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COLUMN

2018.10.09税務情報

外国人出国後の国外財産課税の見直し

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1. 制度の趣旨・背景
 平成29年度税制改正において、相続税及び贈与税の租税回避行為の防止強化を目的として、日本に10年超滞在した外国人が出国後5年以内に行った相続又は贈与については、国外財産についても相続税又は贈与税を課税することとされました。
 しかし、例えば日本での勤務が終わり、帰国した外国人が死亡した場合にも、国外財産について日本の相続税が課税されることとなるとの指摘もありました。
 そこで、近年大企業はじめ多くの企業・団体で外国人就労者の受け入れが進んでおり、高度外国人材等の受け入れと長期滞在を更に促進する観点から、平成30年度税制改正により、外国人が出国後に行った一定の相続及び贈与については、国外財産について課税されないこととなりました。


2. 平成30年度税制改正による見直しの内容
①改正(定義の改正)
 非居住被相続人及び非居住贈与者の定義が以下のように改正されました。

改正前改正後
非居住被相続人相続開始の時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、

●相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち、相続の開始前5年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの

●相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがないもの

相続開始の時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、

●相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人

●相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがないもの

非居住贈与者贈与の時において日本国内に住所を有していなかった贈与者で、

●贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち、贈与前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの

●贈与前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの


贈与の時において日本国内に住所を有していなかった贈与者で、

●贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち次に掲げるもの

・日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの

日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年を超えるもののうち同日から2年を経過しているもの

●贈与前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの



②相続税納税義務の見直し
 非居住被相続人の定義の改正により、
● 相続人:国外に住所を有する外国人
● 被相続人:国外に住所を有する外国人
である場合に、相続又は遺贈により取得する国外財産については、被相続人の日本国内に住所を有していた期間にかかわらず、相続税は課されないこととなりました。

③贈与税納税義務の見直し
 非居住贈与者の定義の改正により、
● 受贈者:国外に住所を有する外国人
● 贈与者:国外に住所を有する外国人
である場合に、贈与により取得する国外財産については、贈与者の日本国内に住所を有していた期間にかかわらず、原則として、贈与税は課されないこととなりました。
 ただし、贈与は相続の場合と異なり、贈与者が生存していることから、一時的に外国に住所を移すことによって、日本の贈与税を免れることも想定されます。
 そのような租税回避防止の観点から、出国前15年以内に10年超日本に滞在した外国人が、国外に住所を有する外国人に出国後2年以内に行う国外財産の贈与については、出国後当該2年以内に再び国内に住所を戻した場合に、当該国外財産も贈与税の課税対象とされました。


3. 適用時期
 この外国人出国後の国外財産課税の見直しは、平成30年4月1日以後に相続もしくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。




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安井 孝徳

ひのき共同税務会計事務所/麹町オフィス代表 税理士平成10年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人を経て現職。上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、公益法人コンサルティング業務、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する税務業務などに従事。また、外資系企業やIPO準備会社など数社の監査役も兼務している。著書に「税理士のための会社清算の法律会計税務と申告書作成」(共著、清文社)、「Q&A業種別消費税の実務」(共著、中央経済社)がある。