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COLUMN

2022.10.06税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】MBO、EBOスキームについて持株会社方式(新設法人資金調達型スキーム)

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. MBO、EBOスキームについて持株会社方式(新設法人資金調達型スキーム)

MBO、EBO スキームについて持株会社方式(新設法人資金調達型スキーム)をご教示ください。


Answer

最もオーソドックスな方法です。
親族内承継でも新設法人資金調達型スキームを組むことはよくありますが、それの親族外バージョンです。

【解説】
通常、以下の手順で実行します。

(STEP 1)
後継者が100% 出資して持株会社設立。

(STEP 2)
持株会社が投資ファンド、金融機関から買取資金の融資を受け、買取資金を調達。

(STEP 3)
本体会社で現オーナーに役員退職慰労金支給後、持株会社が調達した資金で現オーナーから株式買取り。買取価格は所得税基本通達59-6 (小会社方式)。
役員、従業員が株主である持株会社と、現オーナーが第三者だからといって、当事者間合意価格で実行することは実務では危険です。現オーナーの主導で価格決定することは次の裁判例でも明確に否定されています。

東京地判平成19年1月13日判示において、
  • 第三者間取引であっても、取引価額が時価とされない場合があり得る
  • それは取引金額を決定するにあたり、両者が対等かつ利害の衝突する関係でない場合である
と示しています(詳細は拙著『みなし贈与のすべて』(ロギカ書房)参照のこと)。

従業員(新会社の株主)については同族関係にないため、相続税法基本通達9-2のみなし贈与の対象にならないように思えますが、当該通達では、贈与・受贈の主体が同族関係者であることに限定していません。金額が多額になる場合には、株主1人当たりのみなし贈与額が110万円以下にしておくことなどが必要です。

【相続税法基本通達9-2】
(株式又は出資の価額が増加した場合)

9-2 同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。(昭57直資7-177改正、平15課資2-1改正)


(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者

(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者

(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者

(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者


(STEP 4)
株式買取り後、承継対象の会社と持株会社が合併。持株会社の債務は承継対象会社の債務となる。
親族内承継の場合、合併しないことも多いですが、MEBO の場合、通常合併します。合併法人での本来の収益力を返済原資にすべて回す方が資金効率(税負担も含めて)が良いからです。

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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。