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COLUMN

2018.08.30産業情報

日本の決済市場の現状とキャッシュレス化進展に向けて

  • Mizuho Industry Focus

Mizuho Industry Focus Vol.208
日本の決済市場の現状とキャッシュレス化進展に向けて ~日本に求められる現金社会からキャッシュレス社会への進化~

2018年4月24日 発行

〈要 旨〉

○現金を介さないキャッシュレス決済がグローバルで拡大する中、日本でも様々な事業者によって多様な決済サービスが提供されるとともに、クレジットカードや非接触 IC 型電子マネーを中心にキャッシュレス化が進展しつつある。しかし、国際的に見ると日本のキャッシュレス化は劣後している状況にあり、その背景には現金決済の優位性の高さがあると考えられる。

○日本ほど現金決済の優位性が高く、現金決済システムが高度に構築されている国は存在しないが、その優位性は、金融機関の充実した支店・ATM網、偽札の少なさ、治安の良さ等に支えられている。一方、米国や中国では FICO スコアや芝麻信用のような消費者にキャッシュレス決済利用のインセンティブを高める仕組みが存在し、英国やスウェーデンでは政府等が強力にキャッシュレス決済を推進していること等からキャッシュレス化が進展している。

○今後、バーゼルⅢに代表される金融機関に対するグローバルな規制強化の流れ、少子高齢化等日本特有の社会的課題の進展等による事業環境の悪化によって、現金決済システムを現在のレベルで維持することが困難になり、現金決済の優位性が低下する可能性がある。また、ECやシェアリング・エコノミー等のキャッシュレス決済を前提とするサービスが拡大していくことで、自然とキャッシュレス決済が浸透していくことも想定される。

○しかし、日本では様々な事業者が提供する多様な決済サービスが乱立している状態にあり、現在の延長線上で日本のキャッシュレス化が進展すると、様々なサービスが分散して成長していく可能性が高い。その場合、消費者の利便性向上を目的に開発・展開されているキャッシュレス決済サービスは、結果としてキャッシュレス化のペースを遅らせる可能性が高く、日本はキャッシュレス化というグローバルな方向性から取り残される懸念がある。

○日本においてキャッシュレス化を進展させ、その主なメリットである①インバウンド対応、②現金社会コストの低減、③決済情報の活用を享受するためには、統一感のあるキャッシュレス決済環境を整備し、現金決済に対する優位性を構築する必要がある。そのために、中長期視点のもと、金融機関を中心とした民間企業の果敢な決断によって、統一感のあるキャッシュレス決済インフラの構築を目指すと同時に、社会全体でキャッシュレス文化を醸成し、キャッシュレス社会を迎える準備を丁寧かつ迅速に進めることが求められる。



・・・内容はPDFをご覧ください。

みずほ銀行 産業調査部

※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/index.html