1.制度の趣旨・背景
近年、空き家や、更地ではあるが木々が生い茂り、ごみの不法投棄が起きている荒地などを見かけることがあります。
人口減少・高齢化の進行に伴う土地利用ニーズの低下や都市部への人口移動を背景とした土地の所有意識の低下などにより、所有者不明土地が全国的に増加し、公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への支障となっております。これは地方の過疎地に限ったことではなく、都内の一等地であっても同様のことが起きているのが現状です。
この原因としては、所有者が抱えるそれぞれの問題などもあるわけですが、その一つとして登記上の所有者が死亡しているが、相続登記が未了のまま放置されていることがあります。
現在の不動産の権利の登記は任意であり、登記にはコストがかかるため、相続人が当該不動産の登記の必要性を感じず手続きをしなければ、登記簿上は被相続人のままとなり、相続後の実態とズレが生じてしまうこととなります。
このようなことが起こってしまうと自治体の公共事業の促進や管理においても弊害が出る可能性があり、今大きな問題となっております。
このような状況を踏まえ、相続登記を促進する観点から、長期間相続登記が未了のままである土地や相続登記未了の土地を今後増やさないため、相続に係る所有権移転登記において登録免許税の見直しが行われました。
2.土地の所有権移転登記に係る登録免許税の見直し
①原則
土地の所有権移転登記に係る登録免許税は原則として以下の通りです。
事象 | 課税標準 | 税率 |
---|---|---|
売買 | 不動産の価額 | 2%(2019年3月31日までは1.5%) |
相続、法人の合併 又は共有物の分割 | 不動産の価額 | 0.4%※ |
その他(贈与など) | 不動産の価額 | 2% |
ひのき共同税務会計事務所/麹町オフィス代表 税理士平成10年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人を経て現職。上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、公益法人コンサルティング業務、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する税務業務などに従事。また、外資系企業やIPO準備会社など数社の監査役も兼務している。著書に「税理士のための会社清算の法律会計税務と申告書作成」(共著、清文社)、「Q&A業種別消費税の実務」(共著、中央経済社)がある。