大地の評価」では、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」であり、「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」で、「大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」を除いたものが対象とされていました。
 これら旧「広大地」は、その適用要件が不明確であったために、納税者と課税当局との見解の相違により広大地の評価が否認される場合もあり、納税者の予測可能性が充分に担保されている制度とはいえませんでした。
 さらに、旧「広大地の評価」は、地積に応じて比例的に減額する評価方法であり、各土地の形状などの個性が考慮されていないという点も問題視されていました。
 上記の問題点を受け「地積規模の大きな宅地の評価」が創設され、①適用要件の明確化がなされ、②各宅地の形状に応じた評価がされる計算体系が整備されました。一方で、「地積規模の大きな宅地の評価」は、旧「広大地」に比して、評価減の割合が減少したものとなりました。


2. 「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件
 「地積規模の大きな宅地の評価」を適用するには、以下の(1)および(2)の要件を満たす必要があります。
(1) 三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外では1,000㎡以上の地積の宅地
(2) 普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在する宅地

 ただし、以下の①~④のいずれかに該当するものは上記より除きます。
①大規模工業用地に該当する宅地(倍率地域の場合)
②市街化調整区域に所在する宅地
③工業専用地域に所在する宅地
④容積率が400%以上(東京都特別区では300%以上)の宅地

【図表1】「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象の判定のためのフローチャート

(出典:国税庁ホームページより)


3. 評価方法
 「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となった土地は、以下の算式により評価します。


 上記のBおよびCは、評価対象地が三大都市圏に所在するか否かという点とその地積の大きさに応じて、以下の表のとおりとなります。



4. 最後に
 平成30年1月1日より適用されている「地積規模の大きな宅地の評価」の制度は、旧「広大地」において十分ではなかった①納税者の予測可能性の担保と②各宅地の形状等に応じた評価の実現を図るために導入されましたが、この改正は資産税実務に対して大きな影響を与えました。
 例えば、旧「広大地」制度下においては広大地の評価の対象とならなかった土地についても、改正後は「地積規模の大きな宅地」として評価減の対象となる可能性があります。また、形状の良好な土地は「地積規模の大きな宅地の評価」の適用後も、高い評価額となってしまうこともあるかもしれません。
 地積の大きな土地をお持ちの方は、再度、相続税額の試算を行うことをお勧めいたします。

安井 孝徳

ひのき共同税務会計事務所/麹町オフィス代表 税理士平成10年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人を経て現職。上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、公益法人コンサルティング業務、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する税務業務などに従事。また、外資系企業やIPO準備会社など数社の監査役も兼務している。著書に「税理士のための会社清算の法律会計税務と申告書作成」(共著、清文社)、「Q&A業種別消費税の実務」(共著、中央経済社)がある。