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COLUMN

2018.10.11税務コンサルのポイント

経営承継円滑化法マニュアルを読み解く

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 今回は経営承継円滑化法マニュアルを読み解きます。下記はマニュアルから重要な部分を抜粋しています。
 事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。平成30年度税制改正では、この事業承継税制について、これまでの措置(以下「一般措置」といいます。)に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置(以下「特例措置」といいます。)が創設されました。
 後継者が贈与により取得した株式等(ただし、議決権を行使することができない株式を除きます。)に係る贈与税の100%が猶予されます。本制度の適用を受けるためには、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の「認定」を受け、報告期間中(原則として贈与税の申告期限から5年間)は代表者として経営を行う等の要件を満たす必要があり、その後は、後継者が対象株式等を継続保有すること等が求められます。また、後継者が死亡した等の一定の場合には、猶予された贈与税が免除されます。
 贈与者が死亡した場合には、猶予されていた贈与税は免除された上で、贈与を受けた株式等を贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されます(贈与時の価額で計算)。その際、都道府県知事の確認(以下「切替確認」といいます。)を受けることで、相続税の納税猶予を受けることができます。
 当該申請は最初に先代経営者からの移転が行われている必要があります。これを「第一種」認定といいます。先代経営者からの贈与/相続以後、一定の期間内に行われた先代経営者以外の株主からの贈与/相続も対象となります。これを「第二種」認定といいます。
 この特例を受ける際は、事前に特例承継計画を策定、提出しなければなりません。事業承継税制(特例)の適用を受けるためには、平成30年4月1日から平成35年3月31日までに特例承継計画を都道府県庁に提出し、確認を受ける必要があります。特例承継計画には、後継者の氏名や事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継後5年間の事業計画等を記載し、その内容について認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受ける必要があります。特例承継計画の確認を受けた後に、計画の内容に変更があった場合は、変更申請書を都道府県に提出し確認を受けることができます。変更申請書には、変更事項を反映した計画を記載し、再度認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けることが必要です。
 また、様式第27を提出することで、雇用要件の実質撤廃がなされることになりました。特例の認定を受けた場合は、雇用が8割を下回った場合でも認定取消・納税とはなりませんが、その理由について都道府県に報告を行わなければなりません。その報告に際し、認定経営革新等支援機関が、雇用が減少した理由について初見を記載するとともに、中小企業者が申告した雇用減少の理由が、経営悪化あるいは正当ではない理由によるものの場合は、経営の改善のための指導及び助力を行う必要があります。
 認定を受けるためには、対象会社に関する要件、後継者に関する要件、先代経営者に関する要件、先代経営者以外の株主等に関する要件があります。贈与の場合、相続又は遺贈の場合のそれぞれの場合において要件が異なりますので、ご注意ください。

 次回以降、各適用要件について実務上の留意事項を踏まえながら復習していきます。

伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。