相続・遺贈・贈与における「土地」の評価方法は、大きく「路線価方式」と「倍率方式」に分けられます。
都道府県ごとに多少の違いはありますが、市街化調整区域内の土地については「倍率方式」がほとんどです。この倍率方式に該当した場合、「固定資産税評価額」に一定の「倍率」をかけて評価する方法となります。
この「倍率」は、路線価と同様、国税庁HPで確認できます。国税庁HPから路線図価表を検索し、都道府県ごとの一覧へ飛ぶと、倍率区域についても確認することが可能です。
ご覧いただくと分かるように、地域ごとに、宅地、山林、田、畑、原野、牧場、池沼および鉱泉地はおのおの異なる倍率が定められています。
そして、駐車場は「雑種地」として取り扱われます。
相続税の評価をする場合には、登記簿謄本に記載されている地目(土地の種類)に関わらず、相続開始日時点の土地の利用実態により地目が判断されます。これは実務上大変間違いやすいポイントです。十分お気を付けください。
よくある例として、謄本上の「畑」を所有しているような場合でも、実際には月極駐車場として利用しているということがありますが、これは畑としてではなく「雑種地」として評価をする必要があります。駐車場は雑種地だからです。
この「雑種地」の評価方法は一つではなく、大きく分ければ
(1)近傍の畑に比準する方法
(2)近傍の宅地に比準する方法
の2つが考えられます。
「市街化調整区域」内の雑種地の評価でもっとも重要なのは、周辺地域の市街化の度合いです。これによって評価額は全く変わってきます。
最も安くなるのは、(1)近傍の畑に比準する方法です。評価対象地の周辺が明らかに自然に囲まれているような状況なら、その雑種地は宅地化による利益を見込むことはできません。このような場合は、当然、農地、山林、原野などに比準して評価することになります。
さて、上記より少し市街化が進んでいて、(2)近傍の宅地に比準する方法を取るべきと判断したとします。この場合はそれで終わりではなく、その評価額はいくつかの段階が考えられ、税理士等専門家たちも頭を悩ませる論点になってきます。
たとえば、上記より“多少市街化が進んでいて”とはどの程度なのでしょうか。
一般的な市街化調整区域内にある雑種地の場合、原則として建築に対して大きな制限があり、建物を建てることができないため、近傍の宅地に比準した額から50%減額して評価します。
これが、事情が変わり、市街化区域付近の土地であったり、幹線道路沿いの境界線付近にあったりすれば、用途制限が比較的緩い場合が多く、宅地化の可能性があります。
このような場合は、少し減額割合が目減りし、宅地に比準して求めた評価額から30%減額して評価します。
そして、周囲に郊外型店舗などが建ち並んでいるような場合であれば、これは評価減の対象となりません。
この「50%減」か「30%減」か、全く評価減できないのか、この境界線は明確ではありません。
国税庁の下記で確認してください。
区分地上権に準ずる地役権の意義
【照会要旨】
財産評価基本通達上の区分地上権に準ずる地役権とは、どのようなものをいうのでしょうか。
【回答要旨】
財産評価基本通達上の区分地上権に準ずる地役権とは、特別高圧架空電線の架設、高圧のガスを通ずる導管の敷設、飛行場の設置、建築物の建築その他の目的のため地下又は空間について上下の範囲を定めて設定された地役権で、建造物の設置を制限するものをいい、登記の有無は問いません。
【関係法令通達】
財産評価基本通達9
地価税法施行令第2条第1項
*注記
平成29年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。