MENU MENU

COLUMN

2018.11.12税務情報

相続登記にかかる登録免許税の見直し

  • 税務なう。~関与先の未来を支える~
  • 不動産
  • 相続

1.制度の趣旨・背景
 近年、空き家や、更地ではあるが木々が生い茂り、ごみの不法投棄が起きている荒地などを見かけることがあります。
 人口減少・高齢化の進行に伴う土地利用ニーズの低下や都市部への人口移動を背景とした土地の所有意識の低下などにより、所有者不明土地が全国的に増加し、公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への支障となっております。これは地方の過疎地に限ったことではなく、都内の一等地であっても同様のことが起きているのが現状です。
 この原因としては、所有者が抱えるそれぞれの問題などもあるわけですが、その一つとして登記上の所有者が死亡しているが、相続登記が未了のまま放置されていることがあります。
 現在の不動産の権利の登記は任意であり、登記にはコストがかかるため、相続人が当該不動産の登記の必要性を感じず手続きをしなければ、登記簿上は被相続人のままとなり、相続後の実態とズレが生じてしまうこととなります。
 このようなことが起こってしまうと自治体の公共事業の促進や管理においても弊害が出る可能性があり、今大きな問題となっております。
 このような状況を踏まえ、相続登記を促進する観点から、長期間相続登記が未了のままである土地や相続登記未了の土地を今後増やさないため、相続に係る所有権移転登記において登録免許税の見直しが行われました。


2.土地の所有権移転登記に係る登録免許税の見直し
①原則
 土地の所有権移転登記に係る登録免許税は原則として以下の通りです。

事象課税標準税率
売買不動産の価額2%(2019年3月31日までは1.5%)
相続、法人の合併
又は共有物の分割
不動産の価額0.4%※
その他(贈与など)不動産の価額2%


②特例(改正内容)
 ①に対して、相続に係る所有権移転登記※において、以下の特例が設けられました。

I. 相続登記が未了で数次相続が発生している土地の免税
 一次相続の際に土地の相続登記の手続きが行われておらず、二次相続が起こった場合、原則として一次相続の土地の相続登記の手続きを完了させてからでないと二次相続に係る当該土地の相続登記を行うことができません。
 このような場合の二次相続に係る当該土地の相続登記を促進する観点から、相続により土地の所有権を取得した個人が、その相続によるその土地の所有権の移転登記を受ける前に死亡した場合には、2018年4月1日から2021年3月31日までの間にその死亡した個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税は課されないこととされました。

Ⅱ. 行政目的のため相続登記を促進する必要のある土地の免税
 個人が、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の施行の日(公布の日である2018年6月13日から6ヵ月以内で政令で定める日)から平成2021年3月31日までの間に、土地について相続による所有権の移転登記を受ける場合において、その土地が相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地であり、かつ、その土地の登録免許税の課税標準となる不動産の価額が10万円以下であるときは、その土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税は課されないこととされました。
 なお、ここでいう「相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地」とは、当該「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」に基づいて市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要があるとして法務大臣が指定するものです。


3.まとめ
 以上の改正により、相続人の負担が軽くなり相続登記手続きがしやすくなることから、相続人においてはこの規定を適用していただき、自治体の公共事業の促進や土地の流通性が増すことを望みます。




当社では、相続税の申告に関するご相談を受け付けております。どうぞお気軽にお問合せください。
相続税申告支援サービスの詳細はこちら

安井 孝徳

ひのき共同税務会計事務所/麹町オフィス代表 税理士平成10年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人を経て現職。上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、公益法人コンサルティング業務、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する税務業務などに従事。また、外資系企業やIPO準備会社など数社の監査役も兼務している。著書に「税理士のための会社清算の法律会計税務と申告書作成」(共著、清文社)、「Q&A業種別消費税の実務」(共著、中央経済社)がある。