増加する事業承継M&A
近年、中小企業においてもM&Aという言葉が頻繁に聞かれるようになってきました。図表1にある通り、日本国内におけるM&Aの件数、取引金額は近年増加の一途をたどっており、2017年には過去最高を記録しています。また、図表2ではさらに、いわゆるIN-INといわれる日本企業同士のM&Aについて、その取引件数と1件あたりの取引金額の推移をまとめたものとあります。国内企業同士のM&A件数は国内全体と同様の傾向で年々増加しています。一方、1件当たりの取引金額に着目した場合には、価格の低下傾向が見られます。これは中小規模のM&Aが増加してきていることを表していると推察できます。
この背景としては、中小企業における後継者不足があげられています。図表3をご覧ください。帝国データバンクが継続して行っている調査によると2017年時点で全国の社長の平均年齢は59.5歳となっており、過去最高を更新しています。平均年齢は右肩上がりに上がっており、日本の企業において社長の高齢化が進んでいます。これはすなわち、日本企業において若い世代への経営者の交代がうまく進んでいないということも意味していると考えられます。
また、図表4では、社長の年齢別に後継者の有無とその不在率のアンケートをとった結果となります。ここで注目すべきは60代です。65歳以上のオーナー企業では50.7%が後継者不在であるとされ、60歳前後のオーナー企業でも7割近い不在率となっています。まさに後継者不足により、社長の平均年齢の高齢化が進んでいるといえます。
ここで、近年注目されているのがいわゆる「事業承継M&A」といわれるものです。親族や従業員にめぼしい後継者が見当たらないときに、M&Aに事業承継の活路を見出し、第三者に対する売却をするのです。
この背景としては、M&Aに対する社会の見方の変化や、仲介者等のプレーヤーの増加、社会構造の変化による親族内事業承継の減少等が考えられます。社長の高齢化が進んでいく中で、この傾向は今後益々進んでいくのではないでしょうか。
また、ある調査機関の推計では、事業承継M&Aの件数は公表されていない案件も含めると年間3000件近い件数に上っているのではないかともされています。
図表1 日本におけるM&A件数と取引金額の推移
税理士/公認会計士
税理士法人G&Sソリューションズ 代表社員。
株式会社G&Sソリューションズ 代表取締役。2005年中央大学卒。中央青山監査法人及び太陽有限責任監査法人にてIPO業務やM&A業務に従事し、2013年に独立。税理士法人G&Sソリューションズ、株式会社G&Sソリューションズを設立し代表社員、代表取締役に就任。業務範囲を限定することなく、M&Aに関連する幅広い業務をクライアントに提供し、年間50件を超えるM&Aに関連した業務の提供や相談を受けている。また、会計事務所との業務提携を進めることで、会計事務所が行うM&A業務等の支援を行っている。
著書に「40代オーナー社長のための経営のバトンリレー」(幻冬舎メディアコンサルティング)「M&A組織再編 ストラクチャー別会計・税務のポイント」太陽有限責任監査法人編:共著(税務経理協会)、「株式上場準備の実務」太陽有限責任監査法人編:共著(中央経済社)がある。