相続税申告書の添付書類としては、平成30年度の税制改正前は「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本」とされており、原則として原本の提出が義務付けられていました。しかし、相続手続きの際には金融機関や不動産相続登記に関する手続きでも原本の提示を求められることから、戸籍謄本を複数取得する必要があり、納税者の事務負担や費用負担が大きくなるという問題がありました。
そこで、平成30年度の税制改正により、このような納税者の負担を軽減することを目的として当該添付書類について以下の見直しが行われました。
1.平成30年度税制改正の内容
(1) 法定相続情報一覧図の写しによる代用
「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本」に代えて、法定相続情報証明制度における「法定相続情報一覧図の写し」を添付することが認められることとなりました。
なお、「法定相続情報証明制度」とは、不動産の相続登記を促進することを目的として平成29年5月29日から全国の法務局で運用を開始した制度であり、「法定相続情報一覧図の写し」は当該制度を利用することで、戸籍に基づいて法定相続人が誰であるかについて登記官から証明を受けた書類です(交付に伴い戸籍謄本等の提示が必要になりますが、交付手数料は無料です)。
ただし、相続税申告において「法定相続情報一覧図の写し」を添付書類とする場合には、次の点に留意する必要があります。
①「図形式」により作成されたものであること
「法定相続情報一覧図の写し」は「図形式」と「列挙形式」により作成することができますが、相続税申告書の添付処理として認められているのは「図形式」のみです。
これは、「列挙形式」の場合では相続人の法定相続分が確認できない部分もあるため、相続税申告書の添付書類として利用する場合には、「図形式」により作成されたものである必要があります。
相続税においては相続人が実子か養子かにより取り扱いが異なる場合があるため、相続税申告書の添付書類として利用する場合には、子の続柄については戸籍上の続柄(長男、長女、養子など)によって記載する方法により作成されたものである必要があります(続柄が単に「子」と記載されているものは使用できません)。
ひのき共同税務会計事務所/芝オフィス代表 税理士平成13年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人、太陽グラントソントン税理士法人を経て現職。国内上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務精査業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する事業承継支援業務などに従事。著書に「中小・オーナー企業の国際税務」(中央経済社)、「第6版 詳解 連結納税Q&A」(共著・清文社)がある。