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COLUMN

2018.09.06税務コンサルのポイント

貸付事業宅地等の改正

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 今回は貸付事業宅地等の改正の話です。改正税法のすべて640頁から641頁にかけてその詳細が記載されています。今回の改正でどう変わったか、という点も大切なところですが、その前に改正に至った経緯を知っておく必要があります。大変重要な考え方なので、従来の節税スキームについて『改正税法のすべて』から抜粋します。

 小規模宅地等の特例は、被相続人の有していた宅地等を相続又は遺贈により取得した相続人の事業又は生活を維持するために設けられているもので、利用されることが多い特例です。
 本特例については、平成22年度改正では相続後に事業・居住を継続しない場合の50%減額措置を廃止するとともに、取得者の持分に応じた部分に適用対象を限定するなどの改正を行い、また、平成25年度改正では、老人ホームに入居する前に居住していた家屋を適用対象に加えるなど、その適用要件の見直しを行ってきました。
 しかし、特定居住用宅地等の要件のうち、勤務の都合等により被相続人と同居できず、かつ、持ち家を持たない相続人が被相続人の死亡後に被相続人が居住の用に供していた家屋に戻る場合を想定した要件について、既に自己の名義の家屋を持っている相続人が、その家屋を譲渡や贈与により自己又はその配偶者以外の名義に変更し、居住関係は変わらないまま、持ち家がない状況を作出して被相続人が居住の用に供していた宅地等について本特例を適用することも可能となっていました。
 また、自らは家屋を所有しない孫に対して被相続人が居住の用に供していた宅地等を遺贈することにより本特例を適用するケースも指摘されていました。
 相続人の居住の継続のためという本特例の趣旨に照らすと、このようなケースは自己が居住する家屋を実質的に維持したまま、被相続人が居住していた宅地等の課税価格を減額するものであり、制度の趣旨を逸脱しているとみることもできます。
 そこで、平成30年度税制改正では、この要件が本特例の趣旨に即したものとなるよう見直されました。
 また、貸付事業用宅地等の軽減措置については、相続開始前に貸付用不動産を購入することにより金融資産を不動産に変換し、金融資産で保有する場合に比し、相続税評価額が圧縮され、かつ、小規模宅地等の特例も適用できるという節税策が雑誌などで盛んに紹介され、低金利も背景に賃貸アパートが増加する状況となっていました。
 特にタワーマンションでは、その減額効果が大きくなるといわれています。また、会計検査院による随時報告「租税特別措置(相続税関係)の適用状況等について」(平成29年11月)においては、申告期限経過後短期間で本特例の適用を受けた宅地等を譲渡している事例も多いこと、譲渡している事例のうち貸付用不動産が多数を占めることが指摘されていました。
(以上、改正税法のすべて640頁~641頁)


 そこで今回の改正では上記のような節税策を封じ込められるに至ったわけです。
 具体的な適用要件として、
 

○相続開始前3年以内に相続税法の施行地内にあるその親族、その親族の配偶者、その親族の三親等内の親族又はその親族と特別の関係がある法人が所有する家屋(相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと

○その被相続人の相続開始時にその親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと

○相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること


 が挙げられます。
 また、

○相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供されたものが除かれました(措法69の4③四)。


 ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き準事業以外の貸付事業を行っていた被相続人等の貸付事業に供されたものは、この除外規定の対象外とされ、特例を適用することができます(措法69の4③四、措令40の2⑯)。

伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。