1. 制度の趣旨・背景
平成29年度税制改正において、相続税及び贈与税の租税回避行為の防止強化を目的として、日本に10年超滞在した外国人が出国後5年以内に行った相続又は贈与については、国外財産についても相続税又は贈与税を課税することとされました。
しかし、例えば日本での勤務が終わり、帰国した外国人が死亡した場合にも、国外財産について日本の相続税が課税されることとなるとの指摘もありました。
そこで、近年大企業はじめ多くの企業・団体で外国人就労者の受け入れが進んでおり、高度外国人材等の受け入れと長期滞在を更に促進する観点から、平成30年度税制改正により、外国人が出国後に行った一定の相続及び贈与については、国外財産について課税されないこととなりました。
2. 平成30年度税制改正による見直しの内容
①改正(定義の改正)
非居住被相続人及び非居住贈与者の定義が以下のように改正されました。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
非居住被相続人 | 相続開始の時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、 ●相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち、相続の開始前5年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの ●相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがないもの | 相続開始の時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、 ●相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人 ●相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがないもの |
非居住贈与者 | 贈与の時において日本国内に住所を有していなかった贈与者で、 ●贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち、贈与前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの ●贈与前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの | 贈与の時において日本国内に住所を有していなかった贈与者で、 ●贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち次に掲げるもの ・日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの ・日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年を超えるもののうち同日から2年を経過しているもの ●贈与前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの |
ひのき共同税務会計事務所/麹町オフィス代表 税理士平成10年早稲田大学社会科学部卒。デロイトトーマツ税理士法人を経て現職。上場企業及び外資系企業に対する税務申告業務から、公益法人コンサルティング業務、連結納税コンサルティング業務、事業再編・M&Aに係る税務業務、ストラクチャー検討業務、オーナー企業に対する税務業務などに従事。また、外資系企業やIPO準備会社など数社の監査役も兼務している。著書に「税理士のための会社清算の法律会計税務と申告書作成」(共著、清文社)、「Q&A業種別消費税の実務」(共著、中央経済社)がある。